「小飼弾の論弾」で進行を務める、編集者の山路達也です。10月17日(月)に行われた、ファイナンシャルプランナー中嶋よしふみさんとの対談その2をお届けします。動画も合わせてぜひご覧ください。
- 小飼弾の対弾 10/17「対談・中嶋よしふみ~お金のプロが分析する電通やブラック企業の現在と未来」
- 【会員限定】小飼弾の対弾 10/17「対談・中嶋よしふみ~結婚・低収入・不動産お金の不安一挙解決SP」
11月7日(月)20:00からのニコ論壇時評については、下記でテキストが公開されています。
次回のニコ生配信は、11月21日(月)20:00。漫画家の鈴木みそさんとの対談です! 個人電子出版の先駆者である鈴木みそさんは、電子書籍の読み放題サービス「Kindle Unlimited」をどう見ているか? これからクリエイターが生き延びるためにはどうすればいいか? クリエイターとお金にまつわる生々しいお話をお聞きします。
■2016/10/17配信のハイライト(その2)
- ダメな会社が潰れれば、みんなが幸せになる
- Googleだって、けっこうおバカで穴だらけ
- 「持ち家 vs. 賃貸」論争、どう考える?
- 家を買うかどうかは「趣味」の問題だと理解せよ
- 不動産投資、最善の方法は?
- 1億円の借金でアパートを建てた老夫婦の苦悩
- 「正しい地上げ」とは?
ダメな会社が潰れれば、みんなが幸せになる
小飼:会社はそのままに、中身が変わるというのはよくあることです。アメリカで生き残っている会社は、みんなそう。Appleはコンピュータの会社ではなくなりましたし、Microsoftですら大きく変わりました。やっていることも、中の人たちもガンガン変わっているわけですよ。僕の言った「派遣公社方式」なら、職場を柔軟に流動させられる。
―――今回の電通への調査というのは、過重労働の状況を国としても変えようとしているということなんですかね。
中嶋:長時間労働の規制ということについて、流れは変わってきていると思います。賛否はありますが、Change.orgでも長時間労働撲滅プロジェクトの署名活動が行われていました。 ただ、「強制捜査を受けた電通、新入社員の自殺事件は長時間労働が原因ではない。」の記事で私が「電通の問題は長時間労働ではなくて、生産性の低さなんだ」と書いたら、「お前は電通から金をもらっているのか!」っていうコメントが来ました(笑)。
―――何でですか?!(笑) 電通の生産性が低いと責めているわけですよね?
中嶋:責めてるんですよ。「電通から文句が来たらイヤだなぁ」と思っていたら、そういうワケの分からないコメントがついたりする(笑)。
小飼:もしかしたら、電通の中の人の捨てアカかもしれない(笑)。 視聴者からのコメントで「結局、ワタミも傾いたし、世の中は良くなる」とあったけど、そういうことなんですよ。世の中を良くするためには、良くないものを傾かせる必要があるんです。
中嶋:そうですね。さっきもおっしゃっていたように、ダメな会社が潰れれば、そこからヒト・モノ・カネが良い会社に流れて行くわけですからね。顧客にしても。
―――会社の不正行為に対して、世界的に厳しくなっていることもあるんでしょうか? 例えば、最近だとフォルクスワーゲンの排ガス不正問題がありましたけど。
小飼:フォルクスワーゲンというのは、本当に元公社だしね。
―――イグノーベル賞も取りましたよね、フォルクスワーゲン(笑)。
中嶋:あのインチキするシステムのことですか?(笑)。
小飼:僕はその事件の前後にプリウスからマツダのディーゼル車、CX-3に変えました。だから、それについてもなかなかショックでしたよ。
―――視聴者からのコメントで「悪いことができない社会になってる」とありました。
中嶋:そうですね。まさに、そういったところもあるのかなと。今回、電通が槍玉に挙げられたことについては、さっきも言った一罰百戒的なので必ずしも全面的に賛成はしないんですけども。電通は世の中で悪者扱いされていることもあって、政府としても敵にしやすかったんだろうなぁと。
小飼:もうひとつ大きいのは、前科があったことですね。
中嶋:そうですね。だから今回は、ありとあらゆる人が電通を責めているんでしょう。
小飼:こう言うのも何ですけど、東芝の粉飾決算事件はある意味、電通以上にひどかった。電通の事件は、個人が会社の歯車に押しつぶされちゃったというもの。これに対して東芝の場合は、歯車そのものの設計が間違っていたという。でも、これはハッキリ言っちゃいましょう。潰れて困る会社なんてありません。潰れた会社がその証明になっています。 JALは潰れたおかげで、まともな会社になりましたよね。もっと早く潰れていれば、もっと良かったんですよ。
中嶋:守るべきは人なんですよね。個人に関しては、失業保険や生活保護など、いろんなセーフティーネットは絶対に税金で支えるべきでしょう。でも、企業を支える必要なんてありません。
小飼:何で東電を潰さなかったのか、今でも疑問です。東電は潰し、原発に関しては原発精算事業団が引き取って、「東電-原子力事業」で新しい、ピッカピカのエネルギー会社を作れたのに。何であんな馬鹿なことをしたのか、というか、しなかったのか。
中嶋:国鉄清算事業団みたいな感じですね。
小飼:そうそう。あれは本当に難しいプロジェクトだったし、労働争議が起きまくったけど、本当に上手くいった。日本の組織で一番に足りないのは、「捨てる勇気」なんじゃないでしょうか。
Googleだって、けっこうおバカで穴だらけ
―――今回の電通の事件で、もう一つ特徴的だと思ったのは、ソーシャルメディア上の批判が政府を動かしたということかなと。
中嶋:そうですね。ネット、特にソーシャルメディアは、あらゆる人の正義感をすごく刺激する性質があります。何か不正が起こると、みんなそこに突撃していく。
―――最近も色々と炎上が起こってますもんね。
中嶋:ただ、それが良い場合もあれば、行き過ぎたりする場合もあります。電通については、もちろん批判されるべき点はいっぱいありますし、強制捜査を受けている時点で公的に問題があったことは確実でしょう。ただ、やはり責められすぎとも思います。 無名な人だと思いますが、ブログで電通批判記事を書いていて、そこにGoogleのAdSenseを張っていたそうです。そうしたら、Googleから「ポリシー違反」だという連絡が来たというんですね。それを「電通の陰謀だ!」という人たちがいて、ちょっとした話題になっていたんですが……。
小飼:それはGoogleが悪い。Googleは、ざっくりポリシー違反という警告しかしないから。
中嶋:そうなんですね。何が原因か、対象になった人にもわからない。
小飼:これに関しては、具体的な理由を言わないGoogleが悪い。しつこい程、繰り返しますよ。 Googleが悪い。 Googleが悪い。 Googleが悪い。 Googleが悪い。 僕もAdSenseを蹴られたことがあって、それ以来AdSenseを張らなくなりました。
中嶋:私も一度、オリジナルの記事をコピーコンテンツと勘違いされて警告を受けたことがあります(笑)。
―――Google、アホだなあ(笑)。
小飼:Googleにだって穴があるし、突っ込みようだっていくらでもあるんです。本当に電通が広告業界の鬼だったら、キチンとGoogleと戦うべきだし、技術者が足りないなら引っ張ってくるべきなんです。
―――お金はあるんだし。
小飼:その通りです。少なくともリクルートは、ギークをガンガン雇っていますよ。あそこは技術の会社でもあります。 今、電通にプログラマってどれくらいいるんですか? Googleとガチンコで戦いたいっていうなら、絶対に必要ですよね? いったい、どこにいるんですか?
中嶋:今はどの企業も、IT企業化しないと、戦えないって話ですよね。
小飼:結局、電通は人たらしで物事を回して来たっていうことでしょ。そういう人たらしがドンドン成立しなくなって来た。
中嶋:さっきのGoogle批判の記事を見ると、電通の企業ロゴをデカデカと使っていますね。企業ロゴには商標権がありますから、勝手には使えません。はっきりはわかりませんが、ポリシー違反はこれが原因の可能性があるのではと思いますか。企業ロゴを使う場合は、ちゃんと許可を取って、サイズとか色も指定通りにしないといけませんし。あくまで自分の予想ですが。
―――Googleも、理由をきちんと伝える仕組みを作っておけばいいのに……。
中嶋:そこは弾さんがおっしゃるとおりですね。
小飼:もうGoogleではないけど、ポケモンGOのジム戦でトラブルが起きても「エラー」としか出ない(ポケモンGOの開発元Niantic Labsは元々Googleの社内スタートアップだった)。具体的にどんなエラーが起きているのか知りたいのにエラーとしか言わない、悪しき「Googleイズム」です。
「持ち家 vs. 賃貸」論争、どう考える?
―――さっき電通の過労死問題を取り上げましたけど、ああやって大勢の人が長時間労働してしまうのも、「この会社を辞めたら自分は働く場所がないんじゃないか」とか「生きていけなくなるんじゃないか」とか、そういうお金にまつわる不安があるんじゃないかと思うんですよ。 そういうお金の悩みに対して、ファイナンシャルプランナーの中嶋さんはどう答えられているんでしょう。例えば、シェアーズカフェにいらっしゃるお客さんはどういう相談をされるんでしょうか?
中嶋:一番多いのは住宅を買うか、買わないかですね。一番お金が大きく動くタイミングですから。
小飼:そうですね。普通の人にとっては一番大きな買い物です。
中嶋:私のところには、絶対に買えない人、絶対に買える人は来ません。例えば、年収500万円で1億円のマンションが欲しいとか、年収1000万円で2000万円の中古マンション欲しいという人は来ないわけです。こういう人たちは相談する必要がありませんから。 では、どういう人が来るかというと、わざわざお金を払って相談するわけですからちょっと年収高めなんですね。30代半ばで共働き、世帯年収が1000万を超えていて、子供が産まれたばかり。家を買いたいんですが、どうしたらいいですか?といった状況なんですね。 2人合わせて1000万円超えてる人は、世間的に見れば高給取りです。といったら、弾さんから怒られそうですが(笑)。 そういう人たちは都心の会社に勤めていることが多く、労働時間も長い。通勤時間が長いと大変ですから、都心部もしくはできるだけ交通の便がいいところで家を買うということになる。都心にアクセスしやすい場所で、マンションなり一軒家なり買うと、最低でも5000万円。ちょっといいところですと、6000万円から7000万円くらいすぐ行っちゃいます。
―――2LDK、3LDKというところですか。
中嶋:そうですね、やはり家族で住むことになりますから。そのクラスの家となると、世帯年収が1000万円を超えていても不安です。買っていいのかどうかを相談するところで、私の出番ということになります。
―――どうやって考えていけばいいんですか?
中嶋:3段階あり、まずは買えるか? 買っても大丈夫か? そして買うべきか?を考えます。 最初の「買えるかどうか」は、ローンの審査に通るかどうかですね。ただ、うちのお店に来るお客さんで、審査に落ちてしまう人は滅多に来ません。 その次の「買っても大丈夫か?」 これはリスクの問題で、安定して返済していけるかどうかということ。 最後の「買うべきか?」ですが、実はここが一番重要なんです。つまり、家を買うことで楽しい人生送れますかということ。今までの話と打って変わって、ふわっとした理想論みたいになっちゃうんですが、そういうことはではないんです。 たいていの人は、家を買うだけなら買えるんです。でも、家を買ったとして、「趣味にかけているお金を全部削ってください」、「お子さんの習い事は全部やめさせてください」、「私立中学には絶対行かせられません」と言われたらどうでしょう。みなさん、「うーん」と悩まれると思います。そこに、悩みが発生するんです。この解決方法は簡単ではありませんから、私もお客さんと一緒にうーんうーんと悩みます。住宅購入の相談だけで、3、4時間はかかります。
小飼:自分の居住用の物件を買う際は、お金だけじゃなくて時間もすごくかかります。僕は今までマンションを2度買っていますが、一番最初は物件を選ぶまでに半年くらいかかりました。それに比べれば、ローンの支払は本当に屁みたいなもの。
中嶋:まあ作業ですからね。
小飼:で、買った途端にオン・ザ・エッヂの堀江さんに呼ばれたんですけどね(笑)。
―――世間的には、よく「賃貸 vs. 持ち家」の論争があったりします。
中嶋:私が2012年に書いた「持ち家は資産か? 持ち家に関する二つの幻想」という記事は大ヒットしました。そのおかげで私がファイナンシャルプランナーとしてやっていけているくらいで。「持ち家、賃貸、どっちがお得」というのは、決着の付かない話としてよく出てきます。
小飼:理想的な市場のもとでは同じになる。
中嶋:そうなんです。ただ、問題は不動産の売買が理想的な市場ではないこと、要は摩擦が大きいんですね。何千万円もする物件を買う、買わないというのは、すごく大きい意志決定じゃないですか。マウスのクリックで売買できる証券市場のようにはなってないので。じゃあどうなるかというと、流動性の問題になってきます。
―――流動性が低いものは、簡単にはお金に換えられないということですよね。
中嶋:そう、簡単に買えないし売れないしというところです。
小飼:ところが今はAirBnBがあるでしょ。不動産での収益化が簡単になってきて、また状況が変化してきています。中嶋さんの記事で僕が一番不満だったのは、賃貸か持ち家かという以前に、貸し手についての視点がなかった点です。
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