全読者待望の『HUNTER×HUNTER』最新刊が出ました。
さて、ここで『HUNTER×HUNTER』の話に繋がるのですが、最近、ペトロニウスさんとかLDさんが「新世界」、あるいは「外の世界」といわれるヴィジョンについて話しています。これは、『ONE PIECE』や『HUNTER×HUNTER』などの作品で、いままでの世界よりも遥かに大きい「新しい世界」が存在する、という展開が描かれているという話です。『ONE PIECE』ではまさに新世界、『HUNTER×HUNTER』では暗黒大陸などと呼ばれている場所のことですが――これが、「現実」を意味しているのではないか、という指摘をLDさんがしているのですね。非常に興味深い話だと思うのですが、ここでいう「現実」とは、「努力や成長が意味を持つ少年漫画的な原理」が通用しない世界のことだと思うのです。通常、少年漫画のような物語は、四天王キャラが最弱の者から順番に襲いかかってくるように、主人公の成長に合わせて少しずつ進展する傾向があります。『ドラクエ』でもレベル1のところにいきなりギガンテスがやって来るというようなことはないわけです。しかし、いま述べたように、現実はそうではない。そこでは、判断を誤れば待つものは死であるのみか、最も正しい判断をしてなお、死しか待っていないかもしれない。そういう原理があるわけです。まさに、日本代表が最善の努力をしたかもしれないにもかかわらず、無残な敗北を喫したように。努力が正しく報われる世界、正義が必ず勝つ世界、そういう少年漫画的な原理が通用する世界を「正しい」とするならば、この世は正しくできていないし、まさに「クソゲー」としかいいようがないシステムで動いています。でも、その不条理さを受け入れること、そういう世界を折り合いをつけることが、「大人になる」ということでもあると思うんですよね。「いかにして成熟するか」という問題がそこにあります。そして、成熟した上で、さらに過酷な現実に立ち向かう覚悟を維持することができるか? おそらくその強靭な精神を持った者のみに、絶望的な難易度のクソゲーであるところの「外の世界」は扉を開くのでしょう。そこは努力とか、成長とか、誠意とか、愛情といったものが何の役にも立たないかもしれない世界。かたくななナルシシズムなど一顧だにされない世界。人間中心主義(ヒューマニズム)がまったく通じない世界です。