アメリカンプロレスの“現在”を伝える連載! アメリカインディープロレス専門通販「フリーバーズ」(https://store.shopping.yahoo.co.jp/freebirds)を営む中山貴博氏が知られざるエピソードを紹介していきます! 今回のテーマはCMパンク、AEW電撃解雇の顛末です!







「プロレスの会場で身の危険を感じたのは初めてだ」

イギリス・ロンドンのウェンブリースタジアムに、8万人を超える大観衆を集めた大会を大成功させたAEW社長トニー・カーンが、その6日後、アメリカ・シカゴのユナイテッドセンターに集まった観客たちからは容赦ない大ブーイングを浴びせられた。

この日、AEWは6月から始まったばかりの土曜夜の2時間テレビ番組「コリジョン」を、シカゴの会場から生中継することになっていたのだが、番組放送開始のわずか数時間前に、地元シカゴのヒーロー、CMパンクの電撃解雇を発表したのだった。

それは異例のことであった。トニー・カーンは、生放送開始前、会場に集まった観客たちの前に姿を見せ、ステージ上に置かれた椅子に座り、CMパンクの契約解除騒動について語り出す。ブーイングが起こるなか、時折、立ち上がって大きな声を出すなど、感情的な面も見受けられる。その大半がCMパンク目当てと言える熱烈なシカゴの観客たちの動揺を和らげねばならないと、トニー・カーンは思っていた。

「こんなことは初めてだけど、ショーが始まる前に出てきて話をしたかったんだ。ボクは30年以上、ファンとしてプロレスを見続けてきた。そして、4年近くにわたって、このAEWのテレビ番組をプロデュースして、プロレスに関わってきた。でも、プロレスで身体的脅威を感じたのは、“今回の事件”が初めてだった。

AEWには独立した規律委員会があり、弁護士の大半で構成されています。今週、内部調査を行い、委員会は満場一致でCMパンクの契約期間中の契約解除を勧告しました。その結果、最終的にボクが解雇を決定しました。

皆さんが、私の決定により動揺しているのは悲しいことです。だけど、あなたたちが、今夜、ここにいるのはプロレスを愛しているからですよね。がっかりさせてしまったのだったらごめんなさい。今日、会場に来てくれたことを感謝します」

地元シカゴのヒーロー、CMパンクを見に来たファンに、もうCMパンクがこの場にはいないことを謝罪すると、大方のブーイングも消えていた。
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