小飼弾です。ブロマガをお届けいたします。
200 Any Questions OK
今回の質問は、この三つ。
Q. 論理学の問題
この論理学の問題がどうしてもわかりません。なんで「外では雨がふっておりかつ雨が降っていない」と、「源義経の母親はナポレオンである」と結論できるのですか?
Q. 人が人を殺してはいけない理由
佐世保市でまた同級生殺人が起きましたね。こういった事件がおこるたびにニュースは「命の尊さを伝える」みたいなコメントを出しますが、その前になんで人は人を殺しちゃだめなのでしょう。いや、私は殺したくも殺されたくもないですが。
Q. カルタゴが滅ぼせたならユダヤも
ガザでイスラエルがやっていることと、ナチスがユダヤ人にやったことの区別がつきません。こわい考えなのですが、もしローマ帝国が国としてのユダヤを滅ぼしていたらこうはならなかったのではないでしょうか。カルタゴを滅ぼしたローマにユダヤを滅ぼせなかったわけがありませんし。
相互関連なさそうな質問なのですが、まとめてお答えします。
A. なんでもありの世界には、なんの意味もない
まず最初の質問から。「外が雨が降っており、かつ雨が降っていない」のは、どんな世界でしょうか?
「なにかがあり」かつ「なにかがない」世界ということになりますよね?
「ある」と「ない」が同時に成立しているのですから、「なにか」が何であろうが成立してしまうのですから。
あなたがいてかつあなたがいない世界。
私がいてかつ私がいない世界。
もちろんそこは、
源義経の母親がナポレオンで、かつ源義経の母親がナポレオンでない世界。
でもあります。Q.E.D.
「A かつ not A が成立している世界」というのは、その時点で「ある」しかなく、「ない」がない世界なわけです。「ない」がないということは、「結論がない」もまたないわけです。つまり、どんな結論だって導けるというか、そもそも結論を導く意味そのものがない…ん、まてよ、「意味がない」もまたないよね。「ない」がないんだから…
思考が無限ループになるので適当なところでCtrl-Cを押したところで、この問題は、問題というものに何の意味があるかをも問うメタ問題になっています。矛盾を認めてしまうとなんでもありになり、そしてなんでもありになると問題を問うことそのものも含めて世界そのものに何の意味も見出せなくなってしまうのです。
この問題の裏である「A も not A も成立しない」世界は、今度は「ある」が全くなく、「ない」しかない世界ということになります。そうするとまた「でも『ない』があるじゃん。でもそれすら『ない』となると…」というわけでやっぱり無限ループ。
つまり「どっちもあり」の世界も、「どっちもなし」の世界も、どちらも意味がないのです。「A ならば not A ではない」というルールは、排中律といいますが、この排中律があるからこそ、世界は真っ白でもなく、真っ黒でもなく、彩りがあるのです。
あなたが世界からなくなる≡世界があなたからなくなる
最初の問題が証明できたところで、次の問題に取り組んでみましょうか。
最初の問題の証明を適用すると、次のことがわかります。
あなたのにとって、あなたが世界からなくなることと、世界があなたからなくなることは同等である。
つまり殺人とは、単に世界からその人を消すに留まらず、その人から世界を消してしまう行為でもあるということです。およそどんな社会でも、殺人を別格の犯罪としている理由として、これは必要条件を満たしているのでないでしょうか。
ただし、これでも充分条件は満たせないようです。
もう一度論理学に立ち返って考えてみましょう。