小正月も過ぎたイマサラですがあけましておめでとうございます。年始早々、『コードギアスぴあ』の原稿を中心に追いまくられていて、ちょっとスケジュールをミスしてしまい、メルマガ発行が遅れてしまいました。大変申し訳ありまえせんでした。 というわけで、新年一発目のメルマガ、いってみようかと思います。
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1.最近のお仕事紹介
2.Q&A
3.前回のアニメの門チャンネル
4.お蔵出し原稿
5.不定期アニメ日記
最近のお仕事紹介
1.朝日カルチャーセンター新宿教室「アニメを読む」(東京)
2月・3月は以下の内容です。
2/20:「アニメ・マンガの実写化はなぜ難しいのか」
3/19:『風立ちぬ』
2.SBS学苑パルシェ校「アニメを読む」(静岡)
1/31(日)10:30~『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』を取り上げます。
今もって傑作とよばれる作品ですが、その成立には劇場版『エースをねらえ!』の存在がありました。果たして2作の関係とは。この講座は16年から隔月開催になります。
http://www.sbsgakuen.com/gak0130.asp?gakuno=2&kikanno=171101
3.栄・中日文化センター「アニメを読む」
2/13(土)15:30~『サマーウォーズ』。細田守監督がこの映画で駆使している「技」について考え、何を描いた映画だったか考察します。この講座は16年から年4回開催になります。
http://www.chunichi-culture.com/programs/program_165251.html
Q&A
「なぜなにアニ門」で質問を募集しています。「件名」を「なぜなにアニ門」でpersonap@gmail.comまで送って下さい。文面にハンドル(名前)も入れてください。
あるいは、アニメの門チャンネルの有料会員は、アニメの門チャンネルページの掲示板サービスが使えますので、そこに質問をしていただいてもよいです。メルマガの下にあるコメント欄でも結構ですよー。
Q:最近のアニメファンの中にシリアスな展開やディストピア作品を嫌い女の子の日常描写だけがあればいいという層が増加してるように感じます。その理由としては、ここ四半世紀の現実の社会問題に疲れて、フィクションにシリアスはいらないという人が増えたのが原因なのでしょうか? それともアニメファンそのものが変化したせいなのでしょうか?
A:想像の前提に二項対立で考えるでことはあまり意味がないと思います。エンタメというのは多かれ少なかれ、現実逃避的な要素を孕んでいるので、自然な流れであると思います。特に作品そのものが商品になる状況では、そういう傾向に拍車がかかりやすとはいえるでしょう。なお、実際に作品をカウントしてみれば「女の子の日常描写だけがあればいい」の作品はいわれるほど数は多くないし、シリアスな作品もそれなりの数ありますよね。
Q:先月の朝カルの講義な中でお話にあったアニメのパッケージビジネスの終焉と ネット配信の普及の端境期のことについてなのですが、ファンとしてこの2つのソフトランディグを成功させるための応援としては1枚でも多くパッケージを購入することなのでしょうか? それとも、定額制配信サービスに積極的に加入することなのでしょうか?
A:二項対立で考える必要はありません。「べき」論ではなく、自分の楽しみたい方法で楽しむのが一番です。そういうファンの動向を受けて、ビジネスを構築(あるいは再構築)していくのが企業努力というものなので。
Q:子供の頃はお正月が楽しみでしたが、それと同時に「楽しみにしていたアニメが放送されない、暗黒の3日間」でもありました。(略)ダイエーが正月営業を始めた以降は、正月におもちゃを買う事もできたので、むしろ放送しても良かったのではないかと思います。それに、社会人もわりと年末ギリギリまで仕事していますよね。
A:年末年始の特別編成は、「視聴率をとれる」と「スタッフが休みをとるため」という2つの理由があると思います。アニメの定期放送が視聴率を十分とれるのならアニメを流すでしょうが、実際問題アニメはそこまで視聴率高くありません。視聴率がとれる特番を企画し、新たにスポンサーを募ったほうがTV局の利益になります。
もちろん1社提供のスポンサーが放送を望めば、TV局はそれを受け入れる場合があります『アンデルセン物語』は1月3日、『あらいぐまラスカル』は1月2日から放送してますし、『ペリーヌ物語』は元日に放送開始をし、大晦日に最終回を放送してます。
スポンサーとは無関係ですが、アニメブームの中の'78年大晦日には『キャプテンフューチャー』が特番(1時間枠)「華麗なる太陽系レース」を放送した例もあります。
前回のアニメの門チャンネル
前回のアニメの門チャンネルは2015年の『映画けいおん!』に続き、『メガゾーン 23』の読解講座をお送りしました。動画は公開期間が終わりましたが、レジュメがnoteで買えます。150円です。
ゲストもいないし、取り上げる作品も古いのですが、アクセス数は好調でした。
お蔵出し原稿
2月末のオタクの学校@模型塾で『CASSHERN』を取り上げることにしました。というわけで『CASSHERN』が発表された2004年の状況を書いた原稿を。キネマ旬報に書いた原稿のはずです。
デジタル技術を手に入れたアニメは、情報量やカメラワークの限界が取り払われ、一般観客がしばしば「実写と見まごうばかり」と形容するなるような映像を構築することが可能となった。一方で実写映画は、デジタル技術を手に入れたことで、急激にアニメへと接近した。'04年はまずこの奇妙なねじれの結節点として記憶されるべきだろう。
ここでは『スチームボーイ』を「基準点」とすることで、各作品の立ち位置を確認しつつ、'04年の状況を俯瞰してみたいと思う。
『スチームボーイ』は、手描きによる2Dのアニメーションがまず基本的な技法としてある。そこにデジタル技術の成果として加えられているのが、カメラマップと3DCGだ。カメラマップは、従来ならば背景動画(動きのある背景を、背景画ではなく動画として処理すること)にしなくてはならなかった場面などに活用され、背景画の質感を保ったまま動く背景などに使われている。これにより従来のアニメには足りなかった空間感が大幅に補強されている。また3DCGはメカの描写に使われた。手描きでは困難な複雑な形状のメカを正確に描き、かつ表面に質感のあるテクスチャを貼ることで、セルアニメ的な平板な印象を避けることができるメリットがある。
この『スチームボーイ』を基準点とすると、先だって公開された『イノセンス』(押井守監督)ははるかにデジタル方向に傾いており、逆に『ハウルの動く城』(宮崎駿監督)は、従来のセルアニメの技法に近い。
『イノセンス』は、背景を3DCGでセットのように組んだ場面があるほか、さらにはキャラクターの一部も3DCGで表現している。また各場面の“照明”についてもやはりデジタル技術でコントロールし、押井監督の望むルックを作り出している。
一方『ハウルの動く城』は、特報を見る限りずっとアナログで従来の宮崎アニメの印象をキープしている。タイトル・ロールの「城」も、デジタル技術を使ってはいるが、むしろ『風の谷のナウシカ』で王蟲の動きを作り出すために作られたゴムマルチという技法を彷彿とさせる。
このようにどれも世界的に知名度のある巨匠が十億を超える予算で作った大作だが、デジタル技術の取り入れ方はかなり対照的だ。だがその一方で、共通点もある。それはアニメーターによる「手描きのキャラクターの表現」のアドバンテージを信用している点だ。
たとえば『スチームボーイ』では、最もポイントとなる蒸気の描写は手描きで表現されている。また、アニメーターのラフな原画にしたがって3DCGの動きが付けられることもあったという。
また『イノセンス』では、犬や人形の持つ官能性を表現する点について、アニメーターの技術にすべてを委ねているし、従来のセルアニメをそのまま受け継ぐ『ハウルの動く城』は言うまでもない。
だが、このアニメの大作3作品とは、真逆の立ち位置の作品が登場している。それが『APPLESEED』だ。3Dライブアニメと称されたこの作品は、アニメキャラ風の顔立ちをした3DCGキャラクターをトゥーンシェーダーによりセル画タッチに仕上げるという手法で作られている。キャラクターの表情やアクションは、実際の俳優の動きをモーションキャプチャーで拾う仕組みだ。
この作品の特徴は、伝統的なアニメとは違った手法でアニメ・ライクが画像を得ようとしている点である。そしてこの手法は、アニメ制作における人件費の高さや作業時間の長さといったデメリットと無縁という点も重要なポイントだ。 完成した作品そのものは、、3Dライブアニメという表現にふさわしいキャラクターデザインや、そうしたキャラクターの欠点をカバーする演出術などが未開発の印象があったが、この技術が今後どう化けるか、要注目であることには変わりはないと思う。
こうしたアニメ的表現に急激に接近しているのが、実写(特撮)映画だ。'04年は、アニメ・コミックを原作とする実写映画が多数ラインナップされているのも、一つの特徴である。こちらはこれまでに『CASSHERN』(紀里谷和明監督)と『キューティーハニー』(庵野秀明監督)が公開され、今後『NIN×NIN 忍者ハットリくん THE MOVIE』『デビルマン』『鉄人28号』が控えている。
ここで重要なのは、それらが単にアニメやコミックを題にとっただけでは済まない、とい点だ。たとえば『スチームボーイ』を『CASSHERN』や『キューティーハニー』と比べたとき、『CASSHERN』や『キューティーハニー』の表現のほうがはるかにアニメ的なのだ。もともとがアニメの演出家である庵野監督による『キューティーハニー』だけならまだしも、『CASSHERN』までもがアニメ的であるというのは、つまり、アニメで育った世代の映像感覚が極当たり前に実写を浸食しているということでもある。
そうした感性の変化を背景にしつつ、デジタル技術によってアニメは「脱アニメ」のベクトルを強め、実写は「アニメ」になっていく――というこの転倒こそが、'04年の大きなトピックなのだ。
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