対象自治体は原則人口5万人以下の1180市町村だが、この制度に手を挙げたのは145自治体。派遣された人材は、副市町村長や幹部職員として原則2年程度勤務する。
その派遣先での待遇について、疑問を投げかけるのは当サイトでもお馴染みの農文協の甲斐良治(かい・りょうじ)さんだ。
「彼らの給与形態は『当該自治体から支給』となっています。しかも職種は『副市町村長、幹部職員』です。本当になりたい人のなかには、それなりの人もいると思うのですが、国家公務員だからといって、いきなり『副市町村長』はあまりに地域に失礼ではないか」と指摘する。
「国と地方のパイプ役」で地方創生は可能か
内閣府が公開している「派遣希望市町村一覧」資料(pdf)には、各地方自治体が、国家公務員、民間コンサル、大学教授の中から希望する人材を第一希望、第二希望として選び、どのような専門分野や能力を持った人材を求めるかなどが公表されている。
第一希望に国家公務員を希望する北海道下川町は、「下川町内や町外の各省庁、民間企業との総合調整能力を有している方。国と地方のパイプ役になり、下川町が推進する持続可能な地域社会に向けて積極的に推進していただける方」としている。
徳島県那賀町の第一希望は「国家公務員」で、「林務分野での経験豊富な方を希望する」という。果たしてその経験は現場の役に立つか…(写真:THE JOURNAL編集部/徳島県那賀町)
同じく国家公務員を第一希望とする福井県鯖江市は、「地域が責任を持ち自立して地方創生・人口減少対策に取り組むには、財源の確保が必要となります。(中略)これらの施策の遂行に必要な財源の確保が大きな課題となっています。本市においては、地方創生に向けた各省庁の政策ならびに多様な財源の確保に精通した人材を求めています」といい、中央からの新たな出向者を求めているともいえる。ちなみに鯖江市が求める人材の「第二希望」はない。
総務省によると、13年8月15日時点で地方自治体に出向している中央省庁の官僚は計1653人と決して少なくない数字だ。しかし、今回の地方創生に絡み、中央からのスムーズな予算確保のノウハウをもつ「国と地方のパイプ役」はさらに不足しているというわけだ。
年が明け、都道府県や自治体では創生に関わる体制づくりが着々と進んでいる。はたして、地方が主役の創生ビジョンが描けるか、はたまた官僚が活躍する国主導の地方創生となるか。
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