小飼弾の論弾 #23 「ゲスト対談:ファイナンシャルプランナー中嶋よしふみ氏(その3):超お得!これだけは勉強しておくべき資格って何?」

「小飼弾の論弾」で進行を務める、編集者の山路達也です。10月17日(月)に行われた、ファイナンシャルプランナー中嶋よしふみさんとの対談その3をお届けします。動画も合わせてぜひご覧ください。

12月5日(月)は前半をニコ生公式の「ニコ論壇時評」としてお送りいたします。
お題は、「『この世界の片隅に』のすずなら、トランプ大統領の世をどう生きる?」。
就任前から世界中で論議を巻き起こしている、トランプが目指す世界とはどのようなものなのでしょうか?

■2016/10/17配信のハイライト(その3)

  • 子どもにお金のことをどう教える?
  • 世の中は、「宛先のない善意」に溢れている
  • 複式簿記は義務教育で教えるべき
  • 簿記3級ほどお得な資格はない
  • お金にならないけど好きな学問をやって生きていくには?
  • 「チャンスが回ってきたら頑張る」のではダメ
  • お金がないなら、結婚しろ!

子どもにお金のことをどう教える?

―――視聴者からの質問です。「子供にお金の教育をするときはどうすればよいでしょうか? ポケモンに例えて投資教育しますか? また、皆さんのお子さんはお小遣い制ですか?」

中嶋:私はまだ結婚してないので、これはぜひ弾さんお願いします。

小飼:上の娘が18歳になりまして。

―――もうそんなに。早いなあ。

小飼:僕は、子育てとは自分の肉親が徐々に他人化していく過程だと思っています。だから、お金について僕が教えてしまうのは、おこがましいんじゃないかという思いが少しある。

―――自分で痛い目にあいながら学んでいくものであると。

小飼:そういう感じですかね。その意味でいうと、うちの娘たちは奥手だな。 僕が18歳の時には、もう親元を離れ日本にいませんでした。18歳になるまでに、働いて、貯金もし、少し株を買ったりしているので、それに比べるとずいぶん初心(うぶ)だなとは思いますね。 僕が1つラインとして決めているのは、俺の金は俺の金、君の金は君の金ということです。

中嶋:お金の教育と称して、株式投資をさせるのは、あまりいいやり方ではないと思います。それくらいなら、簿記3級を勉強させる方がよほど意味があるんじゃないでしょうか。

―――視聴者から「女の価値のピークはJK?」なんてコメントが来ています。

小飼:女の価値のピークがJK(女子高生)というのは、投資を知らない人の戯言です。女だろうが男だろうが、きちんと自分に投資ができる人は年々価値が上がっていくものだと答えておきましょう。

世の中は、「宛先のない善意」に溢れている

―――そういえば、中嶋さんは著書の『一生お金に困らない人 死ぬまでお金に困る人』の中で、弾さんのブログ記事を引用していましたね。

中嶋:2008年3月15日に弾さんが書いた、「バイキング式のレストランで給仕を待つ君たちへ」という記事です。

中嶋:別の方が書いた「強者は弱者に手を差し伸べるべきでは?」という趣旨の記事に対して、弾さんが反論しています。 「自分一人の力で強くなったか? No. 手を貸してくれた人がいるか? 母を除けば No.」 では、何が手を貸してくれたかというと、宛名の無い善意だというんですね。宛名の無い善意というのは、道路とか本とか、ネット上にある便利な知識とか。

小飼:そう、誰の物でもなく、誰が使ってもいいものということです。そういったものは、高文明国であればあるほど充実しています。 これは、はっきり言っておきましょう。悲しいことに、その点で日本はしょぼいです。 なぜしょぼいと言い切れるかというと、例えば道路。米国であればフリーウェイといってただで使える道路も、日本では受益者負担と称してお金取ってるでしょう。 道路から受益する人は、運転する人だけではないですよね。物流を通して誰もが受益者であり、だからこそそういったものは、なるべくロハで、あるいはちゃんと税金で賄うべきなわけです。一般道に関しては、そうしているわけですから。

―――中嶋さんがファイナンシャルプランナーを目指すきっかけに、弾さんのその考え方が関わっていたりするんですか?

中嶋:私がファイナンシャルプランナーを目指すことになった直接のきっかけは、株で大損したことです。証券会社に就職した友達に勧められた株を買って、ビギナーズラックで大儲けして大損して、こん畜生、いつかリベンジしてやると勉強し始めたのがきっかけでした。それが2005年か2006年頃だったと思います。 ファイナンシャルプランナーとしての私のベースになっているのは、たぶん3つ。1つは「マネーの虎」、もう1つが『金持ち父さん 貧乏父さん』。

小飼:金持ち父さん倒産しちゃったけどね(笑)。

中嶋:3つ目がホリエモンです。それらがなかったら自分は起業していなかったでしょう。わかりやすいものに影響を受けていて、ベタですね。 いつか自分で事業をやりたいとは思っていた時に、株で大損して勉強を始めようと決心したんですが、その頃読んでいた個人投資家のブログに、「株式投資をするのであれば、決算書を読めなければ話にならない。そのためには簿記を勉強しろ」書かれていて、私は素直に簿記の勉強を始めました。それが今とても役に立っています。簿記の知識がなかったら、経営者としてとっくに破産していたでしょう。 役立つ知識を私はネットで学んだんです。ブロガーには勉強熱心な人が多く、弾さんもそうですが本もたくさん紹介してるじゃないですか。そういう人たちが、面白い、役に立つという本を片っ端から読んでいきました。経営に関しては、名著『ザ・プロフィット』なども役に立ちました。 そういう時、弾さんが宛名のない善意を利用すれば強くなれるという記事を書いてたので、まさにこれは自分がやってきたことじゃないかと。 本やネットで勉強したと言うと、人によっては「ええー?」と感じる人もいるでしょう。リアルでいろんな経験を積むとか、人から直接教えてもらう方が価値があるように思われていますが、今はもう逆だと思います。 自分の知りたいありとあらゆることを知っていて、無料で教えてくれる人が周りにいたらいいですけど、そんな状況はありえないでしょう。ネットを活用する方がよほど質の高い情報を集められるはずなんです。 本にしても、初版で5000部を刷るのは出版社にとってけっこうなギャンブルですから、ちゃんとした内容である可能性がけっこう高い。本を片っ端から読み漁れば、役に立たないわけがないと私は考えています。 そういう無料や安価で質のよいものを無視して、周りの人に聞くとか、経験を積むというのは違うでしょう。ネットも使わずに身近な人に聞く方が、今やよっぽど安易なやり方ですよ。

小飼:タダで人に聞くことほど、高くつくことはないと僕は思っていますから。

複式簿記は義務教育で教えるべき

―――ググるよりも先に人に聞く人ってけっこういますよね。

中嶋:資格が役に立つかどうかは微妙ですが、簿記はちゃんとルールが決まっており、このルールをマスターしているかどうかはビジネスを理解する上ですごく重要です。

小飼:複式簿記は義務教育で教えるべきだよね。義務教育で教えないのは、政府の陰謀だとすら思える。

中嶋:資本主義の仕組みでもあるわけですからね。

小飼:複式簿記があるからお金を借りることができるんです。だけど、たいていの人にとって、借金も財産は常識になっていません。 簿記の本を読めば、最初に「資産は負債と資本を足したもの」と書かれているんですよ。 今どきのコンピュータには、必ず仮想記憶という仕組みが使われています。ユーザーが使えるメモリの合計は、仮想記憶と実記憶を足したものですよね。言ってみれば、仮想記憶は借金なんです。