qtyanさん のコメント
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またまた「小説家になろう」の話なんですが、『無職転生』の感想欄を読んでいると「ああ、この世にはストレスを嫌う読者がほんとうにいるんだなあ」とあらためて気付かされます。
そういうひとが目立つだけかもしれませんが、「なろう」の特徴は作者に直接にああいう展開はいやだとかこういう展開にしてほしいといった要望を送れるところにあるので、作者のもとには「ストレスフルな展開を避けてほしい」という要望が積まれることとなるようです。作者がそういった意見に応えるとどう展開が歪んでてしまうかは過去記事で書きましたが、こういう読者心理そのものも興味深い。
まあ、いまの時代でもそれこそ『まどか☆マギカ』みたいな作品がヒットしているわけで、何が何でもほのぼのじゃないとダメだというわけではないんだろうけれど、コミカルな作品で悲劇的だったり惨劇的だったりする展開になると「裏切られた」と感じるんだろうなあ、きっと。『無職転生』の場合、そういうことが起こりうる残酷な世界だということはしっかり行間を読んでけばわかるのですが。
でも、それも仕方ないことなのかもしれません。Amazonなんかを見ていてもわかるけれど、評価が高いのは読者の欲望にストレートに応えている作品なんですね。
これはべつに萌えだとかエロだとかいうことじゃなくて、たとえば「このキャラクターにはかっこよく死んでほしい」あるいは「死なせてほしくない」と読者が思っている時に、その望みを叶えてあげる作品の評価が必然的に高くなる。
読者がバトルを望んでいるのに農業を始めてしまう『バガボンド』とか(笑)、そういう作品の評価は、あれほどクオリティが高くてさえ低くなる傾向があるようです。
「期待に応えて予想は外す」ことが最善とはよくいわれることですが、じっさいには「期待」と「予想」は不可分の状態にあることも多いわけで、なかなかそういうわけには行かないでしょう。いちじるしく予想を裏切ればやっぱり期待も裏切ったことになってしまう場合が多いようです。
先日の生放送で、ペトロニウスさんがオススメされたとおっしゃってたやつですが、もし未読なら読んでみる価値があると思います。
例によって、ひきこもり少年の異世界転生モノですが、お決まりのチート能力は無し、現代知識が役にたつ場面もあまりなく、唯一の能力(?)は、ある意味つらい「死に戻り」だけという設定です。
主人公が容赦なく何度も殺され、心身ともに執拗に追い込まれながらも先を目指し、最後にはちゃんとカタルシスも得られます。
そこだけ取り出せば、似た設定の物語はあっても(例えばNitroplusのエロゲー『スマガ』とか)、こと「なろう」においては異質な作品と言えるのではないでしょうか。
素晴らしいのは、作者が「感想ウェルカム!」と書いていて、当然というか中には一部の読者から「苦言」もあるようなのですが、それに対して「予想の範囲内なので大丈夫」とまったくブレないことです。
プロットも完結まですでにあるらしく、更新速度も量もすごいので、とても安心して読んでいられます。
そんな「なろう」のメインから外れた作品ですが、ちゃんと一定以上の人気を博しているのを見るに、結局のところ面白ければ、たとえ読まれなかったり途中で脱落した層が居たとしても、多くの読者がちゃんと付いて来るという、何よりの証拠だと思うのです。
長々と、しかも連投してしまい、失礼しました。
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