「小飼弾の論弾」で進行を務める、編集者の山路達也です。
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今回は、2026年1月13日(火)配信のテキストをお届けします。
次回は、2026年01月27日(火)20:00の配信です。
お楽しみに!
2026-01-13配信のハイライト
- 「ベネズエラの重油」と「考えた戦略という誤解」
- 「お笑い南鳥島」と「キドカラーとレアアース」
- 「トランプ戦艦はボツ?」と「議会解散の仕組み」
- 「憲法の抜け穴」と「Metaの詐欺」「空っぽな台湾ならあげる」
- 「エンドユーザーに金を払わせる力のあるApple」
- 「イランで今一番不足している資源は?」と「マグロ漁船でNetflix」
「ベネズエラの重油」と「考えた戦略という誤解」
山路:明けましておめでとうございます。
小飼:明けましておめでとうございます。
山路:本年もどうぞよろしくお願いいたします。もう1月13日で正月の話するのも何なんですけど、正月休み、何してました?
小飼:えーとですね、例年になく寝正月でしたね。っていうのも、じつは去年度秋から長女も給与生活者になりまして、
山路:いよいよ社畜に。
小飼:そうです、そうです、社畜化しました。やっぱり社畜というか、社畜の休日というのはもうひたすら寝るという、
山路:1年目だときついですよね、特に。
小飼:連休何がいいかって言って、彼女曰く、たとえば3連休とかですね、月曜日が移動祝日日で休みになっているとかっていうのは、平日が4日しかないのかいっていう(笑)。
山路:週休3日が人類最低限の目標にしないといけないような気がするんですけどね。
小飼:その一方で次女はスキーリゾートに、何と言えばいいのかな、僕もよくわからないのですけれども、すごいゴージャスなところで働いていたみたいですけれども。
山路:ほうほう。正月はみんなダラダラと家で寝ていたという、
小飼:そうですね、
山路:弾さんは『刃牙』をまた読んだりとかみたいな感じですか(笑)、
小飼:あははは、
山路:それぐらいなんか頭使わないぐらいで休むのが正月休みいいのかも。
小飼:ただやっぱ物騒なニュースも多かったので、それに絡むものの調べ物とかっていうのもけっこうしてましたね。けっこういろんなことがわかりましたね、それで。
山路:その物騒なものっていうのは今回の番組にも関わるような話?
小飼:そうですね。例の、本物のbattleshipですとか、
山路:ほうほう、そのことはじゃあぜひ番組の、
小飼:ちょっとその中身とかね、
山路:まぁそうやって私のほうもちょっと旅行とかでぼんやりしてただけなんですけど、
小飼:じつはbattleshipよりも、アメリカの場合フリゲートのほうがヤバい。小さな船のほうがちょっとヤバい状況にあるという。
山路:そういうわけでさっそく入ろうとは思うんですけど、
小飼:どれから行く?
山路:そうですね、まずはメローニの言葉からいっておきましょうか。
小飼:そう、だから年末の挨拶で本当に「ご挨拶」でしたね。ああいうの大好きだ、
山路:「2025年はもうひどい年だと皆さん思われてるかもしれませんけど、安心してください、2026年はもっとひどい年になります」という(笑)。もうその通りでしたわと。世界、なんかこう、年明けからもう全速力じゃないですか、松が取れるまで待たんのか、みたいな、
小飼:もっと早くなる可能性がなきにしもあらず、なんで。まだこれで全速だと思っちゃいけないのかもしれない。
山路:メローニのように怖いことを(笑)。まずはとっ始めでやっぱり一番デカかったのこれじゃないですか?
小飼:じつはですね、この手のことに関してアメリカは前科だらけなんですね。懐かしいところですとパナマでやってます。当時はパパブッシュ政権でしたね。
山路:ノリエガ将軍でしたっけ?
小飼:そうです、
山路:なんかラノベでもそういうのあったような気がしますね(笑)、『NORIEが将軍』っていう、確か。
小飼:自国に連れ去って刑事犯として裁くっていうのは、これはっきり言って国際法違反というのか、もう国の自治というのをシカトしてるわけです。でも、その一方でべつに占領してるかではないわけです、その辺がロシアと違って、あくまでも特殊作戦なわけですよね。
山路:いちおうロジックとしてはアメリカに迷惑をかけている犯罪者を捕まえたぞっていう建付け、
小飼:そういう建付けにはしている。でも、カルテル・デ・ロス・ソレス(太陽のカルテル)、組織というのはないわけです、本当にweapons of mass destruction(大量破壊兵器)並みになかったわけです。今回もっとひどいのはベネズエラの石油を勝手に売っ払ってるんですよね。
山路:もうすでに?
小飼:売っ払って懐に入れることを正当化するための大統領令、もう出してるんですね。どういうことかっていうと、普通犯罪とかで差し押さえたものというのは勝手に処分できないわけですね。そう、だからまともな法治国家であれば。ただし戦地であれば、それを売って国庫に入れて、いろんなものに充当していいっていう法律もあるわけです。
山路:しかしそれ、すごい矛盾してないですか? つまり戦争じゃないって言ってるのに、その戦地で得たものを売っちゃって、
小飼:だから非常事態を宣言してるわけですよ。ただし、この非常事態というのは対テロ程度なんですよね。軽度なんですよね。全面戦争ではないわけです。だから、それをずっと引きずってるわけですけれども。
山路:さらに好き勝手できるように、
小飼:で、タンカーとかを拿捕してて、これはロシアに持っていくタンカーとかして言ってる写真もあるんですけど、でもよく見ると空荷なんですよね。なんで空荷ってわかるかっていうと、喫水線からずっと浮いてるわけです。もうギリギリ、タンカーとかは割とどれくらい荷物が積まれているのかっていうのは見ればわかるんですよね。浮いちゃうんです、空荷だと。
山路:空荷のタンカーを拿捕したってこと?
小飼:そう、それは要は石油を密輸してるという言い方をして。ここまで堂々と泥棒してるというのは珍しいです。ロシア以下ですね。
山路:すごいな(笑)、えー、そんなことまでやっとったんですね。で、
「Altmanのせいで個人用PCの値段がやばい」(コメント)
小飼:これも、もしかしたら止まるかもしれないというニュースも(笑)。
山路:そうですか(笑)。で、ベネズエラなんですけど。今後トランプなんかはいろいろ長期化するとは言ってるんだけども、こんなのってベネズエラの石油利権みたいなものって正当な権利なく、そんなにアメリカが自由にできるものなの?
小飼:それはできない。それはトランプが勝手にできると言い張ってるだけで。今回の顛末というのは議会にも報告を入れてないんですね。the Executive Branchが勝手に、要するに行政が勝手にやったものです。
山路:それってもうすでに憲法違反ですよね、
小飼:ですよ、立派な。
山路:堂々たる憲法違反ですよね。
小飼:だからそこが割と、アメリカはいろんなところに攻め入っては、そこにあるものを勝手に処分してきたという歴史はあるわけですよね。近年だとイラクですとかね。
山路:でも議会の承認は得てたわけだ。
小飼:そうです、今からやりますよっていうのは言って。パパブッシュの頃というのは、パナマは黙ってやったんですけれども、湾岸戦争の時には多国籍軍を構成してやったじゃないですか、だから世界に対して今からこうします、我が国はこうしますっていうのを言ってからやってるわけですよね。
山路:それを大統領の思いつきで、
小飼:そうです、勝手にやっては勝手にそれをTwitterで、Twitter以外にもTruth socialとかあるので、SNSで誇ってるわけですよね。一つすごい気になる「誇り方」がありまして、This is our hemisphereっていう、
山路:これは私らの半球であると、
小飼:具体的には南北アメリカを含む半球で、グリーンランドも入ってるわけですね。だからグリーンランドもよこせっていうふうに言ってるわけですね。
小飼:カナダもアメリカの州にするとかって言ってるのも、その文脈なんですよ。本当にトランプの頭の中の世界地図っていうの、バカ世界地図っていうのがありますけど、ほんとそうなんですよね、ああいいところに(地球儀を手に取りながら)で、これですね、This is hemisphere. That’s why he said it’s his.で、とりあえず僕の視界の裏だから、この辺にベネズエラがあって、次はキューバとかグリーンランドとか言ってるわけですよね。
山路:トランプって南北戦争も、北アメリカと南アメリカの戦争とか思ってそうですよね(笑)、
小飼:いやそう思ってんじゃない?
「今から石油に投資するのどうなの?」(コメント)
小飼:いや、バカです。ましてや、ベネズエラの石油っていうのはすごい質が低いんですよ。
山路:地上に出た途端に固まるという話を聞きましたが。
小飼:いやー、だから本当に重油とアスファルトなんですよね。重油もいちおうランク付けがあってABCというふうにあって、アルファベットが上のほうが軽いわけです。で、Aとかはまぁ普通に常温で液体で、もうそのままディーゼルエンジンに入れられるんですけど、重いやつというのはまず燃料にする前に、エンジンにくべる前に温めて液体にしなければいけない。なんですけども、そういったものなので、安いわけです。安いので、大きな商船は一番重たいC重油を燃料にできるようにしてます。ただ、重たいで温めないと使えないっていう以外にも、もう一つ困った欠点がありまして、それは何かっていうと炭化水素だけではないんですよ、純粋な炭化水素だけだったらいいんですけども、けっこう硫黄を含んでるんですね。なので、燃やすと亜硫酸ガスが出るわけですね。
山路:環境負荷が高い。
小飼:火力発電でも、炭化水素、重たい炭化水素ですね、重油ですとか、あるいは石炭ですとかっていうのを燃やした時には当然亜硫酸ガスが出るんですけれども、最近の火力発電所っていうのはそれ、大気に出さないんですよね。スクラブラーという装置がついていて、そこでもう全部取り除いちゃうわけです。でも、船というのはそこまで広くはないので、そのまま垂れ流しにしてたんですけれども、最近厳しくなりだして、大きな船とかだとスクラブラーをつけたりですとか、あるいはもう少し小さいやつだとかだと燃料を変える、LNGとか、あるいは灯油というのか、軽いディーゼル燃料ですね、硫黄とかを取り除いた、
山路:そんなベネズエラの石油って、簡単にアメリカの石油メジャーとかが入ってちょちょいってやったら利益にできるようなもんではぜんぜんなさそう、
小飼:ぜんぜんない、
山路:エクソンのCEOがかなりネガティブな、これ不可能だぜみたいなと言ったら、もうお前はその石油利権に入れたらん、みたいなことをトランプが。
小飼:じつはですね、アメリカの原油というのは特にメキシコ湾のまわりで取れるやつっていうのがすごい軽くて、質がいいんですね。ルイジアナスイートという言い方もします。スイートって言い方をしますね、軽い炭化水素の分子量が小さいやつを多く含んでるやつというのは。そういう質がいいのがいっぱいあったんですけれども、それでも中東の石油を輸入してたというのは、温存しておきたいっていうのもあったんですよね。だから、外が買えるうちは買えっていうのをずっとやってきたんですよ。で、中東のやつというのは重いんですよね。でも、使えるといえば使えるので。
山路:ちなみにそういうアメリカ国内の頁岩から取るシェールオイルなんかはどうなんですか?
小飼:シェールはいろいろあるんですけども、割と軽めですね。
山路:じゃあアメリカの今の精油の仕組みっては基本的に割と軽めのでやるように、石油、
小飼:ただテキサスにあるやつとかっていうのは昔はいっぱい中東から、より重い原油を輸入してたわけですじゃないですか。それを精製できる設備というのもあって、それだとベネズエラのいいほうの、マシなほうの原油はプロセスできるということで。
山路:しかしベネズエラはそんなに石油の質良くないんだったら、でも中国はベネズエラの石油のことに関していろいろ結ぼうとしてたりとかしてたわけですよね、中国はそういう質の悪いやつでもとにかく押さえときたかったってことなんですか?
小飼:そういうこと。まぁでも石油が欲しいからというのは二次的なものですよね。アメリカにフットプリントが欲しかったっていうのはありますよね。だから、そう言ってる間にもペルーに世界最大級の貿易港、港を作ってますからね。あっさりちゃっかり。日本ではそのままでは使えない全長400mのコンテナ船とかも横付けできるような港を作ってますからね。それを大西洋岸でもできたら、それはいいに越したことはなくて。その意味ではベネズエラっていいターゲットだったんですけれども。
山路:これ、しかし、アメリカが中国のパワーを押し返そうとしたっていう見方もできるのでは?
小飼:そういうふうに見てる人もいるでしょう。でもですね、今のオーバルオフィスの主というのは、そんなに深く考えてないんです。だから、あのね、皆さんの一番の誤解というのは、僕も含めた誤解というのは、そういうきちっと戦略を考えた上でやってるわけではないんですよ。だから根底にThis is our hemisphere.があるわけですよ。
山路:もっと幼児的衝動みたいな感じなわけだ、
小飼:そうです、はい。いや、Argentina(アルゼンチン)の経済政策も結局早くも馬脚が出てて、倒れかけたのを、要はデフォルトを起こさせる代わりにアメリカのほうが債権をライトオフしたんですよね、ベールアウトしたんですよね。だから、それもだいぶアメリカ国内でも非難が出ましたけれども。要するにour hemisphereなので。
山路:いちおう友達だから助けて、
小飼:友達じゃない、
山路:友達というか、
小飼:部下というか、舎弟なわけです、
山路:舎弟ね、はいはい。餌をあげたわけなんですね。それで、
小飼:餌をあげたというよりも、尻を拭ったんですよね。
山路:それがベネズエラだけではなく、さらにはグリーンランドに関しても。
小飼:そうです、
山路:これもour hemisphereだからという、
小飼:そうです。そういうことです。5歳児くらいにならないと。だから5歳児になってください。今のアメリカのドクトリンを読み取るっていうのは。細かいことを考えるのは取り巻きの連中なので。アメリカの軍事作戦はすごいです、やっぱりUS Armed Forcesっていうのはすごいですよ。あんな作戦ができるのはアメリカだけです。でも、根底にはThis is our hemisphere.なんですよ。
山路:これ、グリーンランドのほうとか絶対に必要みたいなこととかを、
小飼:だからアライアンスで、グリーンランドでアメリカがやるべきことというのは全部できてたんですよ、冷戦時代はもっとアメリカ人がいたんですね、もっといろんなところに米軍基地がディプロイされてたんですけれども。今はもう一か所だけになってるんです、冷戦終わっちゃったから。
山路:しかもそのデンマークとの関係で言えば、そんなのって基地まであるわけだから、何にも、今のままで良かったんじゃないかと思うんだけど、
小飼:そう、アライアンスで十分で、アメリカとソ連の一番の違いっていうのはソ連はoccupationだったんですよ、
山路:占領、
小飼:そう、アメリカは同盟だったわけですね。alliesだったんですよね、ワルシャワ条約機構って言ってますけれども、実際は属国だったわけじゃないですか、東ドイツもポーランドもチェコスロバキアもハンガリーも、全部under occupationだったんですよ、形だけだったんですよね、国の独立性というのは。いちおう国連では一票あるけれども。
山路:そういう旧東の、東欧の国ってめちゃめちゃロシア嫌ってますもんね。
小飼:に対して、NATOというのは本当にアライアンスだったわけです。それでもアメリカの影響が大きすぎるということで、一時フランスはそこにも入ってなかったです。NATOにすら入らずに物事を独立性を保とうとしてたわけですね、フランスは。でも、それでもアライアンスのほうが、アライアンスでいいじゃんっていうことで今はもうNATOの中心的なメンバーですけれども。あくまでも同盟で済ませてたんですよ。すごい違いなんですよ、これは。