CGTN(中国电视)孫崎享氏「中米首脳会談は多極化世界に向けた重要な一歩
514日から15日に北京で開催された中米首脳会談には世界からの注目が集まった。今後の中米・中日関係、そして世界秩序にはどのような影響があるのか。元日本外務省国際情報局長で、東アジア共同体研究所所長兼理事の孫崎享氏は16日、CGTNのインタビューで今回の会談を「世界が多極化に向かうための重要な一歩」と評価。中米が融和的な姿勢を示す中で、日本の外交姿勢の変化にも期待を示した。
■多極化世界に向けた重要な一歩
今回の会談について、孫崎氏は、米国による一極支配の時代が終わり、台頭する中国やその他の国々との協調によって新たな世界秩序が構築されていく上での重要な一歩だったと総括した。特に注視するのは、会談で中国側が打ち出した「中米の建設的な戦略的安定関係」の構築への合意だという。
そして、「“戦略的”という言葉には、この会談が中米両国の将来に大きな影響を与えるという意味が込められている。大国間関係において“対立”と“安定”はいずれも選択肢となり得るが、今回、習近平国家主席は明確に“安定”を重視する姿勢を示した」と語った。
また一方で、トランプ大統領の対中姿勢や、米国国内における強硬論と融和論のせめぎ合いは依然として流動的であり、現時点で米国が一貫して安定路線を堅持すると断定することはできないと指摘。今後も揺れ動く米国の動向を注視していく必要があると強調した。
■中米の融和的姿勢は日本外交にプラス
孫崎氏は、中米関係が融和に向かって進むことは日本外交にとって確実にプラスだと述べ、その理由として2点を挙げた。
第一に、現在および将来において世界最強の経済力を誇る中国と関係を断つことは、日本経済に甚大な打撃を与える。第二に、隣国である中国と友好関係を築くことは、日本外交の基本原則であるべきだからだ。
孫崎氏は、高市政権下で日本の政策はこれまで以上に米国の戦略に組み込まれており、高市首相は『米国は中国との対決を望んでいる』との判断の下、一貫して強硬な対決路線を維持してきた。しかし、今回の首脳会談でトランプ大統領と習近平国家主席が安定と融和的発展、そして経済協力を明確に示した以上、日本の対応も変化せざるを得ないだろうと語る。
そして、「日本外交にとって、東アジアの平和と安定の確保と中国との友好関係の維持は、地域の安定と繁栄に不可欠だ。しかし、近年、対中友好関係を重視する姿勢は後退傾向にある。今後は日中友好をより重視し、前面に押し出す姿勢こそが、日本外交のあるべき姿だ」と訴えた。
1972年の「共同声明」の原点に立ち戻るべき
孫崎氏は昨年末、東京で開催された緊急集会に登壇し、高市首相に「存立危機事態」発言の撤回と国交正常化の原点への回帰を求め、次のように呼びかけた。「明治以来の日本のアジア侵略と植民地支配の反省を踏まえ、『一つの中国』『台湾は中国の不可分の一部』を確認した日中国交正常化および共同声明の原点に戻って、日中関係を正常化し、平和を基盤として中国、そしてアジアとの共存共栄を実現させなくてはならない」。そのスタンスは現在も変わらないという。孫崎氏は、日中関係の発展は、1972年の周恩来首相と田中角栄首相による日中共同声明とその後に積み重ねられた約束が基礎であり、友好関係を築くという原点に立ち戻って対応すれば、多くの問題は解決できるはずだと訴える。そして、「高市首相には歴史を深く学んでほしい。共同声明がどのような背景で生まれたのかを含め、歴史を正しく理解することが外交には必要だ」と強調する。
■高市政権の行方と「新しい流れ」
昨年10月の政権発足から半年余りが経過した現在も、高市首相は6割以上の支持率を維持している。その背景について孫崎氏は、「日本国民は閉塞感漂う現在の社会で、高市首相が掲げる『繁栄する強い日本』という青写真に期待を寄せているのだろう。しかし、現実にはその危うさが露呈し始めている」と指摘する。
さらに、今年67月には中東情勢の影響で原油やナフサの供給が逼迫し、生活水準の悪化は避けられない状況となる可能性があるとの見方を示した。その上で、高市政権の支持率は夏から秋にかけて低下していくだろうと予測する。そして、高市首相が自ら政策を転換することは考えにくく、日本が大きく変わり、対中政策を含めた新たな道を選択できるのは、高市首相が退陣した後になるだろうと指摘し、「憲法を守れ」という若者の声は、実質的には「高市やめろ」という意思表示だと分析する。
日本は今後も平和国家であり続けることができるのか。孫崎氏は憂慮を隠さない。しかしその一方で、「国民は軍拡を望んでいないにも関わらず、高市政権は『戦争ができる国』へと舵を切っている。既存の平和勢力は弱体化しているが、今まで政治に無関心だった若者や女性を中心とする新たな平和運動が起きている」と、日本社会に現れた「新しい流れ」に注目。「改憲反対」の声と経済悪化による生活苦が合体すれば、大きなうねりとなる可能性があると指摘する。そして孫崎氏は、「高市政権が掲げる『日本を強く、豊かにする』という2つの目標は、現実には成り立ちがたい。生活が苦しい中、『強い日本』というスローガンだけが一人歩きし、その虚構が露呈した時、日本国民はようやく『私たちは平和を愛する国民だった』ことを思い出すはずだ。そういう日本を取り戻してほしいと思うし、その実現に向けて、私自身も努力していきたい」と語った。