1.謎。2.主人公に感情移入できる。3.設定描写。4.ファンタジー性。5.泣ける。
弱いなら弱いままで。
科学者は様々な自然現象のなかにそういう法則を見出すわけだが、作家は物語になかに法則を発見する。物語をエンターテインメントたらしめる、人間心理に即した不変の「掟」である。
本書は『ジョジョの奇妙な冒険』で知られる不世出の天才作家荒木飛呂彦がその「エンターテインメントの掟」を開陳し尽くした脅威の一冊。
タイトル通り、荒木が色々な映画を取り上げて「ここがいい」「ここがイマイチ」と語っているだけの本なのだが、その語り口が例の「荒木節」で、作品の見方がオリジナルなので、読んでいて抜群に面白い。世に映画批評本は数多いが、まさにひと味もふた味も違う一冊といえる。
何しろ書き手が荒木飛呂彦だから、読むほうは「どんな独自の解釈があるのだろう?」と考えるだろう。本書はその期待に応えているともいえるし、応えていないともいえる。
というのも、荒木はあくまで自分の嗜好にもとづいて作品を選び、語っていて、そこには読者に対する配慮などほとんどないからだ。読者は天才荒木飛呂彦の視点から無数の映画を見、ひたすらにうなるばかりである。
荒木が作品を見るときのポイントは「サスペンス!」、これに尽きる。『ジョジョ』もまたきわめてサスペンスフルな作品だが、その起源はどうやらここで取り上げられた映画たちにあるらしい。
荒木は数々のサスペンス映画から作劇を学び、『ジョジョ』を生み出したのだ。かれによると、よくできたサスペンスは以下の五つの条件を満たしているという。
この五条件を満たした作品が荒木的な意味での名作なのだ。この五箇条が具体的に何を示しているのか、くわしいことは本文に譲るが、とにかく荒木独特の価値観に「なるほど」と思わせられる。
この本を読んでいてはっきりとわかるのは、荒木が「世間的な評価、価値観」といったものに何の意味も見出してはいないということである。
荒木にとって大切なのは自分が面白いと思うかどうかであって、ひとが名作といおうが、駄作と貶そうが、そんなことは一切関係ないのだ。
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