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『詩羽のいる街』は作家山本弘が最高傑作と自称する作品である。初めにいっておくと、この作品は傑作だと思う。山本作品のなかでも、『神は沈黙せず』とならんでベストを争う。しかも、『詩羽』は衒学的知識を駆使した『神は沈黙せず』とは全く作品のベクトルが違う。山本にとって新境地を切り開いた快作なのである。
物語は、春夏秋冬、四つの季節に彼女と出逢う四人の人物の視点から、詩羽(しいは)という名のなぞめいた女性を浮かび上がらせていく。詩羽は一円もお金を持たず暮らしている不思議な人物である。それどころか、決まった家すらない。彼女は街なかで出逢ったひとに親切にし、その見返りで食事をさせてもらったり、家に泊めてもらったりしているのだ。
彼女の「親切」は魔法でもなければ、超能力でもない。単なる善行に過ぎない。しかし、それはどんな魔法よりも魔法的な力である。今日も詩羽はひととひととを結び合わせ、奇跡のような出来事を起こしていく。
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