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高野孟:幼稚な「マスラオぶりっこ」はロクなことにならない
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高野孟:幼稚な「マスラオぶりっこ」はロクなことにならない

2014-06-30 09:18
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オバマ米大統領がイラク北部へのアル・カイーダ系武装勢力の侵攻に対して直接軍事介入すべきかどうか悩んでいる。それを見て、米国の共和党タカ派やネオコンの残党たちの間では「弱腰だ。シリアに続いてまたも不介入を決めれば、米国がバカにされるぞ」という批判があり、一部マスコミも「及び腰」といった表現でそれに追随している。しかしその論調に、ある国際通の野党中堅議員は怒っている。

「軍事力を断固行使して世界の警察官として毅然と振る舞うべきだという米国右派の主張が時代錯誤なのであって、アフガニスタンとイラクであれだけの戦争を13年も続けてきて、それが何の役にも立たなかったからどちらも内乱が収まず国家崩壊が続いているわけで、ここでまた米軍が出て行ったら、ますます収拾がつかなくなる。誰が考えたって分かるでしょう。断固とか毅然とかいうマスラオぶりっこの話じゃないんですよ」と。

少なくともオバマは、地上軍の投入はあり得ないと宣言しているから、象徴的な空爆をするかどうかというところだろう。「当たり前ですよ。だって、あなた、IAVAの3月の特別白書を詠みました?」と同議員が問う。IAVAは「全米イラク・アフガン帰還兵」という退役軍人の支援組織だが、その白書は知らなかった。

「9・11以後、2つの戦争に米国は延べ260万人の兵士を派遣し、この3月までに5千8百人が死に5万2千人が負傷した。負傷しても帰還できればまだマシですが、その人たちを含めて帰還兵の何と60万人が、戦地の恐怖を体験して心的外傷ストレス障害(PTSD)に陥り、その中から推計で1日あたり推計で22人が自殺している。しかも30歳以下の若い人の比率が高い。馬鹿な指導者が感情に任せて大義も戦略もない戦争を発動すると、相手の国だけではなく自分の国も社会崩壊してしまうんですよ。だからオバマはこんな戦争は2度とやりたくない。むやみに軍事力を振り回す国から脱皮しようと腐心している」

問題は、そのオバマの苦心惨憺を「弱腰」と片付けてしまう米国右翼のシンプル思考が、安倍晋三首相とその周辺にも伝染しつつあることだ。集団的自衛権問題の本質はそこで、中国と戦争をやりたがらないオバマに「日本も一緒にやりますから断固・毅然と戦いましょうよ」と安倍はけしかけているのである。米日の幼稚なマスラオぶりっこが共振を起こすと世の中ロクなことにならない。▲
( 日刊ゲンダイ6月18日付から転載)


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<高野孟(たかの・はじめ)プロフィール>
1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。94年に故・島桂次=元NHK会長と共に(株)ウェブキャスターを設立、日本初のインターネットによる日英両文のオンライン週刊誌『東京万華鏡』を創刊。2002年に早稲田大学客員教授に就任。05年にインターネットニュースサイト《ざ・こもんず》を開設。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。
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戦争をすることは簡単です。いかにして戦争をしないかが大切であり、大戦を深く反省し、平和憲法と共に歩んできました。今までの行動が世界で理解され、大きな評価につながっていたと見るのが妥当でしょう。
今回の大きな変更は、米国の一国支配の困難さが主因であり、同盟国が必ずしも米国に同調できなくなっているのが大きく影響しています。英国などを見ても、国民の意思を無視した戦争はできないし、中国と敵対した行動は、あまりにも経済的損失が大きすぎるのです。唯一、日本は国内消費が大きく、輸出に大きく依存しなくても経済が成り立っており、国の巨大な負担で、国民生活をかさ上げしており、平和ボケしています。タイミングが良かったのでしょう。尖閣棚上げの外交を無視しマスコミを使って中国の脅威を強調し、国民の意識改革に成功したといえます。
忘れてならないのは、一端武力行使ができる体制を敷くと、日本人は簡単に、国際紛争を解決する手段として、一国で戦争に突入するDNAが顕現しやすいということです。特に、中国、韓国だけでなくアジア諸国の警戒感は、表面的言葉では想像できない圧迫感となっていることに気が付かなければいけないのですが、安倍鈍感内閣はわかっていないような気がします。

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