ジュリー・デルピー監督・主演のラブ・コメディ『ニューヨーク、恋人たちの2日間』。ラブコメといってもコメディ色のほうが強く、しかもかなり下ネタ、自虐ネタ満載。なのに、下品な感じはまったくなくて、むしろ感じるのは知性とセンスの良さ。下ネタといっても取り上げ方が絶妙なんです。冒頭、主人公が恋人と出会うシーンで、自分は38歳で子持ちで失禁症で、と延々失禁ネタを披露するくだりなど、バカバカしくもリアルで思わずニンマリ。
フランス女優のなかでも、ニュアンスのある知的美人というイメージのジュリー・デルピーですが、振っ切れたコメディエンヌぶりが爽快です。
映画は2008年に公開された『パリ、恋人たちの2日間』の続編的な内容。でも、前作を観ていなくても全く問題ありません。
ニューヨークで暮らすフランス人とアメリカ人のカップル、マリオンとミンガスの元に、パリからマリオンの父親、妹、その恋人が訪ねてきて2日間を過ごすというドタバタ劇。
アメリカの食事を信用せずにソーセージとチーズを大量に持ち込んで空港で足止めされるエピソードから始まり、免疫がなくなるからと体臭を気にせずシャワーを拒否する父親、全裸で部屋を歩き回る妹、子どもたちの前でクスリが買いたいと言いだす妹の恋人など、奔放すぎるふるまいにミンガスの我慢も徐々に限界、マリオンとの関係もギクシャクすることに。
パリとニューヨーク、という2大オシャレ都市を実生活で熟知しているからこそ、どちらの文化も笑い飛ばせるジュリー・デルピーのセンスが光っています。一番常識的でオトナに見えるミンガスも、仕事でオバマ大統領に取材するのが夢で、部屋に飾った等身大のオバマ人形に毎日インタビューしている、なんてちょっとイタいエピソードを持っていたりするのがまたかわいいのです。
キャスティングも鮮やか。特にすごい! と思ったのは、突如、本人役で登場する俳優ヴィンセント・ギャロ。思わず吹き出してしまうほど絶妙な配役。前作に続き、下ネタ好きで何事にも動じないマイペースな父親役を演じる、ジュリー・デルピーの実父も最高です。
センスあるコメディ監督、という意味で、ジュリー・デルピーがウディ・アレンの女性版と語られる理由も納得ですが、ウディ・アレンは苦手、という人にもぜひ観てほしい。
恋愛も仕事もひととおり経験して痛手も追って、それでも日々ハッピーを探し求めるマリオンの姿は、カフェグローブ世代にこそツボ。共感しながら笑えるネタが満載です。
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『ニューヨーク、恋人たちの2日間』[公式サイト]監督・脚本:ジュリー・デルピー
出演:ジュリー・デルピー、クリス・ロック、アルベール・デルピー
原題:2 DAYS IN NEW YORK
7月27日(土)ヒューマントラストシネマ有楽町&渋谷ほか全国順次ロードショー(c) Polaris Film Production & Finance, Senator Film, Saga Film, Tempete sous un Crane Production, Alvy Productions, In Production, TDY Filmproduktion - 2012All rights reserved.
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(文/ミヤモトヒロミ)