例えば介護保険制度と同じ年にできた交通バリアフリー法は、この15年間で何度か改正され、その成果として駅や空港ターミナル等のバリアフリー化は格段に進みました。公共交通機関は、障がいを持つ人やお年寄り、さらにはベビーカーを使う人や大きな荷物を抱えた旅行者に優しいサービスを提供するものという意思表示だと思います。
しかしながらまだ課題も残っていて、例えば駅舎の他はどうなっているかといえば、新しい列車には車いす対応の座席が増えて喜ばれている一方で、その車いす席の予約や購入をする手続きでは、ほとんど改善がみられないままできました。
先日、車いすユーザーの知人が教えてくれたのですが、山形県のJR駅では、すべてのみどりの窓口で、車いす対応の座席予約が電話で可能となったといいます。上京のたびに新幹線をつかっていた彼は、これまで利用の度にまずみどりの窓口へ行き、空席確認をしてから予約を入れてもらい、その結果を待って再び乗車券等を購入するために駅へ出向くという煩雑な手続きをとらされてきました。
そもそも外出に困っている障がいを持つ人が、切符を買うのに何度も駅まで出かけなければ列車に乗れないという状況が続いていました。
それが電話予約を可能にしてくれたおかげで、希望の列車は予約しておけば、乗車日時にあわせて駅へ行くだけでよくなり、彼はとても便利になったと喜んでいました。
同じことは東京でもやってほしいと近くの駅に頼んでみますが、まだ応じてくれる様子のないところが多いようです。
一般の座席利用であれば、今やネット予約があたり前の時代というのに寂しい話だと思います。
介護旅行のユーザーは車いすで移動を希望するお年寄りが多いので家族やトラベルヘルパーのような本人に代わって予約する人は、以前の友人と同じ手続きをとらなければなりません。その度に窓口へ並び予約を入れ、また席が取れたら再び購入しに行くという行為を繰り返し、混雑する時期にはさらに窓口まで出向いて、今度は帰路の手続きに往復するというあり様でした。
少子高齢化がすすむ中、せっかくの法律もこのように本当に利用する人の立場にたって便利になるところまで浸透させなければ、その成果は示されていないと思います。
【篠塚恭一しのづか・きょういち プロフィール】
1961年、千葉市生れ。91年株SPI設立代表取締役観光を中心としたホスピタリティ人材の育成・派遣に携わる。95年に超高齢者時代のサービス人材としてトラベルヘルパーの育成をはじめ、介護旅行の「あ・える倶楽部」として全国普及に取り組む。06年、内閣府認証NPO法人日本トラベルヘルパー外出支援専門員協会設立理事長。行動に不自由のある人への外出支援ノウハウを公開し、都市高齢者と地方の健康資源を結ぶ、超高齢社会のサービス事業創造に奮闘の日々。現在は、温泉・食など地域資源の活用による認知症予防から市民後見人養成支援など福祉人材の多能工化と社会的起業家支援をおこなう。