『男たちの大リーグ』は画像がないので、『さらばヤンキース』の画像を掲載しています。あしからず。

さらばヤンキース〈上〉―運命のワールドシリーズ (新潮文庫)

 ウィリアムスは暇さえあれば、ビジター・チームの選手にもアドバイスを与えた。タイガースとレッドソックスが対戦すると、タイガースの若手アル・ケイラインとバッティングについて延々と話をし、助言を与えた。とうとうレッドソックスのオーナーのトム・ヨーキーが見かねて「敵を助けるようなものだからやめてくれ」と言い出した。するとウィリアムスは答えた。
「とんでもないよ、ヨーキーさん。いいバッターが増えれば増えるほど野球は面白くなる。いいかい、球場にやって来るとき、二ブロックも手前からものすごい歓声が聞こえることがある。それはピッチャーがストライクを投げたからじゃなくて、バッターが打ったからさ」
 最後にはヨーキーが折れてウィリアムスの言うことを認め、敵のバッターにバッティング・セミナーを続けることを許した。

 特別な夏がある。そのときはだれもそうとは気づかない。いつもと同じ、あるいは少し違うだけのありふれた夏、そうとしか思わない。皆、あとになって振りかえってみて、初めて悟るのだ。それこそは特別な夏、二度とは来ない奇跡のような黄金のひと夏だったのだと。