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インターネットは危険? 医薬品に続いて不動産でも論争再燃[連載:岩盤規制(4)]
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インターネットは危険? 医薬品に続いて不動産でも論争再燃[連載:岩盤規制(4)]

2014-07-19 07:30
    役人の掟

    ●インターネットは危険なのか? 医薬品に続いて不動産でも論争再燃

    インターネットによって、世の中はずいぶん便利になりました。

    ビジネス上、ここ数年で大きく変わったことのひとつは、テレビ電話方式での会議参加が当たり前になったことでしょう。

    遠方に出張中でも、インターネットさえつながっていれば会議参加できるようになったので、ずいぶん効率的に仕事ができるようになりました。

    民間ビジネスだけでなく、今では国や自治体の会議でも、テレビ電話方式は当たり前に使われています。

    例えば、私は大阪市の人事監察委員会の委員を務めていて、月に1~2回会合がありますが、ほとんどの場合、大阪には行かず、東京からテレビ電話で参加しています。他の参加者の様子は机上の画面に表示されるので、同じ会議室にいるのとほぼ同様の感覚です。

     また、国の会議でも、たとえば産業競争力会議など、大物経営者らが名を連ねる会議では、ほぼ毎回のように、委員の誰かが出張先の海外からテレビ電話で参加し、総理や関係大臣らと議論しています。

     こうした便利なツールは、放っておいても、社会でどんどんと広まっていくものです。

     ところが、中には、その利便性を享受できない分野もあります。

     規制によって、インターネット利用が禁止されている分野です。

     そのひとつが、前回記事(岩盤規制3)で紹介した、医薬品のインターネット販売です。

     今年6月から解禁された……と言われていますが、

    ・本当は決して「解禁」とは言えないこと、
    ・また、一部禁止が続く理由は、「インターネットを利用すると危険だから」とされていますが、少し掘り下げれば、全く論拠薄弱であることをお話ししました。

     同じような話は、ほかの分野にもたくさんあります。

     実は、医薬品と全く同じような議論が、ちょうど今、不動産取引に関してなされています。

     争点となっているのは、宅地建物取引業法に基づく「重要事項説明」です。

    現行制度では、

    ・契約の中の重要事項について、宅地建物取引主任者が対面で説明すること、
    ・その際、「書面」を交付すること(電子メールなどでは不可)、

    が求められ、インターネットを利用した重要事項説明は認められません。

     「不動産取引の場合、ふつう現地で物件確認するのだから、別に構わないんじゃないか?」と思われる人もいるかもしれませんが、そうとも限りません。

     例えば、遠方に転勤する場合や、時間のないビジネスパーソンが引っ越す場合など、物件候補は現地に見にいくとしても、最終的に選んだあとの重要事項説明などの手続きは遠隔で済ませられれば……といったニーズは少なくないでしょう。

     また、近距離の引越しであっても、「家族でシェアしたいのでテレビ電話で説明してほしい」「文字に残すため対面ではなくメールで質問に回答してほしい」などの理由で、インターネットでの重要事項説明を望む場合もあるでしょう。

     しかし、現行制度ではこれは認められず、重要事項説明の際は必ず「対面」しなければならないわけです。

     こんな規制は見直すべきではないか……ということで、2014年4月、国土交通省で、「ITを活用した重要事項説明等のあり方に係る検討会」という会議が設置され、検討がスタートしました。

    http://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/sosei_const_tk3_000092.html

     ただ、「検討会」が設けられたからといって、インターネット利用解禁がすんなり実現するとは限りません。

     医薬品の場合と同様、解禁に向けて検討がなされても、結論はごく部分的な解禁にとどまってしまう、といった可能性はいくらでもあるのです。

     検討会での議論の様子をみると、すでに、そんな気配が濃厚です。

     議事録が公開されていますが、インターネット利用を解禁すべきという委員がいる一方で、「インターネット利用には問題がある」との主張が数多く見られます。

     問題の理由としてあげられているのは、

    ・テレビ電話による場合、相手が(書面をみるため)下を向いてしまうので、表情が読み取りづらく、理解できているかどうかの確認が難しい、
    ・取引主任者証が、テレビ電話でははっきり見えないので、偽造されても分からないおそれがある、

    といったものです。

     医薬品の際の、「対面ならば、五感を用いて、鼻汁の色などを感知できる」という議論とまた同じような話……と思ってしまうのは、私だけでしょうか。

    ・「下を向いてしまう」場合があるのは、「対面」であっても同じことでしょうし、
    ・「取引主任者証」は、多くの消費者はそんなに見たことがないので、「対面」であっても偽造かどうかの区別はつかないことが多いでしょう。

     こんな論拠で、「インターネット利用には、まだまだいろいろ問題があるので、部分的な解禁にとどめるべき」といった結論になってしまうのでしょうか……。

     幸いにして、このテーマは、まだ検討会を開催中で、結論が確定していません。

     検討会の資料や議事録は公開されていますから、ぜひ、読者の皆さんにもご覧いただき、さらにできれば、一消費者として声をあげていただけるといいのでないかと思います。

    (株式会社政策工房代表取締役 原 英史)

    ●関連する本
     『日本人を縛りつける役所の掟 岩盤規制を打ち破れ』(7月1日刊行)では、21分野の岩盤規制をとりあげ、それぞれの規制の裏側を解説しています。
    http://www.amazon.co.jp/dp/4093897492

    目次:

    第1部身近なところに潜む「役人の掟」
    ・道路運送法―デフレ下でも値上がりを続けた元凶「タクシー規制」を強化する安倍政権に物申す
    ・薬事法―薬のネット販売を潰した「省令」という役人への白紙委任
    ・改正薬事法―薬のネット販売解禁論議のウラで薬局が守った6兆円の「本丸」利権 ほか

    第2部 成長産業の邪魔をする「役人の掟」
    ・農地法―「農業ベンチャーは役員も農作業義務」とは…農協と役人を食わせるのが農業の役目じゃない
    ・健康保険法―名医もヤブ医者も同一料金、同一報酬の“医療カルテル”は誰を潤すのか
    ・医療法―評判の病院に行列ができても役人は入院ベッド増を認めない ほか

    第3部 国家の仕組みを牛耳る「役人の掟」
    ・法人税法―法人税引き下げと引き換えに税金タダの「特権法人」を見直せ
    ・公職選挙法―若者の政治参加を邪魔する総務省と議員はシルバーデモクラシーの既得権を守りたいだけ
    ・道路整備特措法―「民間開放」と言いながら「儲けるな」とは…高速道路は未来永劫、政官の利権なのか ほか

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    連載:岩盤規制(原英史)
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