『ブラックスワン』『レスラー』など、主人公を精神的にも肉体的にもとことん追い込むストーリーで知られるダーレン・アロノフスキー監督。最新作『ノア 約束の舟』が6月13日より全国ロードショーとなります。
『ノア 約束の舟』は旧約聖書の「創世記」に登場する大洪水にまつわる物語をベースに描いたスペクタクル歴史ドラマ。主演にラッセル・クロウ、共演にジェニファー・コネリー、エマ・ワトソンなど豪華キャストが出演しています。
監督は本作について「ノアと方舟の物語は、何千年もの間語られてきた偉大なものですが、こうしてメジャーな形で映画になったことはありません。聖書を読む文化があまり無い国でも、洪水や水をテーマにした映画は必ずある。水という破壊と創造の象徴を描いています」とコメント。
監督のこれまでの作品が大好きな筆者は正直『ノア 約束の舟』の予告編を観た時に(あれ? この大スペクタクル感、本当にダーレン・アロノフスキーなの……?」と思ったのですが、映画を観た後は監督らしい一人の男の選択と、それに伴う犠牲や苦痛が描かれていたので「ああ、これはまさしくダーレン・アロノフスキーだ」と思ったものです。
今回は、監督ご自身にインタビューを敢行。映画の撮影の裏話や伝えたいメッセージなど色々とお話を伺ってきました。
――まずは本作を制作・撮影にするにあたっては苦労の連続だったと思います。特に苦労された点はどんな事でしょうか?
ダーレン・アロノフスキー:聖書のそれぞれのエピソードはとても短いので、それを想像してふくらませて2時間の映画にするのはとても苦労した。聖書の中のテーマに忠実で、物語に真実を与える事が大切で。真実に根付いていて、観客が理解してくれる登場人物にする必要があったので、ノアやハムといったキャラクターを登場させているが、聖書の中の「ノア」って神の言う通りにやるという以外は、キャラクターが細かく描かれていないんです。
――予告編を観た時にあまり監督らしくない作品なのかな? と思ってしまったのですが、拝見すると主人公が抱える苦悩や、そこから前をむいて進んでいく姿などは非常に監督らしいなぁと感じました。そうした“作家性”というのは自然と出てくるのでしょうか?
ダーレン・アロノフスキー:特に意識はしていなくて、自然に出てくるんだ。極限まで追いつめられた人間に魅力を感じているかというと、狂気と、何かを変えようと必死にもがいている人間の間には細い線しかないと思っていて、そこに興味があるんだ。役者の演技を引き出す為には、もっともっとと追い込む事もありますが、役者さん達はカットがかかったら普通の人間に戻りますので、安心してくださいね。
――本作に登場する、エマ・ワトソン演じる「イラ」のキャラクターもとても印象的でした。
ダーレン・アロノフスキー:私の母と姉はものすごく強い女性なので、女性は大切にしないとボコボコにされる環境ではあったよ(笑)。強い女性が一生懸命何かを訴えるという話は『π』という映画に出てくる隣に住んでいるおばさんで描いている。『レクイエムフォードリーム』はみんなおかしくなってるからアレだけど、『ファウンテン 永遠につづく愛』と『レスラー』ではまた強い女性を描きました。『ブラック・スワン』はみんな頭がおかしい映画なので……。『ノア 約束の舟』ではまた強い女性を描けて嬉しいよ。
――今日はどうもありがとうございました。
『ノア 約束の舟』ストーリー
ある夜に見た夢で、世界が大洪水に飲まれ滅びるということを知ったノアは、強い使命感に突き動かされ、家族とともに罪のない動物たちを救うため巨大な箱舟を作り始める。ノアの父を殺した宿敵ルバル・カインは、ノアから力づくで箱舟を奪おうとするが、争いの最中に大洪水が始まってしまう。箱舟はノアの家族と動物たちをのせて流され、閉ざされた舟の中でノアは神に託された驚くべき使命を打ち明ける。
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