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大会後恒例!RIZIN笹原圭一さんのRIZINアゼルバイジャン総括です!(聞き手/ジャン斉藤)
――笹原さん!RIZIN初の海外開催となったアゼルバイジャン(以下AZ)大会はかなり大変だったんですよね?
笹原 これがですねえ、笑っちゃうくらい大変でしたよ!
――やっぱり(笑)。
笹原 だって疲れ果てて帰国して、会社の車で迎えに来てもらったんですよ。荷物もいっぱいあるんで。で、自宅の近くまで送ってもらおうと思ったら、車が動かないんですよ!「何これどういうこと?おかしいジャン!」となって。
――まさか、バッテリーが上がって動かないとかそういうくだらない理由ですか?
笹原 そのまさかですよ! 迎えに来てくれた若手社員がJAFに電話したら「いまからだと1時間くらいかかりますね。そんなすぐに行けないジャン」とか言われて、完全に心が折れました。
――……笹原さん、せめて冒頭はAZ国内で起きたエピソードでお願いしますよ!(笑)。
笹原 とにかく最初から最後まで本当に大変でしたよ。
――それにしてもAZ大会の結末は凄かったですね。鈴木千裕がケラモフに失神KO勝ちでフェザー級王者に。
笹原 アゼルバイジャンに稲妻が落ちましたよ!! 君の拳は10000ボルトです!!
――追悼・谷村新司! 深夜3時にも関わらず、PPV視聴者がけっこういたことに驚いたんですよ。途中のハーフタイムショーでみんな心が折れなかったんだなと。
笹原 あのダンスしていた子たちは、地上に降りた最後の天使ですよ(笑)。
――『君のひとみは10000ボルト』の歌詞をブッ込まれても、令和の格オタには1ミリも通じませんよ!
笹原 まぁでも、あのハーフタイムショーには、皆さんよりもそもそも我々が心を折られてましたからね(笑)。
――ハハハハハハハ!
笹原 そのへんの話はあとにするにして、あんなド深夜なのにこれだけ注目されたのは、メインでタイトルマッチをやったことが大きかったですよね。今回はRIZINの本戦なんですけど、初めて海外開催。しかもあまり馴染みのないAZでやったことで番外編の感じはあったじゃないですか。AZでやるからには当然AZの選手たちが中心のマッチメイクになって、日本のファンからすれば「見なくてもいいかな」となりがちですけど。
――タイトルマッチをやったことで番外編感がなくなったというか。
笹原 そうです。「乗りに乗っている鈴木千裕を見なくちゃいけない!」っていう空気がありましたよね。
――今回のケラモフは、よく知らない外国人相手にお茶を濁して、大晦日にタイトルマッチ……という流れもあったはずですけど、あえて直球勝負したことでドラマチックに動いたってことですよね。
――これぞ稲妻レッグラリアット!! しかし、試合後、木村千裕のレガースに凶器が仕込んでいたことが発覚して後楽園ホールでフジナミ・ケラモフvs木村千裕のワンマッチ興行が……って、これも令和に通じるネタじゃないですけど(笑)。鈴木千裕からすれば、テイクダウンされてもガードに持ち込めたのがホントに大きいですよね。
笹原 あそこからパウンドを打とうとすれば身体を振ってくる。そのときに下から三角を狙えば、身体が起き上がるから、そこに合わせて蹴り上げしようと思っていた……ってことですけど、本当かよ!?って(笑)。
笹原 でも、実際に当ててますからねぇ。ああやって説明されると誰でもできそうな感じがしちゃいますけど、普通はあんなの当たらないです。良い子は真似しちゃダメ!(笑)。
――最初は下からのパウンドで決まったように見えたんですよね。ケラモフはトップキープしてるように見えるし、しかも下から鈴木千裕が暴れてたからケラモフが動いてるように見えて。でも、JMOCのレフェリーは最初からケラモフの動向を探っていたからさすがだなって。
笹原 試合が終わった瞬間、会場は「え?何が起きたの?」みたいな感じで呆然とした空気でしたね。その前のセミがムサエフvs武田光司だったんですが、ムサエフは国民的な人気があって超盛り上がったんです。
――ケラモフはアゼルバイジャンMMAの先駆者にして、アルメニアの紛争では最前線に立っていたからカリスマ化してるんでしょうね。
――いままで引っ張ってきたムサエフ、これからを支えるケラモフ、この2人の力で成し遂げたAZ大会だったのに……。
笹原 なんか総天然色映画が最後にいきなり無声映画になる感じですよ(笑)。
――それくらい静まり返っていたと。
笹原 もっというと時間が止まった感じでしたよ。ただ今回全体的にAZのファイターはちょっと硬かったんですよ。ムサエフもすごく慎重だったし、ケラモフも表情が硬いように見えた。それは地元であの雰囲気の中でタイトルマッチですから負けられないってことでしょう。
――自国で戦うことで背負うものができたってことですね。ケラモフの落ち込みを想像したら胸が苦しくなりますよ。
笹原 たぶんケラモフの家族も会場に見に来てたはずですからね……。ボクらはPRIDEのときからこんな格闘技の残酷さ、圧倒的な現実を何度も突きつけられたじゃないですか。
――残酷な結末にショックを受けて、とぼとぼ会場をあとにするという。ボクはたまアリの帰り道、やけになって赤羽で降りてタクシーに飛び乗って下北沢まで帰ったことがありますよ(笑)。
笹原 AZ国民からすれば、初めての国を挙げて行われたMMAイベントですからね。「なんでこんな悲しい思いをしなきゃいけないんだ。思てたんとちがう!」ってなったと思うんですよ(笑)。でもこれ間違いなく癖になるんですよね(笑)。
――ハハハハハハハ! スポーツって国家のプロパガンダ的に使われる場合があるから、勝つことが前提なんですけど、負けを味わうエンターテイメントってあんまりないから中毒性はありますね。
笹原 こんな圧倒的な現実を突きつけられてショックを受けたお客さんは多かったんですけど、次回あるとしたら今回来た人は絶対に見に来ますよね。
――AZ側の制作チームはどうだったんですか?
笹原 今回AZの興行を請け負った会社はマックスさんという方がボスなんですけど。そのマックスさんは会場に来ていたAZ政府の偉い人たちをアテンドしていたんですが、大会の盛り上がりにみんな喜んでいたと。でも、その偉い人が帰るとき車に乗ってもしばらくエンジンをかけられなかったらしいんですね。
――あまりのショックで車を動かせないと... いい話です!
笹原 それを見てマックスさんが「これは完全にハマったな」と、ニヤリとしたそうです(笑)。
――AZにも地獄のプロモーターがいた!(笑)。榊原さんや笹原さんたちも、必死に奔走して実現したPRIDE.1の高田延彦vsヒクソン・グレイシーがあんなにあっさり終わってしまったことで呆然としたわけじゃないですか。鈴木千裕vsケラモフはAZ国民にとっての「PRIDE.1」ですよ!
笹原 AZのスポーツ大臣も大会後に行われたパーティーで「スポーツは人生と同じように思う通りに行かない。残酷な結末が待っていることがある。でも、これこそが我々がこの国で伝えたかったことだ」って演説したんですよ。
――なんて素晴らしい演説!
笹原 その翌日にはマックスさんから「おい、来年の話をしよう」という連絡がさっそくありましたからね(笑)。
笹原 AZからしたらあの結末で終われないですよね。
――高田キャプテンじゃないですけど「もう一丁!」ですよね。高田vsヒクソンの再戦は1年後の同じ日にやりましたけど、千裕vsケラモフの再戦も11月4日にやりかねない(笑)。
笹原 あの会場は国が管轄しているので、いつでも抑えられるはずなので、もう来年の11月4日を抑えている可能性があります(笑)。
12万字・記事13本詰め合わせセットはまだまだ続く……