――はい。ロシアの「EFN 50」で行なわれたファビオ・マルドナド戦は判定勝ちでしたが、1ラウンドはKO寸前まで追いつめられるという苦い内容で。
大沢 試合を見て思ったのは、ファイトスタイルはオールドスクールというか。いまのMMAの戦い方じゃないですけど、気持ちの強さだけで戦ってますよね
――ああ、わかります。地力や本能だけで勝ち切った感じですよね。
大沢 「ヒョードル、ケンカが強いな!!」という感じですよ(笑)。ポテンシャルだけでやってるというか。PRIDEのときもヒョードルの試合ってそこまで戦略的じゃなかったですよね。
――アメリカ進出以降はさらに攻めっ気が増してる感じがしますよね。勝ち急いでるとも言えますが……。
大沢 ヒョードルの考え方は至ってシンプルだと思うんですよね。「下からコントロールされそうだから殴る!」とか「このポジションにはいたくないから立つ!」とか。
――いわばフィーリングで戦ってるんですね。
大沢 今回の試合にしても、自分の感じたまま戦ってるんですよね。いまのMMAだと打撃で攻めるにしても、テイクダウンを狙う素振りを見せたりするんですよ。何を狙ってるのかをわかりにくくする。
――打撃やテイクダウンのフェイトをして混ぜるわけですね。
大沢 混ぜることによって相手は混乱するし、駆け引きの世界になるので「2人の中で何かが起きてる」という試合になるんです。でも、ヒョードルの場合は混ぜないから、観客にもわかりやすい。「打撃で行く!」「組むときは組む!」って感じですから。今回だって「いやいや、組めばいいじゃん!」と思えるシーンがあるんでけど。1回も組んでないですよね。
――試合早々のラッシュをガードされて、ちょっと間を置いて、またラッシュしたんですけど。
大沢 あの場面、相手は打撃のガードに集中していたから、簡単にテイクダウンできたはずなんですよ。でも、ヒョードルは自分の中で「こう戦う!」と決めてるんでしょうね。そこは状況判断や相手の弱点を突くというわけじゃなくて、もう相手をぶちのめしたいだけんですよ(笑)。
――漢ヒョードル、拳を振るうだけ(笑)。
大沢 ヒョードルはそれくらい打撃に自信があるし、あれは凄く見づらいと思うんですよね。いきなり飛び込んでドーン!と打つ。ヒョードルってPRIDEのときも打撃の強さで勝ってきた。相手が打撃を嫌がって組んできたところを投げ飛ばしたり。
――打撃がヒョードルの生命線なんですね。
大沢 あんまり打ち負けてないですよね。ヒョードルが日本で最初に試合をしたとき、リングスで日本人と戦ったじゃないですか。
――高田浩也選手ですね。
大沢 和術慧舟會の後輩なんですけど。あのときリングスの関係者から「相手はサンボの選手だから、組みが凄く強いと思うよ」という話を聞かされて。そうしたら試合回早々、もの凄いパンチが飛んできて、あっという間にKO負けですよ!(笑)。
――試合時間12秒でしたね(笑)。
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