「小飼弾の論弾」で進行を務める、編集者の山路達也です。
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今回は、2019年5月21日(火)配信その2をお届けします。
次回は、2019年7月23日(火)20:00の配信です。
お楽しみに!
2019/05/21配信のハイライト(その2)
- 米国のマウンティング相手として必要な「強い中国」とその技術力
- ソニーとMSの提携、ハッキング防止するプロセッサ
- アラバマ州中絶禁止法案と最高裁の関係
米国のマウンティング相手として必要な「強い中国」とその技術力
山路:Huaweiネタの話続きなんですけども、これってアメリカが相当一方的にWTOを破ってる?
小飼:ただその一方で、アメリカとしては、たとえばHuaweiの端末で盗聴してたんじゃないかとか、国防ネタというのがあるわけですよね。
山路:これって証明できることなんですかね?
小飼:でも、実際にたとえばHuaweiの端末だけではなくって、メーカーのファームウェアが勝手にパケットを送ってたということもある。
山路:ああ、なるほど。
小飼:いっぱいあるわけじゃないですか。
山路:材料はあるわけですね。
小飼:材料はある。
山路:「アメリカはHuaweiに何を求めているんだ?」というコメントが。これどこまでやったらアメリカとしては今回の場合、満足するというか、この圧力をかけるのを辞めるんですかね?
小飼:いや、少なくとも今の政権の場合は、満足することはない。満足するという姿勢を見せることがもう負けだと。
山路:Huaweiに限らず、ずっと中国が折れ続けないと駄目っていうことですか? つまりは。もう圧倒的に中国が屈服するみたいなところまでいかないと駄目?
小飼:いや逆に屈服されると困るんだよね。
山路:困るんだ。
小飼:困るの。うん。困るの。
山路:強いというマウンティング取っているよっていう姿勢を見せ続けることが大事だ、みたいな。
小飼:そうそう。マウントポジションを取ろうとしているのが重要なので、だからその意味では中国を相手に選んだというのは見事なわけですよ。これが日本とかだったら簡単に折れちゃうというのか、折れちゃってるからね。
山路:ああスーパー301の時もアッサリと。
小飼:そうそう、スーパー301の時ではなくって、日本も鉄鋼の関税とか上げられてるけども、ぐうの音も出してないじゃん。
山路:アメリカの強さを知らしめるには、日本では弱すぎる。
小飼:そう日本じゃ弱すぎるの。その点では中国というのは理想的なわけですよ。
山路:嫌な感じですなあ。しかしこんなことって、本当に何年も続けられるような手法でもないように思うんですけどもね。
小飼:あのね、皮肉かもしれないけれども、トランプ政権、もう4年というのがあるかどうかというのは、わからないですけど、仮にトランプ政権が8年になったとしても、その程度は保っちゃいそうですよね。
あとにグダグダな世界が残るかも知れないですけど、保ってしまうかもしれないですね。保ってしまう公算が高いでしょうね。
1つアメリカにとっての朗報っちゃあ朗報なのは、石油もいっぱい出るようになりました。いまやアメリカは再び世界一の産油国でもあります。
山路:じゃあ一国だけで何も輸入も輸出もしなくても、あんまり困らないみたいな。
小飼:だから、たとえばイランの核協議とかも反故にして、イランから石油買うなっていって、日本は困るけれども、アメリカはあんまり困らないという(笑)
山路:1番世界でやりたいことを、やりたいように何でも出来る状態になってはいる。でもそれって何というか、アメリカにとってもいいことなんですかね?
小飼:いや当然世界のアメリカ離れっていうふうになってくでしょうね。
山路:しかも今回のHuawei、たとえば5Gの通信機器なんかを買ったりしないようにとかそういうことを言っても、それって結局アメリカで5Gの技術が進化しなかったりとか、あるいはスマホの進化が停滞するとか。
小飼:実際アメリカでは出来ないんですよ。もしアメリカで出来ているのであれば、なんでMotorolaがあんなことになっているんですか。
山路:なんでアメリカではそういう通信機器のメーカーってうまくいかないんですか。
小飼:通信機器というよりも、ハードウェアエンジニアを確保できないんですよね。ジョブズが嘆いていたじゃないですか。出来ればアメリカで確保したいけれども、いねえじゃんと。いくら金を出そうがいないものはいないじゃないかと。
山路:ハードウェアのスタートアップみたいなものっていうのは、いっぱいシリコンバレーとかでもあるじゃないですか。
小飼:あるんですけれども。
山路:あったりするけれども、なんか不思議な感じはしますけどね。
小飼:やっぱりそれは、ソフトウェアのほうが。
山路:楽に儲かるから。
小飼:そうそう、利益率が高いから、やっぱりなんだかんだいって、泥臭いことというのはやめちゃうんですよね。
山路:楽に儲けたい。
小飼:楽に儲かるほうに言っちゃうんですよね。
山路:そこのところで不思議なのは、他の国がそうやって楽に儲かる方向にはいかなかったのかなみたいな。
小飼:いや、他の国も楽に儲かる方向に行ってますよ。だから工業国というのは移動しているわけですよ。イギリスからアメリカへ、アメリカからたとえば日本やドイツに、あるいは日本やドイツから中国からベトナムにっていうふうに。
そう。ハードウェアのものっていうのは、利益率が低い代わりに確実に売れるんですよね。確実に買ってくれるんですよ。だから途上国で作って、というふうになるわけですよね。
山路:でも皮肉なもんですよね、この最新の5Gっていうのが、先進国でなくって、中国のほうでそこのところに最先端の通信技術がそっちにいってしまったというのは、非常に。これHuaweiのスマホとか入ってこなかったら、スマホの進化とかも停滞してしまったりするんじゃないかなという気がするんですけど、市場からそういう競争相手が減ったら、競い合うことが減るってことじゃないですか。
小飼:今も減っているというのか、基地局の設備っていうのは、すでにもうだいぶ減ってますよね。その中でもHuaweiはトップなわけです。
山路:スマホ自体はどうですか? スマホはもうある意味、成熟商品になっちゃったから、あんまり関係ないのかな、このHuawei禁輸。
小飼:ましてやAndroidの場合というのはね。まぁでも中国国内、いやこの場合Androidも中国国外用と国内用と2つあるというふうにもう見做していいと思いますけども。
山路:中国国内はもうなんか、それこそアリババとかテンセントのアプリさえ動けば全部事足りるみたいな感じが。
小飼:というのかYahoo!ですら、見れなくなっちゃいましたからね、中国国内から。そのことをもって、中国が世界から閉じている以上は、中国に対して世界が開いている必要はないじゃないかという対立の仕方というのは、ありえますね。カードの使い方としてね。でもその場合、アメリカは少なくとも中国以外の国は味方にする必要がありますよね。
ところが今、全世界に喧嘩売ってる状態なわけですよね。
山路:これちょっと思ったのが、今回トランプ政権って、中国に対して凄くこう強権的な姿勢で臨んでるじゃないですか。これってトランプでなかったら、起こらなかったことなんですかね?
そういうふうに中国が台頭してくる、中国脅威論というのはアメリカでずっとあったわけじゃないですか、共和党に限らず。民主党なんかも今回反中的な態度を取っている。
小飼:でも基本的なスタンスは、中国人も金持ちになれば、俺たちと似たような考えになるだろうと。だからより民主的な政府を求めるようになるだろうと。より自由な言論の自由を志向するようになるだろうと。あんまりそうならなかったんですよね。金持ちになってもね。
山路:なんか凄いですよね。あのまんまの状態で、なんというか独裁的国家のまま近代化を図ろうとするなんてこと、するとは誰も思わなかったというか。
小飼:今のところはまだ上手くいっているように見えるんですよね、外から見て。
山路:うーん、これってトランプでなくても、圧力を加えてたんじゃないかなという気がしなくもない。
小飼:圧力を加えていたというよりは、逆に、じゃあなんで中国には誰も厳しく接しなかったの? っていったら、先進国のほうも美味しい思いをしてたんですよ。
山路:13億人の市場がものを買ってくれるとか、あるいは安い労働力とか。
小飼:今のところは安い労働力ですよね、1番大きいのは。だから先進国の普通の人でもスマホが買えると。
山路:ただこの状態って、さっきの中国がYahoo!を遮断の話に戻ると、これってなんか今の中国の体制みたいなことっていうのが、より維持するのがどんどん難しくなってくるんじゃないかな。つまり新しい情報っていうのが入っていかなくなると技術的にも停滞しちゃったりする。
小飼:そこまでバシーっと閉じてるわけじゃないんですよ。
山路:開けるところは開けて。
小飼:簡単にVPNで開く程度の、だからいい具合に金盾というのはザルなんですよね。
山路:ああ、こう言ってみたらある程度、研究者だったりとかやる気があったら情報は取れるけども、普通のそんな、そこ面倒をかけたくない普通の人っていうのは、いい感じに政府のいうことを聞いてくれる的なフィルターみたいになっているっていう感じなんですかね?
「中国安く作れば競合に勝てる」(コメント)
「黄巾の乱みたいなのって起こらないのかな」(コメント)
小飼:いや、やっぱりなんだかんだいって、大きいのは、中国はちゃんと経済成長しているわけです。金持ちになってきているわけです。だから昨日出来なかったことっていうのが、今日出来るようになってきてるわけですよね。だから自由主義だからとか、民主主義だとかいうのはまだ、まだ先なんですよね。だから金持ちになったとはいっても1人頭にしてみれば、日本の5分の1くらいなんですよね、まだ。こういうのもなんですけども、人口が日本の10倍いるのに、経済ではまだたった倍なんですよね。まだたった倍と見るべきなんですよね。
山路:そうか。
小飼:まだたった倍なんですけども、中国の方が貧富の差というのが激しいので、中国の金持ちというのはもはや日本の金持ちよりもずーっと金持ちだったりするわけですよね。
山路:日本に来る中国の旅行者って、凄い羽振りいい感じだったりしますもんね。それを普通と思っちゃいかんですよね。
小飼:日本に来れる人たちというのは、やっぱり上の中くらいの人たちですよね。
「10年前とか来年には中国のバブルが弾けるとか聞いたけど」(コメント)
山路:ってか毎年ずっと言われ続けてますよね。
小飼:日本、格差広がってるといっても日本の格差なんて、日本よこれが本当の格差だ! というくらいの格差というのは、中国にもアメリカにもあるわけですよね。
山路:なんかもうネトゲカフェで廃人みたいになっている、そういう中国の農村地帯の人とかみたいな、農村戸籍の人とかの新書を読んだことがありますけども、凄いスラムが出来てますもんね。
「中国の少子化も凄い」(コメント)
小飼:そうそう、だから日本で上級国民という言葉が出てきちゃったというのは、これ僕けっこうマズイ状況だと思ってるんですけど、それはさておき中国には確かにあるわけですよ。中国の上級国民というのは都市戸籍を持っている人です。それははっきり言える。それはもうはっきり言える。露骨にあるわけですね。それは。
「日本は貧乏人でもiPhoneが持てる」(コメント)
小飼:そういうことですね。
山路:これ今回、Huaweiが対象になったんですけど、これXiaomiとかOPPOとかそういうその他の中国メーカーというのはどうなるんですかね?
小飼:どうなるんでしょうね。
山路:ぜんぜん関係なく、別にGoogleも普通に取引するんでしょうか?なんかかなり謎な状況になっていったりするんですかね? あとHuawei、内部でOS作っちゃうよみたいなこと、自分たちで独自の、それって可能なんですか?
小飼:それは可能ですよ。単に作るっていうんであれば、僕一人でもつくれる代物です、OSというのは。でもそれを何万人、何百万人、何億人に使わせる、かつアップデートし続けるっていうのは、そこが至難の業なんですよね。
今のところそれを上手くやっているのは、AppleとGoogleしかいないわけですよね。Microsoftですら脱落したわけですよね。
今Tizenってどうなってんだ? そういえば。
山路:Tizenはたしか正式に中止表明されてなかったですかね? だって、世界一のスマホメーカーの、まあ出荷台数でいったらSamsungが独自OSの開発諦めたんですからね。
じゃあそれも含めてHuaweiには可能でしょうか?
そういうOSの普及も含めて自分たちの独自のOSを作って、さらにそれを普及させるっていうことは。
小飼:そうだな、中南海の人たちを説得しちゃえば、不可能ではないんじゃないか、それ。
山路:中国の経済圏をもっと広げてっていうこと?
小飼:そうそう。経済圏を広げてっていうよりも、中国にはすでに金盾という壁があるわけですよね。壁をさらに高くすると。アメリカはこれから壁を作る、作らないって言ってますけど、中国の場合もう立派なものがあるわけですからね、それをさらに立派にするというのはありえなくはないですね。
山路:そうしてやっていっても、独自進化を遂げていく。
小飼:すでにして、中国のインターネットというのは、世界の残りとは別物になっているわけですよね。売ってるiPhoneだって別物なわけですよね。
山路:iCloudの管理事業者も違ったりする。
小飼:そうそう。それは中国の一大企業として見た場合はそうなんですけれども、Huaweiの立派なところっていうのは、全世界で商売してきたっていうところなんですよね。中国に守られてというのとは、けっこうHuaweiという会社を見てみると真逆なんですよね。たとえば上場してないです。要は自腹でやってるんです。市場から資金調達せずにここまでやってきたわけですよ。だから、これはたとえば百度とかとは違いますよね。
市場におもねる必要がないんですよ。その市場におもねる必要がないというのは、たぶん中国政府を相手にしてすらそうだと思いますよ。
山路:ふーん、じゃあなんかアメリカが攻めてるよりは、もっと政府とは距離がある? 中国政府とHuaweiとの間に。
小飼:うん、だから、けっこう中の人次第というところはありますよね。でもこれを機により中国政府寄りになる可能性というのは低くはないと思いますよ。
ただHuaweiの5Gの特許というのは、べつに中国国内だけで有効なわけでないわけですよ。ちゃんと全世界で取っているわけですよ。そういうことを惜しまずにやっているわけですよ。
だから日本でも新卒に月給40万を出す会社なんですよ。
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