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原作『魔界転生』は〈柳生十兵衛三部作〉の第二作にあたり、天才山田風太郎の数ある名作のなかでもさらに抜きん出た珠玉の金字塔、空前絶後の歴史的大傑作だ。
この世に怨みを遺して死んでいった剣客たちが、女体を突き破りふたたび生まれ変わるという大奇想「忍法魔界転生」を軸に、剣侠、柳生十兵衛と魔界転生衆の壮絶無比な死闘を描いている。
山田風太郎作品の特色であるエロスとバイオレンスは、この作品において、いっそう凄絶を極める。
天草四郎や宮本武蔵を初めとする天下の大剣客たちが、飽くなき生命への執着からこの世に蘇ってきて、だれが天下無双かと戦いつづける。その天外の着想を、凄絶かつ艶かしい展開が彩っている。
それにsちえもせがわまさきの描く女性たちは皆、一様に美しくも艶っぽい。いったいせがわまさき以外の何者が、『魔界転生』を漫画の形で生み出すことができるだろう。
もちろん、いままでも山田風太郎作品はたびたびメディアミックスされてきた。それというのも、山田の小説が高度に視覚的で、いかにも画像や映像にふさわしいように思われるからだ。
しかし、駄目なのだ。山田が綴る物語は、あくまで山田の超絶の文章があって初めて成立するものであって、絵にしてみた途端、その秘密の魔法は解けてしまう。
一見するとこの上なく漫画にふさわしいように思えながら、風太郎世界を漫画に移し替えることは決してたやすくないのである。
だが、見よ、この『十 魔界転生』は『魔界転生』の、あの妖異変幻な世界を紙上に生み出しえているではないか。それぞれに肉感的な男たちの、女たちの姿に魅了される。
ただ剣士として最強であるのみならず、その人品においても最高であるはずの男たちが、次々と「魔界に転生したい」と望み、生前の人徳をすべて捨て去るさまは、実に悽愴、限りない。天下の大剣士たちにしてこの未練、これが人間の本質なのだろうか。
それにしても、わかってはいたものの、この作品の構成にはやはり一驚させられる。何しろ、物語が第2巻までたどり着いてまだ主人公が姿を見せないのだ!
タイトルにある「十」、柳生十兵衛は話がここまで進んでなお、影も形も表さない。この破格異形の構成こそ『魔界転生』の要である。この構成なくして、『魔界転生』は成り立たないのだ。
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