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小飼弾の論弾 #81「改元よりもめでたい?キログラム原器の引退と、実は移民大国な日本」
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小飼弾の論弾 #81「改元よりもめでたい?キログラム原器の引退と、実は移民大国な日本」

2018-08-17 07:00

    「小飼弾の論弾」で進行を務める、編集者の山路達也です。
    2018年6月4日(月)配信の「小飼弾のニコ論壇時評」の後半をお届けします。

    次回のニコ生配信は、2018年8月21日(火)20:00からの「小飼弾の論弾」です。

    お楽しみに!

    2018/06/04配信のハイライト(その2)

    • キログラム原器いよいよ退位か?
    • 実は移民大国だった日本
    • WWWC2018に期待することは?

    【限定放送】

    キログラム原器いよいよ退位か?

    小飼:原器が出るというのか、原器とサヨナラする話というのが面白いね。

    山路:キログラムって今まではどう定義されてたんですかね?

    小飼:メートルとかキログラムとかそういうものが生まれる前というのは、世界各国でいろいろな単位がマチマチに成立してて、しかも数え方もマチマチだったりするわけですよね。

    山路:フィートやら、いろんなヤードやら。

    小飼:そうそう16オンスで、1ポンドとか。

    山路:頭おかしくなりそうです。

    小飼:これはマズイということで、フランス革命の頃のフランス人のみなさんが普遍的でわかりやすい単位を作ろうと。

    山路:しかしフランス革命の大混乱期によくそんなことをやろうと思ったなあ、大したもんですね。

    小飼:一種の理想主義でしょう、全人類共通の単位系をつくるというのは。まず長さに関しては、地球をものさしにしようと。地球を南北に輪切りにしてその円周の長さ、子午線を。
     その円周の長さって言うのの4千万分の1。別の言い方をするとちょうど90度のスライスが1千万。これが1mと。その1mの10分の1でマス目を作ります。そのマス目の中に水を擦り切れ1杯入れた時の水の重さを重さの単位の1キログラムとしよう。

    山路:うんうん。わかりやすい。

    小飼:わかりやすいんですけども、まず子午線の長さと言うのは、どこをどう測っても同じというワケではないですよね。地球には山や谷があったりするので同じにはならない。あんまり精度がよくない。同じところを測ったとしても、崖崩れとかも起きますよね、地球は生きているので同じ数字を再現できない。そのままでは、更にキログラムのもとになったマス目に関しては水というのは温度によっても体積変わってしまいますよね。

    山路:4℃の時、1番小さいんでしたっけ?

    小飼:そうですね。表面張力があるので、マスを使ってそれでも盛り上がっちゃいますよね。
     そういったことがあるので、ちょっとそのまま使うのは使いづらいよねということで、一旦その時の重さというのを分銅に写しとったんですよね。白金とイリジウムで出来た分銅を作って、ちょうど天秤が釣り合うようにして、その時の1kgを元にしようと。これの重さが1kgだというふうにしたんですよね。

    山路:じゃあもう水は関係なくなっている。

    小飼:そう、もう原器の方を元にする。

    山路:この原器って結局1つしかないワケですよね。

    小飼:1つしかないですが、コピーは作りました。日本にもコピーあります。そう筑波に大切に保存されてますけど、あくまでもコピーなんですよ。ここで問題です。これがキログラム原器だったとしましょう。これとこれ、ちょうど同じ重さだとして下さい。こっちが原器です。こっちがそのコピーです。僕がちょっと飲んじゃったとしましょう。
     僕以外誰も知りません。もう一度測り直すとこっちの方が軽くなりますよね。この場合はどうします?

    山路:この他のコピーのやつを全部比べてその変わり方が、元の方のやつの変わり方があまりにも変だったら、それは元のやつがどうにかなったっていうふうに判断せざるえない。

    小飼:どうにかなったって判断したけども、ここで問題です。どっちが1kgでしょう?

    山路:原器に合わせざるを得ない。

    小飼:そう! こっちなんですよ。
     僕がちょろまかした方があくまでも原器なので、原器というのはそれくらい偉いんです。
     原器の方が変わったとしても、変わってないとみなさないといけないんですよ。1個しかないから。

    山路:じゃあいい加減なやつが管理してたら大変なことになってしまいますよね。

    小飼:そう。だからいい加減でない人たちが、頑張って管理してたんですよ。どれくらい頑張ってたかといいますと。キログラム原器というのは、パリにあるんですよ。厳密にはパリの郊外ですけれども。2次大戦の時に、ナチスに占領されたじゃないですか。でも、そのキログラム原器が収まっているところには、一切立ち入らなかったそうです。
     そんな大事なものなので厳重に保管されているんですけれども、厳重に保管されてるということは当然、折をみてコピーを作るために、天秤に載せなきゃいけないですよね。その作業が30年に1回くらいしか出来ないんですよ。

    山路:化学変化だったり、そういうことを避けるためにということですか。

    小飼:はい。何年かぶりに他の国の原器のコピーたちをパリに持っていって。

    山路:全部持っていくんですね。

    小飼:持っていく。そうそう。重さを比較し直したワケですよ。

    山路:なんか神無月みたいというか、世界各国から。

    小飼:そうしたらやっぱり、重さが変わってたんですよね。
     どれくらいの重さかと言うと、僕のスマホは指紋だらけですけども、この指紋の重さが大体50マイクログラムなの。だからそれくらいのバラツキが出た。

    山路:結構デカイですね。

    小飼:デカイけれども、原器はそのフランスにあるヤツだけなので、残りの原器のコピーというのが変わったということにせざるを得なかったんですよね。

    山路:世の中のそういう精密な測定とかが、そんなもので元にしてるってなんか怖いですね。

    小飼:怖いでしょう。じゃあキログラム以外の単位というのはどうしてたかっていったら、とっくに原器を止めて、「原理」にしてたんですよね。

    山路:つまり計算というか、物理的な現象を測ったら、それでもう導き出せるもの。

    小飼:そういうことです。例えば、キログラム原器とほぼ同時に、メートル原器というのも作られました。でも我々が生まれる前、確か切り替わったの1960年代以降だと思いますけれども、長さに関して原器は使われてないです。何でやってると思います?

    山路:光の速さ。

    小飼:そうです。光の速さというのは、誰がどう測っても同じだというのを、アインシュタインが相対論で。実は、実態は光速度不変論なんですよね。
     別の言い方をすると、光の速ささえ測れれば、あとは狂わない時計さえあれば、いつでも長さというのは、再現できるわけですよね。。

    山路:でもその狂わない時計というのもまた難しいような気も。

    「1秒の方を決めなきゃ」(コメント)

    小飼:そうです、1秒の方です。じゃあ1秒をどうやって決めてるかというと、原子というのは、ある常態から別の状態に変わった時に光を出します。そのエネルギーが少ない場合は、光じゃなくて電波というのか、どっちも電磁波ですよね。
     その周波数というのは、同じように状態が変われば、同じ周波数、同じ波長の電波が出るわけですよね。その周波数の逆数をとれば、これは時間になるじゃないかと。今はそれをセシウムでやってます。セシウムというのは、どこにでもあります。
     ちなみにですね、時間に関して原器は、ついぞ作られたことはないです。それは何故かというと天体現象がもとになっていたから。1日の8万6400分の1だったんですよ。なんですけど、その1日の長さというのも定数でないというのを、もう我々は知ってしまったワケですよね。

    山路:自転とかその辺のものってバラツキがあったり、変化していくわけですもんね。

    小飼:はい。でも今やセシウムさえあれば、いつでも秒は作れるわけです。秒があればあと今度は光を使ってメートルも作れるわけです。

    小飼:じゃあキログラムも同じようにできないかと単位業界の研究者は誰もが思っていた。

    「秒速5センチメートル」(コメント)

    山路:いや、ちょっとその人の業界の人じゃないですね(笑)。

    小飼:これがすごい難しかったんですよ。延期もされてるんですよ。21世紀に入った時に、いよいよキログラム原器もオサラバして、原理から出そうぜって言ったんですけど、少なくとも4年遅れています。2014年にそれをやろうとしたんですけれども。
     やるからには今の原器を使った精度よりも、いい精度でなければいけないでしょう。
     どうしようかというふうに言ったら、やっぱり宇宙のどこにもありふれたものを使って定義したい。我々はもうモノは原子で出来ているっていうのは知っているわけですよね。その原子をひとまとめにするための数、アボガドロ数というのがあります。

    山路:えーと6.02×10の23乗。

    小飼:はい。炭素12をアボガドロ数個集めると12グラムになりますね。

    山路:それってもう単位になりそうな気がするんですけど、原器というか、質量の基準になりそうな。

    小飼:問題は炭素12だけをアボガドロ数個集めるというのは超難しい。なんですけど同じことがシリコンならできるんじゃね? と。

    山路:ほお。

    小飼:我々がコンピューター大好きなお蔭で、シリコンの単結晶というのは、直径30cmくらいのやつがボーンと出来るようになりました。結晶なので、この長さの中に、いくつ原子があるのかっていうのはきっちり出せるわけですね。

    山路:その結晶構造が、つまりその歪んだり、そういうことっていうのはないんですか? 純粋なシリコンだったら、その結晶構造っていうのは、確実なものなんですか?

    小飼:確実だっていうふうに、言えるんですよね。もし非確実だったらX線を当てると、そこに瑕疵が見えるわけですよね。

    山路:なるほど。

    小飼:じゃあ、そのシリコンの塊を作って、塊を観測すればその中に、シリコン原子がいくつあるのかっていうのは、ちゃんと算出できるよね、と。これを重さの基準にできないかと、それで通りかけたんですよ。なんですけど、問題がひとつあって。

    山路:まだ問題が?

    小飼:はい。シリコンというのも同位体あります。原子量が28のヤツとか30のヤツとかあって、自然界にはそれが入り混じった状態なわけですよね。だからシリコンを集めてもそこでバラツキが出ちゃうじゃないかと。

    山路:そんなに同位体を弾くのは難しいんですか?

    小飼:そこで助け舟を出してくれたのがロシアです。

    山路:へー、そこでいきなりロシアが。

    小飼:ロシアには同位体を分離するというのが、実用化されてる部門というのがあります。核爆弾です。
     北朝鮮もそれを売りにすれば良かったのになと後知恵で思いますけども。

    山路:(笑)

     
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