中川先生の経営学はじめの一歩

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  • ユーザーをイノベーションに巻き込むには

    久保田達也・大沼雅也・積田淳史(2024)専門家ユーザーによるイノベーションへの関与と障壁―医師を対象とした実証分析―.日本経営学会誌56: 45-58. 製品ニーズは常にユーザーの心中にあるのだから、ユーザーにイノベーションに参加してもらってしまえば製品の進化が加速するだろう。これがユーザーイノベーション理論の原点。 では、ユーザーの製品革新活動への参画を阻害すのは何か。 これを81名の医師への質問票調査から明らかにした。 ・評価や昇進につながらない ・本務に時間を使いたい ・自分の知見が当該製品の発展に寄与しない この3つくらいの因子があることを見出した。 だとすれば、ユーザーにイノベーションに参加してもらうには、第1第2の事項から、 ・評価や昇進と結びつける ・時間の余裕を作ってもらう が大切だということになる。 そして実は第3の要因がポイントで、自分の専門は無関係だと思っていても、イノベーション推進側からするとそういう人の意見が大切だったりするので、 ・自分の知見は寄与しないだろうと思っている人も巻き込む も、効果的である。 いろいろ、ヒントがある研究だと思います。

    2025-01-06

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  • 大沼・村瀬(2024)ICTコミュニケーションの組織成果への影響

    大沼沙樹・村瀬俊朗(2024)ICTを介した情報共有で生じる認知的負荷に及ぼすコーディネーションの効果と職務成果への影響.日本経営学会誌, 56: 16-31. よい論文だった。さすがと言うべきか。 時代が必要としていることを、正確な分析できちんと検証することを通じて、学問と社会とに貢献する。こうありたいと思える研究。結果をダイジェストで伝えれば以下のとおり: *** ICTツールがもたらす情報負荷は組織成果にマイナスである。 だが、それは相手側にどう読まれるかをよくよく考慮した的確なコミュニケーションや、ICTツールの機能理解向上によって、低減することができる。 *** ICTツールを導入するだけではダメで、それを使いこなすコミュニケーションとツールへの習熟が鍵だということ。ハードではなくソフト。 堅実でいて、タイムリーであり、しっかり学術的な道領域の探求である。こうした研究を積み上げていくことは、自分にはできない技量と精神だと敬意を覚える。 コミュニケーションと生産性のためだという目的をはっきりさせて、それを改善しうる用法で、メンバーの使いこなし能力を高めながら導入する。それが、成功するDXの鍵だということ。

    2025-01-01

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  • Unknown unknowns

    Unknown unknowns 知らないということを、知られていない事項のこと。 古くは1950年代に心理学者が提唱している概念だそうだけど、この言葉が有名になったのは今から20年前、同時多発テロ発生時のアメリカ国務長官ラムズフェルドの発言によって。 Reports that say something hasn't happened are always interesting to me, because as we know, there are known knowns; there are things we know we know. We also know there are known unknowns; that is to say we know there are some things we do not know. But there are also unknown unknowns – the ones we don't know we don't know. 読みにくい文章のようだけどヒップホップばりにリズムをつかんで読むと読める。 「何も起こってないっていう報告はね、まったく面白いもんだよ。 知っていることは知っている。これはみんな分かる。 知らないということを知っている。これもみんな分かる。 だけども、「知らないことすら知らない」ってのもある。 知らないってことを、知ることができない。(それが問題である)」 うーん、うまく訳せただろうか。正直訳さないほうが読みやすい。 要するにリス...

    2024-12-26

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  • 成功している大企業の経営者が言うことは(良くも悪くも)基本同じである。

    経営研究所さんが発行されておられるマネジメント・トレンドを拝読した。 決して批判では無くてですね、JRとかANAとかの大企業のトップ経営者さんが、こうした書で語ることというのは、基本ありきたりなんです。 下手なことも言えないし。 そして、万人を抱える組織のトップとなれば、社会に責任をとか、従業員に還元をとか、現場が大切とか、組織をただしく動かすためのロジックはどうしても収斂してくる。 私が同じ立場だったとして、同じことを思い、同じことを言うだろうと思います。 なので、トップとして人材不足であるとかそんなことは決してなくて。むしろ、やるべきことをきちんとやっているから、当たり前の言葉になるし、そして、JRとかANAとかは上手くいっているのだろうと思います。 私が言いたいのは、【万人のトップの言葉から、一般のビジネスパーソンが学べることはあまりない】ということです。凝った戦略も必要なければ、知的な鋭さが求められるわけでもない。現場の人々が最大限に力を引き出せるような、人格的な統治をするのみ。 というわけで、良い意味において、火急的な事態が発生していない万人の組織のトップともなれば、話すことは代わり...

    2024-12-25

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  • アクセラレーターは資金調達に明確な関連がある。

    日本経営学会誌、山口太郎さんたちの研究チームによるアクセラレーターの効果検証。 山口太郎・岩田健吾・椙山泰生(2024)「スタートアップの成長フェーズ・タイプによってアクセラレーター支援の効果は異なるのか?」日本経営学会誌, 56: 3-15. スタートアップのデータベースを活用した検証。質の良いデータを提供いただいて、我々はユーザベースさんに感謝しなければならない。 分析結果は「アクセラに設立から早い段階で採択されれば、それは資金調達につながりやすい」というもの。 ここで昔から問題になるのが 1)支援の結果なのか 2)アクセラレーターのお眼鏡にかなったスタートアップだという選抜効果があるのか 3)そもそも、もとから良い(VC目線でもアクセラ目線でも)スタートアップだということを意味しているだけなのか という問題。実は1)であるという可能性は最近はやや否定気味で、アクセラレーターの支援効果というのは俯瞰的に見ればあんまり意味がないとされる(ハマる会社にはハマる)。ただこれはビジネス知識が不要だとかそういうことを意味しているわけじゃない。安定的な事業組織にする上では経営知識の習得は大いに意味があると思うけれども、...

    2024-12-09

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  • がっかり。デザイン研究は進んでない。

    後藤智・八重樫文(2024)「デザイン思考研究は組織論の発展に貢献するのか」『組織科学』58(1):31-46. タイトルでもあり著者たちが意図したこと「組織理論をどう発展させうるのか」は全く達成できていないが、デザイン思考研究が「経営という行為そのもの」にどう貢献するのかについては知見がある。 すなわち、デザイン思考は、人間主義とかインクルージョンといった現代的な価値規範として正しいとされることの、その価値をよくよく理解させながら、それを個人としては内面化させ、組織としては制度化することを通じて、組織変革を後押しするものだ、ということ。 たぶんそれは一つの研究成果として正しい。その意味で学びは得られた論文。 なんだけども、うーんなんだかな、期待しているのはデザイン思考研究は組織現象の論理的・構造的理解にどう寄与するのか、なのだと思うし、それはちゃんとテーマからぶれることなく言語化すればちゃんと出てくると思うんだけれどもなあ。「発散思考をしていくなかでも、テーマには集中する」はデザイン思考の基本だとも思うんだけども。どうしてこうズレるかな。 そもそもこの特集として、1冊かけてデザイン研究の特集な...

    2024-11-22

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  • 「デザイン」を社会科学がとらえる目線。

    東北大・秋池先生と一橋大・吉岡先生の論稿。過去のデザイン研究をレビューし、デザインを社会科学がどう捉えているか、その視点を整理した労作。レビュー以上に、秋池さんや吉岡さんにはもっとデザイン研究を進めてほしいという気持ちはちょっとあるけど笑、ともあれ本研究は良作。 デザインの評価する軸は、 ・機能性 ・美観 ・象徴性 ・複雑性 ・典型性 ・新規性 ・識別性 ・アフォーダンス(対象との接触点、相互作用) どこかで何かに使えそう。デザインというものに、象徴性や新規性という役割も与えられているというのは、見落としがちな大切なことだと思う。これまでと違っているもの、という感覚をきちんと与えないといけないのだ。 と同時に、典型性:あるカテゴリーや、あるものごとのためのものであるということを認識できるようにも、デザインしなければいけない。

    2024-11-18

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  • 管理会計は食える技術。

    本日の勉強はこちら。関東学院大副学長・やさビ講師、江頭幸代先生の原価計算&管理会計の新刊。 原価計算→管理会計→意思決定会計という大構造が体得できる。 初学者向けでありつつ計算問題まで用意する江頭先生の本。 1冊マスターすれば、管理会計で就職できる。管理会計は、食える技術。 管理会計、役立つ技術なのに、みんな回避するのがもったいない。学生も社会人も、専門でなくてもやるべき。 私の経験上、実務家になって一番生きた経営学分野の1つ。 その意味で、ざっくり単価・固定費・変動費がイメージできりゃいい、という私の教育アプローチも、入口戦略としては正しい…はず!

    2024-11-11

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  • 明治期に、専門経営者が登場するという話。

    経営は、ある時期に社会的な機能として必要性から発達し、それを担うものとして経営者・マネジャーが誕生する。我々はこの事実を忘れがちになる。 チャンドラー『組織は戦略に従う』が、かつて20世紀には経営学徒にとっての必読書であった理由はここにある。「社会の発展に応じて、どういう経営機能が、どういう文脈で必要になったのか」を学び、専門経営者はこの社会のなかで何を為すべきなのかか、なぜ為すべきなのかを、体得させてくれる歴史書だった。 宮本又郎ほか『日本経営史』を久しぶりに開く。これも積読のひとつ。やさビでも教鞭をとってくださった阿部武司先生による、明治期の専門経営者の登場と、そこからの経営組織・手法の発展の節。オマージュのようにチャンドラーをなぞる構造にようやく気が付く。こんなの学部生では気が付かないでしょ笑。 とはいえ、改めて、生産管理、人事労務、財務会計など、ひとつひとつの経営機能がその現場の希求から導入されていき、発達を遂げていく様子が頭の中に再構築される。こういうダイナミズムが大切なんだと思う。理論として何百年も前から整然とそこにあるものだと捉えるのではなく、時代の中で、必要性によって...

    2024-11-10

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  • 世のスタートアップには助成金が必要だという現実。

    アマゾンとかフェイスブックみたいな稀有な例外事象に頭を引っ張られてはいけないのだという話。 スタートアップ生成には、ある程度まで政府・自治体の助成金が必要だということ。 近藤祐大(2024)「助成金を通じたスタートアップの資源獲得」組織科学57(4)37-53. 早稲田・井上さんのところのお弟子さんですね。会ったこともあるのかな? 本研究ではテックスタートアップがそのアーリーステージで助成金を得ることで、 ・チームの成熟 ・パートナーとの信頼関係構築 ・製品実用化 ・起業家自身の成熟 ・ミッション・構想の具体化 ・ビジネスアイデアの発展 ・業界での正当性 などを獲得していたことがわかった。実はこうした検証結果は米国ですら観察されることで、こんにちの技術スタートアップを育てるためには、民間の資源だけでは事足りなくなっているという実態が浮かんでくる。 政府支援で事業化をするなんて何か変なんじゃないの、という引っ掛かりは誰しも覚えると思いますが、そういう時代じゃないのだということ、技術をもって社会を変えるスタートアップには、政府支援も必要で、そういう競争枠組みになっているのだというように、理解をアップデートしなけれ...

    2024-11-07

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