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芸能人プロレスの開拓者である、お笑いコンビ「レイザーラモン」。HGとRGの2人は学生プロレス出身だが、90年代に訪れたプロレス情報公開の大波が2人のプロレス頭に大きな影響を与えていた。棚橋弘至を産み落としたムーブメントとはなんだったのか?(聞き手/ジャン斉藤)
――先日、別媒体で「プロレス名勝負」をテーマにおふたりを取材したときに別の話題で盛り上がったので、あらためて伺いに来ました! おふたりが大学時代、学生プロレスに熱中していたときにプロレス情報公開の大波が直撃したときのお話なんですけど。
RG タナカさんは面白い人ではあるんですよね。でも、ちょっと胡散臭いところもあるじゃないですか。「この人はウソを言っている」みたいな雰囲気もあって(笑)。
――タダシ☆タナカさんは情報入手に関してはすごいんですけど、見立てに関してはshow大谷さん級というか……「どーしてそんな結論になるんですか!?」って腰を抜かすことが多くて。
RG タナカさんはもっと評価されてもいいと思うんですけど……いや、いまのままでいいのかな(笑)。あの時代はホントに激動で。ボクが大学に入った頃がちょうど新生UWFブームで。
――UWFの躍進により、プロレスの価値がおおいに揺さぶられていた時期ですね。
RG 高校のときに前田(日明)さんや髙田(延彦)さんら旧UWF勢が新日本プロレスに帰ってきて、藤波(辰爾)さんや越中詩郎さんと名勝負を繰り広げて。プロレスに熱狂して大学ではプロレス同好会に入ったんですよね。
HG ボクの場合は中学生の頃から全日本プロレスファンでしたね。
RG WWEがアティテュード路線に入る時期だったこともあって、プロレスをどう見ればいいのかを問われる過渡期で。タナカさんがアメリカから送ってくるビデオはある意味で“踏み絵”であり、タナカさんが書くプロレスの原稿は“悪魔の書”だったわけですよ(笑)。
HG 四天王プロレスは新日本よりもエンタメ要素を削って、頭から落としたり危険なプロレスをやっていたわけじゃないですか。「これこそ真剣勝負!」と思っていたファンは多かったかもしれないですね。周りからプロレスファンが離れていくのは実感しました。ボクも全日本信者ではありましたけど、それはそれで全日本プロレスはすごいことをやってると受け止めてましたけどね。
RG プロレスの勝ち負けにはもちろん興味があるんですけど、それよりもスターを見る感覚ですよね。 “芸能”として見ていたかもしれない、映画なんかと同じ。
HG そうだね。漫才のオチって大爆笑ネタで終わらせないじゃないですか。さらりと終わる。プロレスも同じで、最後の勝敗はそこまで気にしない感じで。あとタナカさんが書こうとしていたシュート活字の原稿がめちゃくちゃ分厚いから最後まで読めない(笑)。
RG めちゃくちゃ分厚かった。
HG そこにアメリカのプロレスのファン層はこう分かれていると。プロレスをわかってない奴は……なんだっけ?
RG マーク(初級者)、シュマーク(中級者)、スマート(上級者)。
――シュート活字用語、なつかしい(笑)。
HG そういう呼び方があると(笑)。正直そのへんはどうでもいいやと思ってたんですよ。俺は2~3枚で読むのをやめました。ただアメプロの試合が見たかっただけ。
RG 俺はめっちゃ読んだけどね。 俺ら立命館の同好会の一部はマーク、シュート、ブックとか業界用語を実際使おうとしてましたね(笑)。
HG ハハハハハハハ。
――レスラーじゃない人間がバックステージをウロチョロするんじゃないと(笑)。
RG ジェット・シンと控室でしゃべっているときに、控室に入ってきたボクのマネージャーをジェット・シンが襲いかかりましたからね(笑)。
――まさにケーフェイですね! そういったアメプロ情報が直撃することで、学生プロレス自体に変化はあったんですか?
RG まず周りには「学生プロレスとやり方が同じなんだ」とショックを受けた人もいましたね。でも、実際にプロは違うところはあるんですよ。自分で試合の流れを作っていくあたりが。
――それは要するにフリースタイルの要素が肝心だってことですね。
HG それは『ハッスル』で思ったな。実際にプロの世界を知ってみると、実際にプロは違うんだってことは多かった。それは実力のあるレスラーほど、そう。ボクなんか最初は絶対に無理なんですけど、慣れてくると、なんとかこなせるようになって。プロレスの引き出しが開けられる楽しさが出てきましたね。
――そこはプロじゃないとできない。『ハッスル』の試合時間も長くなってきましたよね。
HG そこは学プロだけの経験じゃ無理でしたね。そういえば学プロでガチを仕掛けてくる奴はいましたけど(笑)。
RG いた。Uスタイルもいた。ただただ膠着するだけで全然盛り上がらない(笑)。学プロには実況・解説が場内アナウンスをしてるので、なんとかなるんですけどね。
――「いったい何がやりたいだ!」とか実況が突っ込んで(笑)。
HG それって柔道やアマレス出身の人たちが多かったですね。プロレスをやらせると、めちゃくちゃ固いというか、しょっぱいんですよ。プロでも◯◯さんはやっぱり固かったじゃないですか。
RG ハハハハハハハ。
HG 格闘技畑の人ってプロレスを理解できないのかもしれないですね。順応するのが難しいと思いますよ。
――話は戻りますけど、情報公開の流れにショックを受ける学プロ勢というのは興味深いですね。
RG 俺らは新しい文化として受け止めましたけどね。大量離脱は起きましたよね。
RG グラデーションはたしかにない。新日本からUWFが生まれて、K-1があってリングス、パンクラスを経てPRIDEにたどり着いたじゃないですか。だからリングで何が起きているのかを理解できたのに、タナカさんの場合はいきなり新日本からPRIDEに移ったみたいな。
――それは追いつかないですね。
RG 『紙プロ』が登場してプロレスを斜めから見る人たちも出てきたので、 そういったものを受け止められる土壌はできつつありましたけど。『週刊ゴング』をストレートに読んでいた人たちがプロレスから離れていって。
HG そうかもな。
RG 『紙プロ』がなかったらプロレスを見てないという人たちはいたと思いますよ。
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