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元『紙のプロレス』編集者・松澤チョロの脱線プロレスシリーズ第13弾。今回は“Show”大谷泰顕さんがゲストです!(聞き手/ジャン斉藤)




――
松澤チョロさんの「脱線プロレス」コーナー、今回のゲストは“Show”大谷泰顕さんです!

チョロ 大谷さんとの付き合いはかれこそ20年以上になりますけど、実際に会うのは3年ぶりくらいですね。

Show みんなひさしぶり。というか、これはどういう企画なの?

――
危なっかしい人をゲストに呼んで危なっかしい話をするコーナーです。

Show
 じゃあ、まったく俺向きじゃないや。

チョロ
 ヒャッ!? いやいや、めちゃめちゃ危なっかしいですよ。大谷さんはPRIDEやK-1、猪木さん周辺にも深く食い込んでいたから面白い話はいくらでも持ってるはずなんで。

――
PRIDE・K-1の冷戦時代、どっちの団体にも食い込んでいたのは大谷さんだけなんですよね。

Show
 ちょっと待って。あのさ、その「危なっかしい」という言葉に引っかかるなあ。そこの誤解を説いておきたい。いや、誤解されてもいいんだけどさ……。

――
開始早々、面倒くさい!(笑)。

Show
 あのさ、俺は思うのは、この業界は『東スポ』や『週プロ』とかさ、そういう人たちが作ってきてるわけじゃないですか。もちろん団体があって、そのニュースを伝える側がいて、いまはSNSが発達しちゃったからメディアの役割も全然変わってきちゃってるんだけど。それでも俺は『東スポ』や『週プロ』とかさ、そういう人たちが昔からやってきたから、この業界はなんとか残ってると思うわけ。

チョロ よ~くわかりました!! それで大谷さん、プロレス格闘技業界に携わって何年くらいですか?

Show
 いや、まだ話の途中。ごめんね。

チョロ
 あ、まだ続きますか。

Show
 だから俺は『東スポ』や『週プロ』の領域みたいなものはなるべく侵したくないわけ。その人たちがやらないことをなるべくやるように努力してる。ちょっと前だと、全日本プロレスの福田剛紀社長のインタビューだよね。これは絶対に『東スポ』や『週プロ』はやらないだろうなって。

――
あれは「やらない」じゃなくて「やりたくない」んですよ!(笑)。

Show (聞かずに)だからまずは『東スポ』や『週プロ』の人たちに取材してもらって、俺はなるべくそれ以外から次に繋げる企画をいつも考えるようにしてるつもり。そうやって気を遣っていることがそういう人たちからどう思われているかはわかんないけど、「危険物処理班」みたいな仕事をなるべくやるように心がけてる。それを「危なっかしい」扱いするのはかまわないんだけど、俺はそういう心構えでやってるってこと。

チョロ
 危なっかしいといえば、大谷さんってわりと炎上しがちで、大谷さんが担当していた猪木さんのYouTubeチャンネルも叩かれることが多かったですよね。

Show
 うーん、そこはどうなんだろ? それはそれでしょうがないよね。猪木さんって多面体の極知みたいな人だから、俺が「面白い」と思っても「そうじゃない」っていう人もいるし、いろんな見方をされる人でしょ。ただ、俺は猪木さんの亡くなる10日前にたまさか取材をやらせていただくことになっちゃったじゃないですか。

チョロ
 「アントニオ猪木を最後に取材した男」ですよね。

Show
 結果的に猪木さんの最後の言葉を届けてしまった責任はあるし、結局、最後の最後に猪木さんの骨を拾わせていただくなかの1人にもなった。まさか猪木さんの骨を拾うことになるなんて考えてもいなかったですよ。だから誰がどう思うかはともかく、俺の中では全うしていかなきゃいけないなっていう思いはあります。ごめんね、まだ前置きは続くんだけど……。

チョロ
 ヒャッ!? まだまだ続きますか(笑)。

Show
 ここから『紙のプロレス』の話にも繋がるんだけど、これは以前、斉藤氏には言ったかもしれない。俺はこの業界に30年くらい携わっていて、「この人はすごい」と思った人間が4人いる。

――
そんな話、全然覚えてないです。

チョロ
 当てていいですか? 石井館長、榊原(信行)さん、谷川貞治さん、ターザン山本さんの4人!

Show
 あー、惜しいかな。

チョロ
 じゃあ猪木さんが入ってるかな。

Show
 猪木さんはすごい人だけど、ちょっと次元が違うよね(笑)。もちろん石井館長と山本さんもすごいけど、俺がどうこう言える人とは違うかなと。バラさんと谷川さんは入っている。残りの2人は山口(日昇)さんと、柳沢(忠之)さん。

チョロ
 小さい判型の頃の『紙プロ』をやっていた2人。

Show
 俺はこの4人はすごい世話になったし、兄貴だと思っているのね。だからチョロ氏と斉藤氏からこうやって話を聞かれるのは、2人が山口さんのところにいたから、という理由が俺にはあるんだよ。まあ2人は俺の兄貴の子供ってことだよね。

――
大谷さんの親戚にはなりたくなかったですよ(笑)。

Show
 俺はあの2人に猪木さんの見方を教わったというか……あっ、猪木さんといえばさ、これも余談なんだけど。

チョロ
 はい(笑)。

Show
 この業界にいる役割、役目ってなんだと思います?

チョロ
 まったくわかりません!

Show
 ひとつは選手を作る、ふたつ目は現象を作る。最後のひとつが歴史を繋ぐ。この3つだと俺は勝手に思ってんの。猪木さん関連でいえばサイモン・ケリー(WWE日本アドバイザー)、猪木元気工場の宇田川取締役はすごいなぁと思ってて。サイモン氏でいえばSareeeやら中嶋勝彦を含め、「闘魂」をどうこれから残すかを考えているし、宇田川氏でいえば『猪木展』をやったりして、選手や現象を作ったり、アントニオ猪木の何かを繋ごうとしているんだよ。そのやり方が合ってるかどうか知らんよ。でも、彼らが見ているのは後ろ(過去)じゃないのよ。先(未来)なんだよ。先を見て猪木さんをどう残すかみたいなのを考えた結果、奮闘してるんだなって。

――
……話を聞いて思ったのは、Show大谷さんは身近で頑張っている人をしっかり評価してあげたいんだなって。でも、その褒め方が「仲がいいんだろうな」ってことがまず来ちゃうんですよね。たとえばSareee選手と闘魂がまったく結びつかないですし。

Show
 仲が良いからじゃなくて、サイモン氏と宇田川氏の話をちゃんとすると……。

――
しなくていいです!伝わりました!(笑)。

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今回は00年代プロレス格闘技事情にうるさいジャン斉藤の発言が多めでした!


チョロ
 似たような話でいえば、最近の大谷さんは女子プロレスを猛プッシュしてるじゃないですか。

Show
 している。けど女子プロレスっていうよりも、それこそアントニオ猪木繋がりでSareeeと中島安里紗、SEAdLINNNGのたいよう南月代表という「絶滅危惧種」に遭遇したから、この人たちの凄さはどうにか伝えたいし、残してあげたい気持ちが強い。

チョロ
 でも、なんであんなに推しているんだろうって。大谷さんは本音が伝わりにくいんですよね。「この人、本当に何が好きなんだろう?」って。べつに好きなものをプッシュする必要もないし、ビジネスライクにやってもいいとは思うんですけど。たとえば昔の大谷さんだったらパンクラス好きのイメージがすごくあって。

Show
 たしかに昔は取材していたね。

――
あの当時のパンクラスを推すのはよくわかるんですよ。でも、サイモンさんと宇田川さんを推す理由があまり見えてこないんですよね。

Show
 なるほど、伝わってないんだね。でも、パンクラスのときはわかるんだ。

チョロ
 あの当時のパンクラスは語りがいがあったはずだし、それこそ一般メディアに向けてプレゼンしやすいし、ビジネスにも直結したんだなと思いますよね。

――
当時のパンクラス番といえば、ヤスカク(安田拡了)さんか大谷さんだし、パンクラス道場の永久会員でしたよね?

Show
 あ、入ってた! けど、パンクラスの話をしなきゃいけないのは、めんどくさいなあ。

――
サイモンさんや宇田川さん以上に重要ですよ! 『紙プロ』は前田日明のジェレミー・ホーン引き抜き事件の裁判資料になったこともあって、パンクラスの取材をできなくなるんですけど。その前に『紙プロ』は『パンクラス公式本」の『矛』と『盾』を作ったじゃないですか。あれはShow大谷さんの持ち込み企画だったんですよね。

Show
 その話をするんだったら、俺と『紙プロ』がどうやって繋がったかという話からしなきゃいけないよね。

チョロ
 やっと本題に!(笑)。そこも具体的にはわからないですよね。気づいたら大谷さんが紙プロ編集部に出入りしていたから。

Show
 まず俺が東京に来たのは……。

チョロ
 そこから! やっぱり前置きが長い!(笑)。

Show
 ごめんね。上京したのがたぶん91年の5~7月ぐらいなんですよ。そこからいろんなツテをたどりながらやってくんだけど、93年の4月にK-1ができて、9月にパンクラスができた。その後、11月にUFCが生まれた。で、猪木政界スキャンダルも93年なんですよね。だから1993年ってすごい年なんですよ。

――
中学校で休んで、新間寿さんの「アントニオ猪木のPKO」発言が飛び出した記者会見生中継を見ましたよ。

Show
 で、その猪木政界スキャンダルをきっかけに山口さんと柳沢さんは『猪木とは何か?』という本を作るじゃん。その本がバカ売れしたこともあって、翌年に『猪木とは何か?』の続編『キラー編』を出すでしょ。そこで俺は原稿を書かせてもらってるんだよね。そこが『紙プロ』との初めての繋がりっちゃ繋がりなんだ。

チョロ
 えっ、大谷さんって『キラー編』で書いてましたっけ。どういう理由で書くことになったんですか?

Show
 東京に来てから、とある出版社でアルバイトを始めたんですけど。その出版社が出していた雑誌が休刊になって。これからどうするかってときに『JUNGLE』っていうプロレス雑誌をやることになって。

チョロ
 『JUNGLE』!!  ありましたねぇ。

Show
 そこで初めて猪木さんを取材した。場所は参議院会館だったけど、俺はもともとバリバリの新日本プロレス大好き人間だったわけ。80年代に「これはプロレスブームじゃない! 新日本ブームだ!」って新間寿さんが言ってたけど、ホントそこにズバリとハマって新日本オンリーだった。「新日本に非ずものはプロレスに非ず」というか。ただ、猪木さんじゃないんだよね。

――
最初は「猪木さんの何が面白いかわかんない」というスタンスだったんですよね。

Show
 わかんない、わかんない。でも、俺は新日本プロレスファンだったから、猪木さんのインタビューなんかを読み尽くしてるわけ。だけど実際に猪木さんのインタビューをしたら、「あ、やっぱりこういうことを言うんだ」っていう確認作業になっちゃうのよ。「猪木さんはやっぱり『プロレスは闘いである』って言うんだな」とか。で、その取材をしたときに、猪木さんが「この業界を面白くできる奴はいねえのか?」ということを言ったの。それをコピーにして『JUNGLE』の表紙にしたら、山口さんと柳沢さんが反応して「面白い奴が猪木さんの周りに出てきたな」ってことで、俺に原稿依頼があったんだよね。そこで猪木vsブロディの初対決の記事を書いた。

チョロ 猪木さんインタビューをやるってことは、『JUNGLE』ではメインどころを任せられたりしてたんですか?

Show
 というか、一番初めは編集者が俺しかいなかったから。3ヵ月に1回くらいのペースだったし、当時はそういうプロレスムックがいっぱいあったよね。

チョロ
 そこから当時・池袋にあった紙プロ編集部に出入りするようになったんですね。

Show
 山口さん、柳沢さんが……まあ、遊んでくれたんだよね。当時の俺は新日本プロレスしかわかんないけど、この人たちは新日本どころか猪木博士なんだなと。猪木さんに対して博士級の研究をしているというか。俺なんかは大学生のノリだから、もう世界が全然違うわけよ。


・「猪木祭り」誕生までの裏側
・吉田豪の書評
・ターザン山本のブレーン
・PRIDEとK-1をプロデュースしていた男たち
・百瀬博教さんとの付き合い
・プロ格マガジン『SRS・DX』……2万字インタビューはまだまだ続く
この続きと馬場元子、長井満也、“Show”大谷泰顕、曙、AKIRA……などの5月バックナンバーが450円(税込み)でまとめて読める「8万字プロレス記事詰め合わせ」セットはコチラ

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