――大晦日前ということでいろいろと情報が錯綜してるんですけども。まず聞きたいのがシュウさんがマネジメントしている平本蓮選手が朝倉未来選手とハードな甘噛みを展開してまして。
――未来選手は平本蓮批判というよりは、煽ってるように見えるんですけどね。いつか実現するかもししれない平本戦をいまから。
シュウ ボクもそう思いますよ。ですから、平本くんのマネジメントとしては「話題にしていただいてありがとうございます!」という感じです。
――まあでもSNSって善悪を分けがちだから「1年も試合をしてないのに大口を叩いてる平本蓮はおかしい!」っていう風潮になっちゃうんですけど。
シュウ たしかに平本くんはデビュー戦で負けたあと試合してないですし、SNSでアクティブな部分がありますからアンチがいっぱいいるのはすごいわかるんですよ。さっきもRIZINの笹原さんとやり取りしたんですけど、「もしも井上直樹選手が平本くんみたいなSNSでアクティブだったら和製コナー・マクレガーになってましたね」と(笑)。
――マクレガー級のアクティブさ!
シュウ 平本くんの今後に関しては、言えることと言えないことがあるんですけど。まず平本くんが「対戦相手を選んでる」みたいなこと言われてますけど、それはまったくないですね。いままで打診レベルや正式オファーで断ったことは1回もないんですよ。
シュウ 「周りの人が止めてるんじゃないか」みたいなことも言われてますけど、ある意味それはちょっと正しいです。ボクはやっぱりマネージャーですから、彼をしっかり育てないといけないと思ってるんで、いきなり経験のある選手とやるのはちょっと待ったほうがいいんじゃないかと。本人は全然ノーと言ったことないですね。平本蓮選手のファンに言いたいことは、常に短期プラン長期プランを考えてますから、長期プランってのは当然、彼は世界の最高峰を目指すわけですから。そこからブレてはいけないってことはボクがいっつも彼に言うことなんで。
――いわゆるリストアップされたわけですね。
シュウ はい、団体側からしたらプランB、Cを用意するのはあたりまえなんで「これ、やる気はある?」ぐらいのことは選手側に聞くんですよね。ボクは選手のやりたいことを最優先しますけど、同時に団体さんにも必ず聞くのは「団体としての理想はどうですか?」「平本選手にどういう選手を当てたいですか?」と。それでいうとRIZINさんから提案いただいてるプランニングはボクらが考えてるのとほとんど一致してるんですよ。
――コメント欄には「いや、怪物くん(鈴木博昭)が平本戦のオファーがあったと言っていた」とありますけど、まさしくリストアップされたってことなんしょうね。それにあれは平本選手がアメリカに行くタイミングでしたから、どのみち試合ができるわけがないという。
――基本的に打診とオファーの違いが理解されてない場合が多いですよね。候補としてリストアップされただけなのに「逃げられた!」とか。
シュウ そうなんですよね。打診と正式オファーの違いを理解してない選手は多いですね。けどね、これ、簡単な線引きの仕方があるんですよ。対戦相手と日にちとルールだけでなくて、ファイトマネーがいくらなのか、初参戦の選手なら1試合契約なのか複数試合契約なのか。そこまで具体的にすべての条件出ましたか?ここだと思うんです。それが出てなかったら、すべては打診です。ビジネスですから、そう考えるのが普通だと思っているんです。「試合をしたい!」といつでも思っている選手が多いですし、それがRIZINとなるとなおさらだと思うんです。だから早合点してしまうのもすごくわかるんですけど、ビジネス的に考えれば、そういうことなんですよね。
ですから朝倉未来選手に対して「いつでもやってやるぞ」って言ってるから、それは朝倉未来ファンにとっては「そんな偉そうなこと言ってるなら早くやれよ」と言いたくなるのはわかるんですよ、すごく(笑)。だけどもプロだからね。いずれ朝倉未来選手とやるんでしたら、そのための準備が必要なんですよ。それは競技者としても、そしてプロモーター側からしてもプロアスリートからしても、タイミング、舞台、条件とかいろいろとあるんですよね。プロですから。そこらへんの街の喧嘩ではないんですよね。そう考えると、すぐやるもんでもないし、もったいないじゃないですか。やるんならもっとしっかりとPRと宣伝に時間をかけて、という見方もできると思いますし。みんなが見たい見たいと言ってくれてるんですから、どこかでは期待に応えるべきだし、RIZINさんも組みたい試合だとは思いますよね。
――ツイッターのフォロワー数は目安にしかすぎないですよね。
シュウ やっぱりスポーツですからね。わたしは勝負師たちの世界であるべきだと思うんです。これ、前にも自分のブログで書いたことがあるんですけど、前にNBAのマジック・ジョンソン、ラリー・バード、マイケル・ジョーダンとチャールズ・バークレーとパトリック・ユーイングの5人が、ホテルの部屋でビール飲みながら雑談しているうちに「誰がベストのプレイヤーか?どこのチームがベストか?」という激しい討論になったそうなんです。そのときに、バードはバークレーとユーイングに「おまえらは(チャンピンシップ)リングを持ってないんだから」と一言も発言させてもらえなかったんですよ。
シュウ この感覚は大切だと思うんです。白川選手は一部のファンには朝倉兄弟のバーターで入ったんだろ、と揶揄されているみたいですけど、たしかにDEEPでバンタムの大塚(隆史)選手に負けた後にRIZINに出たんで、そう思われても仕方ない部分はあると思うんです。けど彼はそのRIZIN初戦で萩原京平選手に負けたあとに、DEEPで1試合勝ってからまたRIZINに戻るという、いわゆる「正統的なルート」でカムバックを果たして、いまRIZINで3連勝中ですから。そこには自信を持って、あとはどの「数字」を気にするのか?どこを目指しているのか?永ちゃんがどんなに人気が出ようが本が売れようがCMや映画やドラマに出ようが、アーティストとして常に音楽性とライブパフォーマンスを何よりも重視してきたように、格闘家として、どこを一番重要視するのか?これを考えて頑張ってほしいと思いました。
――そこまで考えてたんですか!
シュウ 平本くんはアンソニー・ペティス選手にも憧れてるみたいな部分もあったし、セルジオと練習できるようになれば得るものは大きいですしね。ほかにもあそこのチームって、ストッツ選手みたいにガチガチのレスリングタイプもいるのに、会長のデュークが元キックの選手でもあるせいか、みんな普通に打撃もできるんですよ。これ平本選手も「あそこにいるプロ全員普通にK-1に出れますね」と言ってましたけど、そういう環境に行ってほしかったんです。そうすると、「なら、MMAの試合に勝つためにどうしたらいいのか?」だけを考えるようになるんですよね。日本人って真面目だから、総合格闘技なんだから、すべてできるようにならないといけないと考える人が多いと思うんですよね。それはいいと思いますし、正しい考え方なんですけど、それと同時に「ここ頑張っても無理だから、ここで勝負する」という考えも必要になると思うんですよね。
シュウ 要は大昔からレスリングをずーっとやってきた選手にレスリング勝負を挑んだって、それは無理があるじゃないですか。それなら他の部分で勝つことを考えないといけない。そうなったときに、やはり元キックの選手だったコーチのほうが平本選手に合うと思ったんですよね。それにデュークは元K-1の選手で兄貴は日本のK-1にも出ていた、ということは自分も日本で試合をしたかったという思いもある人ですし、日本の格闘技業界の良さもわかっている人なんですよね。そっちのほうがいろいろと平本選手に教えるときにモチベーションが上がると思いますし。
――実際に平本選手はセルジオのセコンドに抜擢されましたね。
シュウ 誤解しないでほしいのは、ボクはデュークに平本くんをセコンドにつけてくれなんて頼んだこと1回もないんですよ。セルジオから選んでくれたんです。やっぱりいい経験になるのでノーの選択肢はなかったですね。仮にセコンドにつけなかったとしても、ボクは平本くんを会場に誘うつもりだったんです。ああいう試合を肌で感じられる機会ってそんなにないですからね。
シュウ ボクはこう思うんですよ、ジムを選んだりしてセッテイングしたのはボクかもしれないけど、そんなのは0.1%くらいの力ですよ。やっぱりひとりでアメリカに乗り込んで現地で一生懸命頑張ったのは平本くん。99.9%は彼が築いたもの。だってあのセルジオを含め、ルーファスポーツの選手たちにも認められたんですから、そこは評価されることだと思うんですよね。あらためてあのチームにいる選手たちを見ていただければわかると思いますが、軽量級から中量級までいい選手が揃っているんです。たとえばUFCのコンテンダーズとかに出ている選手もいるんで、平本くんからしたら、そのあたりの選手と練習していく中で自分の実力も測れるんですよね。UFCに辿りつくためには、自分はあと何をやらないといけないのか、とかも。平本くんはそういったことが感覚的にわかることができる人間だと思うんで。
――短期間で認めてもらったのはすごいですね。
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