弱いなら弱いままで。
若宮弘明『蹴球少女』を読みました。うん、何だ、この漫画は(笑)。いやー、思わず「(笑)」を付けてしまうわけのわからなさ。
タイトル通り、「蹴球(サッカー)」+「少女」の話ではあるのですが、何をどうしたらこんな悪魔合体的な漫画が出来上がるのかわかりません。
変な漫画だという話は聞いていたのですが、ほんと何だよ、これ。まあ、エロコメ漫画として読んでいる分にはふつうに笑えるので楽しいのですが、時々シリアスになるんですよね。いやはや……。
最近読んだ漫画のなかではずば抜けた軽さで、何冊読んでもまったく疲れません。そういう意味ではほんとうにストレスレスな作品で、ある意味、偉いのだろうけれど――まあ、読み終えた後には何も残りません。
Amazonの内容説明の一節がこの漫画の本質を捉えていると思う。「疾走感あふれるバカバカしさ! 失笑するほどエッチ! だけど時折、胸を熱くさせる! 傑作スポーツエンターテイメント!!」。
まあ胸を熱くはさせないけれど、たしかにバカバカしいし、失笑させられる。時々、本気で爆笑させられることがあるので、いい漫画なのだろうとは思います。
しかし、良くもここまで行き当たりばったりの展開を考えられるなあ。いや、この場合の行き当たりばったりというのは批判ではなくて、この場合はもう「そういうもの」として受け止めるべき漫画なのだろうと思います。
シロウトばかりを集めた女子サッカーチームが数週間の練習で男子の強豪校に勝ってしまうのも、主人公が女装してサッカーをプレイして新たな技術に目覚めるのも、「そういうもの」だと思って読む限りにおいてはある意味で面白い。
そりゃツッコミを入れはじめたら際限がないかもしれませんが、まあ、「そういうもの」なのだ、と理解して読む限りにおいては、気楽に読める楽しい作品だといえるんじゃないでしょうか。
天才的なサッカー少女が男子とのフィジカルの差という壁にぶち当たるという話は、新川直司『さよならフットボール』という傑作があります。
で、何でテーマ的には同じことをやっているのに、『さよならフットボール』とここまで違うものに仕上がるのかと思ってしまう。謎です。いや、ほんとうは謎でも何でもないんだけれど……。
ま、とにかく変な漫画としかいいようがない。最近、ここまでおかしい漫画は読んだことがないかもしれない。
一冊に一度以上は確実に「ねーよ!」ポイントがあるので、気軽に笑いたい人にはオススメです。うん、これは一度読んでみる価値はあるんじゃないかと思う。
とはいえ、ひとつひとつの要素を取り上げていくと、それほど変わったことをしているわけでもないんですよね。
サッカーの天才少女が男子に挑むというテーマは、さっきも書いたように『さよならフットボール』のような例がありますし、主人公の美少年プレイヤーが意味もなく女装させられるとか、そういうのも過去に例はある。
個々の要素を取り上げていけば、そこまで奇天烈でおかしいというほどのものでもないはずなんですよ。それにもかかわらず、できあがったものは実に異様としかいいようがないシロモノになってしまっている。ここらへんが漫画の面白さ――といえないこともないかも。
色々アイディアを合体させていくと、
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