「小飼弾の論弾」で進行を務める、編集者の山路達也です。10月17日(月)に行われた、ファイナンシャルプランナー中嶋よしふみさんとの対談を数回に分けてお届けします。動画も合わせてぜひご覧ください。
- 小飼弾の対弾 10/17「対談・中嶋よしふみ~お金のプロが分析する電通やブラック企業の現在と未来」
- 【会員限定】小飼弾の対弾 10/17「対談・中嶋よしふみ~結婚・低収入・不動産お金の不安一挙解決SP」
次回のニコ生配信は、11月7日(月)20:00。前半はニコ生公式放送「ニコ論壇時評」として、旬のニュースを斬っていきます。
■2016/10/17配信のハイライト(その1)
- 「本来」のファイナンシャルプランナーはほとんどいない?
- 「掛け捨て」保険は、もったいなくない
- 驚異の低金利、どう活かす?
- 田舎の土地は高すぎる
- 長時間労働は、偉い人の特権でなければならない
- すべての労働者を派遣に
- 会社なんていつでも辞められる
- 電通の偉い人は、仕事をしていない
- 過重労働が悪だと認識されるようになってきた
- 非効率な会社が潰れるのはよいこと
「本来」のファイナンシャルプランナーはほとんどいない?
―――今日は、「お金特集」ということで、人気のファイナンシャルプランナー、中嶋よしふみさんをゲストにお迎えしております。
中嶋:ファイナンシャルプランナーで、シェアーズカフェ・オンライン編集長の中嶋よしふみです。よろしくお願いいたします。
小飼:中嶋さんは僕と違って、本当のお金のプロですから。
―――中嶋さんのブログ記事は話題になることが多いですし、シェアーズカフェ・オンラインというメディアも立ち上げられるなど、ファイナンシャルプランナーとして非常にユニークな活動をされていますね。私も記事をよく参考にさせていただいています。
中嶋:ありがとうございます。
小飼:中嶋さんの書かれた『一生お金に困らない人 死ぬまでお金に困る人』で、僕は1ページ目から驚きました。「自分の場合は、金融機関に属さず、生命保険も売らず、アドバイスだけを提供してる、日本では数少ないFPです」と。じゃあ、他のFPのみなさんは、何をしてらっしゃるのでしょう?
中嶋:本来のFPとは、お金に関するアドバイスを売る仕事なんです。
小飼:そうですよね。それなのに本来の仕事をしている数少ないプロって(笑)。
中嶋:よく考えると、矛盾だらけの文章ですね(笑)。
小飼:僕が「自分でプログラムしている数少ないプログラマーです」って言ったら、「え?」ってなるでしょ。いったいどういうことなんでしょう?
中嶋:まずファイナンシャルプランナーの資格を持っている人の多くは、証券、銀行、不動産会社などに属しています。では、独立している人は何をやっているかというと、保険などの商品を売っているんですね。1人でも保険代理店はできますから。一社専属であったり複数の会社の商品を扱っていたりとパターンはさまざまですが、いずれにせよそういうファイナンシャルプランナーは、お客さんの側ではなくて、商品の売り手側に立っているんです。
小飼:そうなりますわな。
中嶋:それ自体は何の問題もないんですよ。不動産会社が家を売るのも、保険会社が保険を売るの問題ありませんし、独立したFPが「私は保険代理業務をやっています」と言うのも全然問題ないんですね。
問題はアドバイザーとして仕事をする場合です。「私は中立・客観的な立場からアドバイスします」と言いながら、保険を売るのはおかしいでしょう。ひどい人になると、不動産の売買のアドバイスをお客さんにしながら、キックバックをこっそり不動産会社から受け取っていたりする。
―――えげつない!
中嶋:しかも、キックバックを受け取るだけじゃないんです。不動産を売った人の手元には現金がありますよね。高額物件なら、何千万円、何億円になることもあります。お客さんがお金を持っていることがわかっているから、その人に対してメチャクチャ高い保険を売りつけたりする。もう、えげつないを通り越して、非道ですよ。
小飼:『ナニワ金融道』のアリ地獄不動産だ(笑)。
中嶋:そういうレベルです。みなさんは保険と聞いたら毎月数万円を払うとか、そういうのをイメージされていると思います。でも、こういう場合、FPが売りつけようとするのは外貨建て終身保険、変額年金保険、そういう運用するタイプの商品。要は投資です。
投資タイプの保険には、1回の支払い額が数百万円から場合によっては何千万円というレベルもあります。そういう商品は、手数料が高いんですよ。
お客さんが何らかの資産を持っていたら、それを売らせて裏でキックバックを取った上に、保険をを買わせるという、そんな酷いことをやっているFPもいる。
「掛け捨て」保険は、もったいなくない
小飼:そういう商品を、「保険」と呼んでいいんでしょうかね。掛け捨てのもの以外は、「保険」という名称をやめるべきだと思います。「保険つき貯金」などというべきでしょう。
中嶋:「貯金のつもりで保険に入りましょう」というのは、おかしな話です。貯金は将来の安全が前提ですが、保険は将来の危険が前提じゃないですか。そういう意味で積立型とか運用型いう保険は、すごく矛盾した存在なんですよ。「掛け捨てにすると無駄」とか「もったいない」と思われる人もいるかもしれませんが、小飼さんがおっしゃるように、本来は掛け捨てが正しい保険なんです。
小飼:余計なものが付いてないんだから、本当はそれが一番もったいなくないはず。
中嶋:そうなんですよ。軍隊と同じように、保険とは「役に立たなくて正しい」、「役に立たなくてよかった」というもの。それを「無駄だ」と感じるのは、リスク感覚がずれています。
小飼:日本において、「保険」の名目で集められたお金の総額は、45兆円に上るそうです。
中嶋:そう、すごい額になっています。
小飼:もちろん、そのお金は他に投資されたりしているわけですが、少なくとも日本人は「保険」という名目に対してそれだけ払っているんですよ。
中嶋:そうやって保険会社に払われたお金がどこに行っているかと言えば、今は大半が国債。
小飼:それで運用と言えるのか(笑)。
驚異の低金利、どう活かす?
中嶋:4割とか6割だったかな? 正確じゃないですけど、かなりの割合で国債にお金が行っているということです。終身保険は解約や満期になった時にお客さんにお金を返さなきゃいけないので、安定運用をしなければならず、運用は国債になるんですけどね。だから、今の終身保険はすごく利回りが下がっています。正確には予定利率と言いますが。
小飼:保険会社からすれば、昔に加入した人が頭痛の種でしょうね。
中嶋:バブル期に保険に入って、今もまだ持っているケースですね。ウチにご相談に来るお客さんにはあまりいませんが、高齢の方だと払ったお金に対して2倍以上老後にもらえたりすることもあります。そういうのを「お宝保険」と言いますけど、今ではもうありえません。正直いって、今だと保険でお金を運用する必要はないでしょう。
小飼:以前は、ただの郵便貯金の利息が6%ということもありました。
中嶋:ありましたね。私が小学生の頃はそうでした。今だと6%は株でも買わない限り、絶対に無理というレベルですからね。
小飼:その代わり、今は借りる方の金利も下がっています。Wikpediaにも載っていますが、僕が大学生だった1991年、僕の実家が全焼したんですよ。何とか再建したんですけど、当時は住宅金融公庫というのがあって。そこの金利は、どれくらいだったと思います? 。
中嶋:7、8%くらい、10%までは行かないですね。
小飼:今でもよく覚えています。6.8%でした。
中嶋:以前、市場金利が4%に下がった時、トレーダーの藤巻健史さんの本に「これだけ低金利の世界なんて、生きているうちにもうないかもしれない」といったことが書かれていた記憶があります。
小飼:ところが今やマイナス金利という(笑)。
中嶋:住宅ローン金利も「もうこれ以上は下がらない」と言われてきたけど、フラット35の35年間固定で1%を切るところまで行ったんですよね。
小飼:固定で、というのは驚きです。実はその後も紆余曲折あり、僕自身はマンションを2度買っています。最初に買ったのが4500万円くらいの物件だったのかな? その時3000万円借りて、金利が3%くらい。その後、21世紀になってから引っ越しまして、今度はウン億円の物件です。
中嶋:映画『バベル』の舞台になったやつですね。
小飼:はい(笑)。ですが即金で買ったんじゃなくて、あえて1億円借金しました。その時の金利が1.45%でしたから、「この1億円を俺が運用した方が、よっぽど高金利を出せる」と。
中嶋:変動ですか?
小飼:変動です。半年に1度見直すというタイプでしたが、上がったことはありません。一応25年でローンを組んではいましたが、結局同じマンション内で引っ越しました。物件状況が変わってしまいましたから、全部返済しましたけど、もったいないですね。最後なんて0.8%を切っていて、もう借金とは思えない金利になっていた。本当、返すのがもったいなかったですよ。だって、別の名目ではそんな低金利では借りれませんから。
中嶋:上場企業ですら、そんな低金利で長期の借金はできませんね。……今、フラット35の金利を確認していたら某金融機関のバナー広告が出てますけど、変動金利で0.497%を提示してます……。
小飼:ふざけんな、ふざけんな! これでFXをやりたいという人はいないのかな?
中嶋:家を買う人の中には、頭金をあまりいれないで手元に残したお金で投資をやっている人はいます。
小飼:いるでしょうね。
中嶋:もう、現金で家を買うのがもったいないという感覚なのでしょう。必ず儲かるわけではありませんから、それが絶対正しいというわけではありませんが。
田舎の土地は高すぎる
―――住宅を買いたい人にとっては、今が買い時ということなんですか?
中嶋:物件価格がすごく上がっているので、必ずしもそうとは言えません。今年7月、フラット35についてセミナーやった時、10年前と今で首都圏のファミリー向けマンションを買った時の計算をしました。10年前の価格で当時の金利で3%くらいだと計算して返済総額を見ると、今の価格・金利で買った場合との差は100万円程度でした。要は、金利が下がったことで不動産価格が上がってるんです。
不動産価格と金利はシーソーゲームになっていて、金利が下がれば不動産を買う人が増える。今はマイナス金利という異常な状況であるとか、色んな要素が入ってきますから必ずしも計算通りになっているわけではありませんけど。それでも、フェアバリュー近辺を行ったり来たりしつつ、世の中はそれなりに需要と供給のバランスが取れているという。
小飼:不動産価格が上昇しているのは、都心ですね。うちはまさにそれです。
中嶋:都市部の上昇は異常ですね。全国的に見ると、基本的に下がっています。都心部でも上がっているところと下がっているところはマチマチですけど。
小飼:バブルの時は田舎が高すぎたんです。これはあくまで僕の意見ですけれども、不動産も今はちゃんとした商品になっている。いくら投資すると、これだけの利回りが期待できて、だからこの価格で買っても大丈夫だというような値付けのされ方をしてます。昔は、ここの路線価はいくらだからとか、何も考えないで値段が付いていた。
中嶋:おっしゃる通りです。
小飼:ど田舎だとお金を払ってでも引き取ってもらった方がいい土地がありますけど、ちょっとくらいの田舎でもそうでなきゃおかしいんです。土地を買った奴は、どうやって元取るんだといいたい。
中嶋:そうそう。今は、どのくらい収益が上がるのかによって不動産価格が決まる、収益還元法が使われるようになっています。一応、そういう考え方がちゃんと導入されるようにはなったんですね。
―――バブル後に、ということですか?
小飼:徐々にそうなってきたというのかな。でも、まだ田舎の不動産価格はバブルを引きずってますよ。だから売れないんですよ。本来であれば、これくらいだろうと思って持ち続けている人たちがいる。ゴミだということを認められない。かつて高かった時のことを覚えてるから。
中嶋:あと田舎だと、昔から引き継いでいる農地を手放したくないということも多いですね。昨日友人のコンサートがあったので、群馬のかなり奥の方まで行ってきましたが、1000人以上入るホールの20メートルくらい隣に、田んぼがあるんですよ。そこでお米を作ってもビジネスになっているかといえば、おそらくなっていないと思います。固定資産税を抑えるために、無理やり農地にしているんでしょうね。あの光景は、ちょっと面白かったです。すごく立派なホールの隣に、すごく綺麗な田んぼがあって美しいんですが、なんかおかしい感じがする。
長時間労働は、偉い人の特権でなければならない
―――働き方もお金に大きく関わってきますが、最近ですと電通での過労死がありました。中嶋さんは、この事件をどう見られました?