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――RIZIN名古屋はワーストだったという声があるんですけど、常に超RIZINや大晦日級を求められているんだなってハードルの高さを思いしりました!
――ハハハハハ! いまの格闘技ファンには届かない「猪木語録ハラスメント」はやめてください!谷間の興行になると「PPVの値段を下げろ!」という声が飛びがちですけど、他のジャンルの配信価格設定を見るかぎりRIZINのPPVは標準ではあるんですよね。大晦日と地方がほぼ同じだから文句は出るんでしょうけど、オールスターシステムの大晦日はUFCのPPV並の価格にしたいんだろうなと。
――また!(笑)。今回の名古屋にも世界各地から「地獄のチャーリー軍団」が大襲来しましたけど、いくらかかってるんだって話ですね。
笹原 たとえば会場設営&撤収作業はアルバイトを雇うんですけど、RIZIN規模のイベントだと大人数になるし、いまは人件費も上がっていて、おまけに年末になると通常料金では人材を確保できない。通常は1日拘束で▲万円くらいですけど、大晦日料金は◯万円くらいになりますから。
――◯万円! 家で寝っ転がってRIZIN観戦しているボクを雇ってください(笑)。
笹原 まあでも観戦されるお客さんにはそんなこと関係ないので、満足いただけるような中身を作るしかないんですけどね。
笹原 「残酷」という言葉しか出てこないですよね。これまでも何度か言ってますけど、RIZINはPRIDE.1のヒクソン・グレイシーvs.高田延彦のときの「残酷な現実」が刻印されたイベントですからね。
――残酷さが人を惹きつけ、新しいドラマを駆動させると。
笹原 でも一方で勝者のケラモフにもすごい重圧があったんですよ。鈴木千裕選手に負けてフェザー級のベルトを失ったアゼルバイジャン大会はちょうど1年前だったじゃないですか。
――地元大会での屈辱的敗北でしたねぇ。
笹原 そのあと事件に巻き込まれて刑務所に入れられて、やっと出所できて1年ぶりの試合だったんですが、今回は普段はいないスポーツ庁の人間が帯同してたんですよ。
――どういうことですか?
――うわぁ……。
笹原 試合後、ケラモフ陣営から柏木さんのところに「リング上でケラモフが勝ったことがわかる写真を送ってくれ」という連絡があったんです。理由はアゼルバイジャンのスポーツ省に報告したかったらしいんですよね。少しでも早くケラモフの活躍を証明したい。最初はRIZINガールに両脇にいるケラモフの写真を送ったら「別の写真にしてくれ」と。刑務所を出たばっかりで女の子をはべらせているようなものだと誤解されると(笑)。
笹原 こっちとしては「なんでそんなに写真が必要なの?」ってすぐには対応してなかったんですよ。そうしたら「早く写真をよこせ!」と柏木さんがせっつかれて、よくよく事情を聞いたらそういう理由だったみたいです。
――ケラモフは試合後のマイクでアゼルバイジャンのスポーツ庁に感謝の言葉を述べてましたが、そこには深い意味を感じますね……。
笹原 ケラモフのコーチもスポーツ大臣から「絶対に結果を出せ!」と言われていたみたいです。だからケラモフはちょっと我々には想像できないようなプレッシャーがあったと思うんですよね。
笹原 ケラモフは生き残れたけど、摩嶋選手は……それでも立ち上がるしかないのが格闘家という職業ですから。今回あらためて思ったんですけど、試合に勝った選手は勝利の喜びを消費する時間ってあっという間だと思うんですけど、負けた選手が敗北を受け止めている時間って超長いんじゃないかって。「もっとこうすればよかった」とか「あのとき、あれができたんじゃないか」って、自己批判や自己否定を繰り返して、すごく長い時間かけて消化しなきゃいけない。勝利と敗北って、実はすごくアンバランスなんですよね。
――臥薪嘗胆という言葉もありますしね……。負けた選手がよく「早く試合をしたい」というのは早くこの沼から抜け出したい理由もあるんでしょうね。
笹原 敗北の屈辱を晴らすのは、勝利しかないですからね。
――摩嶋選手もRIZINプロデュースの後押しもあってファンに愛されるキャラクターになってますが、必ずハッピーエンドで終わるわけではない。リングの上だけは自分の力でどうするかしかないわけですよね。
笹原 摩嶋選手ってRIZINに上がるまでは「地味強な地方の選手」という印象だったファンは多かったと思うんですよ。RIZINというある意味で華やかな舞台を通して、町工場で働き子供を育てながら試合で戦うひたむきな姿が伝わり、多くのファンに愛されたんだと思います。
――セルフ・プロデュース全盛の時代にSNSやYouTubeも一切やらないことも、「だったら俺たちが売らなきゃ!」というファンの応援スイッチが入った感はありますよね。
笹原 摩嶋選手はこの残酷な結果を、仕事をして、子供を育てながら消化するしかない。ボクらはもう一度立ち上がってほしいと願うことしかできませんけど、立ち上がって欲しいなぁ…。
記事12本12万字の詰め合わせセットはまだまだ続く……