2011/10/17
1:52 am
石踊達哉さんの展覧会を日本橋三越の新館ギャラリーで観て来た。
熱くなった。強いエネルギーと本物の独創が在った。
京都三十三間堂で有名な妙法院の障壁画(襖絵)の展示が主な展示だったのだが、
これが迫力満点、観ていて気持ちがよかった。
こんなに気持ちの良い展覧会も久しぶりだった気がする。
日本画なのだが、日本画にとどまっていないように見える。
空間が大きく、抽象的なデザイン化された絵柄、
金箔がちりばめられ地紋が多く入った絵柄、
切り絵や貼り付けた絵も良く使われる、
色づかいも派手で金・赤・黄色に緑色が入る。
ただの草花を草花だけで描くことをせず模様の中に在る量感で表現する、
そこに何か意味が出てくるように思える。
全体にレイアウトのセンスが大胆でハッとさせられる。
日本画の方が強い表現力があると言っているように思える。
日本性が、世界を超えて行くかのように思えるのだ。
僕は「輪廻転生」に歴史的名作の誕生に出会ったと思った。
この絵は後世に残るだろう。
日輪を思わせる地平に浮かぶ円、
ドーナッツ状の輪の中に永遠を閉じ込め、
燃える輪環が無限を表す。
全体に燃える火を思わせる鮮やかな緋色、
草花が朽ち果てるまで生を全うするかのように、
輪から延びるもだえるような枯れた茎の先端、
燃え盛る日輪にそれでもなお生まれてくるささやかな緑が誕生を象徴する。
こんな絵は見たことがない。
つい先日ロンドンのナショナルギャラリーで観たゴッホの「ひまわり」にも普遍的な力強さを感じたが、
いかんせん遥か120年も前の絵ですでに色あせていたからかもしれないが、
今の鮮やかさがあると言う意味で、「輪廻転生」に訴える力が強い。
石踊りさんの絵は遥か昔から好きでずーっと意識して来た。
もう35年前、サラリーマンになりたての頃、石踊りさんの絵がかっこよく思え、
好きで何度も個展を観に行った挙句、
とある絵を買いたいと思いその絵の写真をお借りしたことがあった。
30数万円だった。でも初任給が4万円ぐらいだった頃のことだ、
どうしてもお金が足りなかった。
緑色が基調の雉が網の下にとらえられている絵で、
確か彼の芸大の卒業制作の貴重な絵だったと思う、買えなかった。
そのチャンスを逃した後はあっという間に、とても僕に買えるような作家ではなくなってしまった。
その絵は、石踊りさんの初期の絵のほとんどがそうだったように、緑色が基調だった。
今回の展覧会でもその名残が残っていて、
ああ、あの頃の石踊りさんはすでに自分を見つけていて、
そのまま進化して来たんだな、と確認できて納得した。
僕と同じ年の石踊りさん、日本を代表する画家。
観に行ってください、技術の粋とあふれるエネルギーに励まされます。