「小飼弾の論弾」で進行を務める、編集者の山路達也です。
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今回は、2020年08月04日(火)配信その2をお届けします。
次回は、2020年11月10日(火)20:00の配信です。
お楽しみに!
2020/08/04配信のハイライト(その2)
- NVIDIAのArm買収とIT業界の買収話について
- Garminのランサムウェア被害と、ブートローダーの脆弱性
- クルードラゴン成功と「有人宇宙飛行」という市場の今
- 論文誌界隈とGitHubのコード1000年保存計画について
NVIDIAのArm買収とIT業界の買収話について
山路:NVIDIAがArmを買うかもしれないという話が出てるので、その辺りからいきますか。
小飼:というのかスプリントに引き続きかよ、というね。
山路:それは孫正義さんの過ちっていうやつ?
小飼:過ちというよりも、育てる力がなくなってきたのかな、孫さんに。
山路:何かえらいポカ続いている気がするんですけどもね。
小飼:うん損得の「損」になりつつある。
山路:これ、前回の論弾ではAppleがArm買うのはこれないよね、という話をしてたんですけど、NVIDIAがArm買うのもかなりまずくないですかという。
小飼:どう、うーん、どうなんだろうね?
山路:弾さん的にも即答は出来ない感じですか? 確かに一時的に株価とかも上がるし、なんか製品的にはシナジーとか合いそうな気がするんだけど。
小飼:いや、だから、どこかが、こう言うのも何だけれども、どこかのチップメーカーが独占するべきものではないんだよね、もはやArmって。
山路:人類の共有財産。
小飼:そう、いっそGAFAで共同購入した上に知財全部オープン化するとか、いやまあそうすればたぶんRISC-V死ぬけれども、まあそれは尊い犠牲だということで。どこかの営利企業が持ってること自体、よろしいことではもはやないんだよね。
山路:アハハ、それはたぶんArmに関しては1番過激な考え方かもしれないですよね。
小飼:いや過激、少なくない意見だと思うよ、これは。
山路:ただそれって実現可能性があんまりないと、そうでもないですか?
小飼:それはどうなんだろう、少なくともCPUの設計もOSS化出来るというのは、RISC-Vが示したわけじゃん。
山路:結局Armっていうのは、それで莫大な利益上げてるわけじゃないですか。
小飼:莫大な利益上げてるのかな? いや少なくともあれだよ、孫さんが買った時の価格に見合った利益なんか全く上げてないよ。そこまで儲かるビジネスではないよ。
山路:そうか、単にライセンス売ってるだけだから。
小飼:そうそう。
山路:ああ。何か何だかんだでArmのその開発した技術とかで儲けてるのは、Appleだったり、何かサムスンだったり。
小飼:そうそう。
山路:TSMCだったり。
小飼:そう、だから乗数効果が効くので、下流にいけば数値というのは大きくなっていくけれども、あくまでArmというのは上流中の上流中の会社なので。だから凄い大事な水源ではあるけど、水量は多くない。
山路:ふーん、そうか、じゃあなんか本当に何というのかな、共有財産、まあオープンソースにするかどうかはともかくとして、なんかああ、その対中国みたいな文脈でこういう話が出てるのもあるのかなと思ったんですけれど。
小飼:対中国?
山路:中国企業がArmを買収するとかそういう話も出てくるんじゃないかなと。
小飼:いや、でもそれは金融当局がパスしないでしょう。Armぐらいの会社になると、金ポンと渡して買収成立じゃないじゃないですか。ソフトバンクの場合も各国の当局にちゃんと許可出して下さいというふうに言った上でやったわけです。ちゃんと独禁法の対象にもなりますよ、これは。だからたとえばHUAWEIがお金ボンと積んで買えるかというと、あんまりそういうものでもない。
山路:じゃああんまり防衛的なことは、考えなくてもいいわけなのか。
小飼:あんまりね。
山路:へえ。じゃあ、なんかこうNVIDIA買うのが益々ありなのかなあ? でもNVIDIAみたいなところが買ったら、他のライバルメーカーとかに、手出しにくくなるんじゃないですか。
小飼:いやAppleとか物言いつけるかもしれないね。AppleはとくにArmとはゆかりの深い会社でもあるので。
山路:そもそも最初に出資してたのって、Appleだし。
小飼:そう、製品使い始めたのもAppleだったし。Newtonとかにも入ってた。Intelも一時期ライセンスを受けてたんだけれども、やめちゃったんだよね、StrongArm。
山路:XScaleとか。
小飼:うん、XScaleとか。
山路:これってIntelがまた買い直したりとかすることあるんですかね? ライセンスを。
小飼:それが出来なければいけないの。その意味でどこか特定のチップメーカーが買っちゃうとそれが出来なくなるんじゃないかという懸念があるわけ。
山路:なるほどね。なるほどね。
小飼:うん、だからどこにもライセンスして欲しいわけ。そう、だからライセンス売って下さいと言ったら、どこにも売って欲しいわけ。こういうのも何だけど中国すら、中国企業すら含めてね、HUAWEIとかすら含めてね。
だから、その意味では一定の距離をとってて、その意味では孫さんが買ったというのも、マズイといえばマズイんだけども、でも孫さんは、ソフトバンクはメーカーじゃないじゃん。メーカーじゃない上に、そんなに悪い話ではなかったんだけども、これが特定のメーカーが買ってしまうというのはね。
たとえばNVIDIAでなければね、たとえばAMDだったらいいのかっていうそういう話でもないでしょ。
山路:うん、確かになんかArmの処遇ってメッチャ難しいところになってきましたね。じゃあこのIntelの話が出たところで、最近のIntelちょっと調子悪いよっていう話、この7nmの製造プロセスがぜんぜん上手くいってないような。
小飼:そうなんですよ、そうなんですよ、今Intelの危機というのはFabの危機と言い切っても過言ではなくて、かつてなんでIntelがすごかったかといったら、アーキテクチャが凄かったではなくて、ちゃんと石をつくれたからなの。
山路:設計通りに。
小飼:そうそう、なんだけど今TSMCとかグローバルファウンドリーズとかよりも遅れちゃってるんですよね。
山路:今1番進んでてるのがTSMCと言われてますよね。
小飼:TSMCですね。
山路:今度もう5nmのが実用化して。
小飼:よくそんなもの作れるなと思う……。
山路:なんかね、昔50nmくらいで限界とか言われてませんでしたか? っていう。
小飼:ねえ。
山路:なんかそれってもう、ムーアの法則のやつぜんぜん超えてるやろうとか言われてたんですけど、なんか3nmとかも視野に入っているというような。
小飼:もうそこに入っている原子を数えられるレベルですからね。まぁでもそれはさておき、小さく作れば小さく作れる程、基本的にはいいことづくめなんですよね。
山路:うんうん。これコメントで「投資を削ったの?」ってあるのは、これIntelのことですかね?
小飼:そんなことはないでしょう。たぶん最新のFabというのは本当に1箇所1兆円くらいかかるんですよ。なんですけど今それだけ出せる企業というのは、決して少なくないですからね。
山路:うーん。ケチってるわけじゃぜんぜんないわけだ。
小飼:ケチってるわけじゃぜんぜんない。しかもIntelだってもちろん出せる。
山路:人材もジム・ケラー。
小飼:はいはい、ジム・ケラー。
山路:ジム・ケラーでいいんでしたっけ? あの天才といわれる何か、3度くらいIntelを倒した男と言われるのをIntel雇ってたんですよね。
小飼:そうそう、まぁでも雇ってるというのか顧問なのかな。
山路:でも辞めちゃったんですよね、その人も。
小飼:でもさっきも言ったように設計でなくて製造だから、今のIntelの問題というのは。
山路:ただ製造できる設計をしなきゃいけないというのもあるんじゃないですか? っていうか、その半導体の。
小飼:いや、だからいくら設計しても作れなきゃ意味ないんだって。
2通りのやり方があって、設計も製造もやる会社、これがIntelね。設計と製造が分かれてるところ、他の残りね。AppleもAppleシリコンとはいってるけど、基本的には自分らでFab持ってないから。
山路:うんうん。これFabを持つっていうのがどんどん重荷になってきてるんですかね?
小飼:どうなんでしょうね?
山路:昔だったら、そのFabを持っているっていうのがIntelの超強みだったわけじゃないですか。
小飼:うん、でもな、やっぱりモバイルがないということは、どうしても高級路線に走らざるをえなくて、その高級路線がね、Ryzenにいっぱい攻められていると言うね、今。
山路:うーん、なるほどね。これでこのIT関係では最近、えらくArmとかNVIDIAの話もそうなんですけど、Intelが調子悪くなったりとか、あるいはでかい会社の買収みたいな話っていうのがガンガン出てきて、特にその最近またIT絡みででかい話というのが、MicrosoftがTikTok買収する話まで出てきて。
小飼:というのか、TikTokの米国オペレーションを押し付けられるというのか。
山路:これって何かMicrosoftにいいことあるんですか 素朴な疑問なんですけど。
小飼:どうなんでしょうね? 最近のというのか、ナデラになってからのMicrosoftというのは、わりと皆の受けがいいけれども、買収された会社みんなよくなったわけではないですからね。
完全に駄目になっちゃったとかっていうんだったらまだしも、けっこう鳴かず飛ばずのままで、お前一体どうするんだよ? っていうのけっこうあるよね。たとえばSkypeとかね。
山路:ああ。Skype使わなくなりましたね。
小飼:ねえ。
山路:Skype、とりあえずアプリはいれてあるんだけど、ぜんぜん起動した試しがないな。
「ババを引かされたMS」(コメント)
山路:しかもトランプはアメリカ政府にもなんか金よこせみたいなこと言ってるんですよね。
小飼:いや、でもどんな法的根拠で?
山路:それはさっぱりわからないですけれども。あとこれ、そもそもTikTokっていうのをMicrosoftが買収するみたいな話が出てきた、それってアメリカ政府が圧力かけたからじゃないですか。
小飼:そうなの?
山路:強引に話を進めてるわけですよね。中国に個人情報が漏れるからみたいな文脈で。それって政府が民間企業の売却みたいなことを迫るっていうのは、果たしてそんなことっていうのはあってよろしいのですか? っていう。
小飼:けっこうあるんだけどね、日本だっていっぱいあったよ。だから大昔には自動車会社いっぱいくっつけようとしたわけよ。ホンダはNOと言って、結果生き残ったというね。
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