昨年起こったコロナ禍の影響により、LM.Cの2020年は大幅に活動をセーブした1年となった。配信ライブや音源のリリースなどがないことを心配したリスナーも多かったと思うが、彼らはコロナ・ショックに襲われて無気力になってしまったわけではない。そこには彼らの明確な思考や判断があったようだ。
昨年12月29日に放送された【HAKUEIのニコ生ラジオ「居酒屋はくえい“年末特番”」】にゲストとして招かれたAiji(g)をキャッチして、コロナ禍の中で思っていることや今後の展望などについて話してもらった。
Interview:村上孝之
――10月に行なったライブ【LM.C Club Circuit ’20 -Halloween-】は、ハロウィーン仕様ということも話題を呼びました。
Aiji:今まで、そういうことはあまりやってこなかったんですよ。たまたまツアー中に日程がハロウィーンにドンピシャだったときに、サプライズでメイクや衣装をハロウィーンっぽくしたことはあったけど、あらかじめコンセプトとして告知したのは初めてでした。なので、ファンの方には楽しんでもらえたんじゃないかなと思います。
――間違いないです。では、久しぶりのライブは、いかがでしたか?
Aiji:いつもどおりのライブ・スタイルではできないので、挑むような感覚がありましたね。ライブが始まってからも、それが当たり前だと思っていたわけじゃないけど、いつもみたいに曲間に歓声が起きることでテンションが引っ張られるということがないんですよ。
そういうところで、今までとは違う気持ちでいないといけないという、とまどいもありました。ライブの曲間というのはライブの流れを作るのに結構大事じゃないですか。客席からのレスポンスがあって、それを受けてドラマーが最高なタイミングで次の曲のカウントを出したりするから。そういう間合いが計れない気持ち悪さや歯痒さを、ライブ中に感じていました。
――入場制限があってお客さんが少ないし、声が出ないということで、ホームなのにアウェイのイベントに出たときのように感じたというアーティストも多いです。
Aiji:そういう感じもあったかな。自分のキャリア的にみても過去に客席からの声援が一切ない、シーンとしているようなライブは経験したことがないから、やりづらさはありました。
10月は1日に2ステージというのを2日やったから、計4本ライブをしたんですよ。でも、最後まで慣れなかった。そこに関しては、もうちょっと時間が必要なのかなと思います。
――声を出せないのはお客さんもツラいでしょうし、1日も早くコロナが終息することを願わずにいられないです。
Aiji:本当に。でも、新たなチャレンジだと捉えているし、この先ずっとこういう状況のままということではないから。止まない雨はないので。そういう意味では、このタイミングでしかできない楽しみ方をするのもいいと思う。たとえば、手がちぎれるくらい拍手するなんてことは、今までの人生の中で無かったですよね。
アーティスト側もお客さんがいるのに静まり返っているというライブを経験することはあまりないと思う。そういう中での楽しみ方を自分達で見つけていくしかなくて、それはそれでやり甲斐があることなんじゃないかなという気がしています。
――たしかに、リスナーも声が出せない状況でどうやってライブを盛り上げるか、どうやってアーティストを応援するかという工夫を始めています。長く拍手できるように2つのメガホンを叩いたり、他のお客さんに迷惑にならない程度の音が鳴るものを持ち込んだりといった感じで。
Aiji:なるほど。ただ単に受け身なだけではなくて、能動的になっていると。それは頼もしいことだし、みんな本当にアーティストのことを好きなんだなと思う。本当に、あり難い話ですよね。
――リスナーの想いが形になることで、今後は新しいライブの在り方ができあがるような気がしています。2020年はアーティストにとって苦しみやとまどいの多い1年になってしまいましたが、2021年はどんな年にしたいと思っていますか?
Aiji:今のところ今後のLM.Cの活動で具体的に決まっていることはないんですよ。今はそれぞれの希望も含めて、いろいろ話をしているところです。LM.Cは今年15周年なので、より一層いい作品を届けたいというのはありますね。
――去年のLM.Cは表立った活動があまりなくて淋しさを感じたファンも多かったかと思いますが、心配しなくて良さそうですね。
Aiji:やりたいことはいろいろあるので、大丈夫です。LM.Cはメンバーが2人しかいないじゃないですか。メンバーが5人もいると、焦るヤツもいれば、メンタルが持たなくてバンドをやめてしまおうかと考えるヤツもいる…みたいな状態になるかもしれないけど、うちは2人だけだし、俺とmayaにはそういう心配はないです。
今年は去年よりも動きたいし、動けると思います。エンタメは世の中を景気づけられる文化じゃないですか。エンタメ業界が盛り上がることで、心が沈んでしまった人達を元気づけられることに繋がると思うので、しっかりやっていこうと思っています。
――楽しみです。今回のコロナ禍を受けて表現したいものが変わったというアーティストも見受けられますが、その辺りはいかがでしょう?
Aiji:俺は変わらないです。俺の中では、LM.Cはこういう方向性の音楽でいきたいというのはあまりないんですよ。ファンと一緒に楽しむための音楽をその都度作っているという感覚が強いです。それが根底にあって、そのうえで時代によって変化、進化してきたという流れで14年間やってきているんです。そういう中で、ここ2~3年はまたちょっと違ったモードになっているというのはありますね。
最近は原点回帰というか、自分が10代の頃にこういう曲を聴きたかったなというものを作っている感覚があります。俺がメジャー・デビューしたのは’98年だったんですけど、その当時はリスナーに対して“こういうのはどう?”という感覚がすごくあったんですよ。”こんな音楽聴いたことないでしょ?”って。そういうものを提示したかったんです。
――そして、それを実践されました。
Aiji:当時は名だたる先輩方がいる中で、絶対に彼らと被らないことをやろうと思っていたんです。先輩方と同じことをやっても頭角を表せないことはわかっていたから。ここ最近は、あの頃の自分のそういう感覚とLM.Cの個性をミックスしたものを作りたいという気持ちになっている。一般的なイメージでいうと、LM.Cといえば楽曲はメジャー・キーで明るくて、パンキッシュで…というイメージがあると思うんですよ。ラップの曲とかもあったり。
でも、今の自分はもうちょっとメローというか、年齢を重ねてきた今じゃないとできないものを形にしたいんです。今はいわゆる“LM.Cスタンダード”みたいなもの……長く歌い継がれるようなものを作りたいですね。昔はライブのことしか考えていなかったけど、楽曲として長く愛されるものを作りたいという気持ちになっています。そう思うと、自分が学生だった頃に聴いていたアーティストの音楽はいい曲が多かったんですよね。
――具体的にいうと、’90年代にメインストリームだった音楽でしょうか?
Aiji:そう。当時好きで聴いてた楽曲っていまだに口ずさんでしまう。今はそういう曲を作りたいんです。去年の春に予定していたツアーに新曲を持っていこうと思って、3曲入りのCDをパンフレットにつけて販売することにしたんですよ。結局ツアーは中止したけど、その3曲は前作のアルバムの後の初めての曲達で、まさにそういう気持ちで作った曲だったんです。
【第一回目はこちら】https://ch.nicovideo.jp/club-Zy/blomaga/ar1988458
【第二回目はこちら】https://ch.nicovideo.jp/club-Zy/blomaga/ar1988468
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