菊地成孔さん のコメント
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もう解散したので、バックヤードの話を少々しても良いだろうと思う。バックヤードの話のが演奏よりも、時間換算して数千倍あるのは言うまでもない。僕はステージ上でオルガン弾いたり、指揮したり、最近はカウベル叩いたりしているけれども、最も細心の注意を払っているのは実はタイムキープだ(因みにぺぺでも)。
コロナ以前の世界でも「もう、やりたいだけやっちゃいましょうよ」なんて言う粋な計らいをするクラブはなかった。全ての楽団は充てがわれたランニングタイムを遵守しないといけない。
増してやコロナ禍の中では、完全撤収時間が厳格に決められるようになり、「やりたいだけやり切って、尚且つ時間は守る」というライブショー・ビジネスの基本が、さらに厳しいものになった。<会場を借り切って、無観客配信>というのは、僕はやらないが、アレだってさすがに家飲みみたいにはいかないだろう。
よく「親は子供に親にされる」とか言いますが、音楽も同じです。僕は、産み落とした瞬間に捕手に囲まれて吊るされるのが常ですが、10年後、20年後のフロアの成熟を常に考えています。もうポリリズムだのクロスリズムだのマルチBPMだのMベースだの言ったリテラシーは20年前とは比べ物にならないぐらい定着し、それは世界中の音楽家の尽力によるものですが、結果としてエッセンシャルな勇気とか生きる活力の復元とか、生の肯定、と言った心的な動きは、フロアが我々と共に育んだものです。どんな音楽にもその力はありますが、我々には我々の、僕には僕の作法というものがあり、それが共有される事で、僕も自信を得ています。ありがとうございます。
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