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RIZIN大晦日YA-MAN戦で復帰する斎藤裕インタビュー!(聞き手/ジャン斉藤)


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――今日の取材場所は品川駅構内のカフェなんですけど……このあとどちらに行かれるんですか?

斎藤 沖縄に行きます。松根(良太)さんのブラックベルトジャパンで練習してきます。

――あ、沖縄合宿ですか。

斎藤 じつは先週も松根さんのところで練習をしてたので。今日からまた行く感じですね。

――ブラックベルトの沖縄で合宿する選手はけっこういますけど、行き来するのは珍しいですね。

斎藤 そうかもしれないですね。 千葉のブラックベルトの選手たちは、1年に1~2回は沖縄で練習するらしいんですけど、こうやって短期間に何回も行き来するのはあんまりいないと思いますね。

――東京に戻ってくるのは、お店(麺ZINさいとう)もあったりするからですか?

斎藤 店もありますし、どうしてもこっちで済まさないといけない用事もあるし、東京でも練習はしてるんですけど。今回の試合は松根さんのところをメインでやっていきたいなと。試合に向けて練習環境を見直さなきゃいけないなとは思ってはいて。いろいろ考えたんですけど、平良(達郎)くんの活躍が物語ってるというか、いまの沖縄には若くて有望な選手がいっぱい育ってるんですよね。若い選手と練習するとエネルギーをもらえるし、まあそのぶんキツイんですけど(笑)。いいパワーをもらえて、やる気にさせてくれます。今回また2週間沖縄でやって、あとはこっちで調整するつもりだったんですが、12月にもまた行こうと思ってます。

――それくらい沖縄に手応えを感じてるんですね。松根さんに見てもらうのは初めてですか?

斎藤 松根さんがパラエストラ松戸時代にやっていたクラスに出たことはあったんですけど、毎日コミュニケーションを取りながら見てもらうことはなかったですね。

―― 松根さんはパラエストラ松戸のときも選手からの人望が厚かったですね。

斎藤 松根さんは指導力がすごいというか、ご自身でも「天職」だとおっしゃってましたけど、面倒見もよくて温かい人ですし、言葉にするのも上手なんで。

――すべてを任せたくなるわけですね。

斎藤 そうですね。 一緒にやれたらいいものが作れるんじゃないかなって感じちゃいましたね。

――沖縄はどちらに泊まるんですか?

斎藤 泊まるのは那覇市内のホテルです。

――ジムまでの行き来はレンタカーですか?

斎藤 いや、平良くんの電動自転車を借りてます(笑)。

――修斗伝承ですか(笑)。ボクは昔のパラエストラ沖縄には行ったことはあるんですが、いまは大きなジムになってるんですよね。

斎藤 かなり大きいですねぇ。 ブラックベルトジャパンの柏ぐらいの縦長の広さがあって、そこにケージも置いてあります。選手が練習に集中できる環境がありますね。 先週もすごくいい練習できたので、今週も頑張って作っていきたいなと思ってます。 

――沖縄では2部練習なんですか?

斎藤 いや、そこは日によりますね。毎日2部したいんですけど、そこはやっぱり松根さんもうまくて、年齢を取ってくるとコンディションが一番大事だし、練習をやったぶん強くなるわけではないと。やらなきゃいけない気持ちもあるんだけど、無理してケガしたら意味ないし、そこのバランスをうまく取ってもらってます。「今日は軽めで、明日集中してやろう」とか。いいコンディションで試合ができるように考えてもらってます。

――たしかに30代後半で毎日2部練はけっこうキツイですもんね。

斎藤 けっこうキツイし、扇久保さんも言ってるらしいんですけど、いかにいいコンディションでいられるか。日々疲れすぎるのもまずいし、やらなすぎるのもダメっていうところで、そのバランス加減がベテランの味になってくるというか。扇久保さんはほとんどマンツーマン練習って言ってたかなあ。 全体練習に出るときもあるけど、基本は誰かを呼んでマンツーでやっているみたいです。

――マンツーマンと全体スパーではどんな違いがあるんですか?

斎藤 全体のプロ練は、階級が違う選手から若手のアマチュアまで10人20人いるし、そこで「やりましょう」と言われたら断れないところはありますね。

――ああ、なるほど。自分の都合でスパーできない。

斎藤  若手の選手は5分×10ラウンドとか、いろんなタイプとガンガンやるべきだと思うんですよ。 でも、ベテランになると、ケガのリスクも高くなっているし、ただ量をこなせばいいってもんじゃない。 練習する相手が厳選されてくるんだったら、扇久保さんのように最初から絞ってやったほうが効率がいいってことですよね。

――対戦相手を想定した人を呼んでマンツーマンでやればいいわけですもんね。斎藤選手や扇久保さんの取り組み方を見ると、どこのジムに所属というよりも、どうやって次の試合に向けてチームを作るかってことも重要なんですね。

斎藤 プロの選手は練習環境を作るのも自分の実力というか、試合前にケガしたり、コンディションがよくないのは自分の責任だと思ってますね。

――そこで今回は松根さんがいる沖縄を選んだと。

斎藤 岡田(遼)選手が「日本の中心は沖縄にある」という話をしていたんですけど、それが平良達郎の活躍が物語っているじゃないですか。 UFCのタイトルマッチに行くような選手が沖縄から出てきた。 東京にいても練習しない人は練習しないし、沖縄でも強くなれる環境がある。「日本の中心は沖縄になるんじゃないか」という話をしていました。

――一時期練習先がタイに集中してましたけど、沖縄もいいですね。

斎藤 自分もタイに行ったことはありますけど、昔は安かったからよかったんですよね。 いまは物価が上がってきてるんで、アメリカに行くのと、あんまり変わらなくなってきてるのかなって。

――タイは世界中から選手が集まってくるからスパー相手には困らないんでしょうけど。

斎藤 そのぶん危険な奴も多いんですけどね。

――得体のしれない外国人がムチャをやってくる話はよく聞きますねぇ。

斎藤 試合前じゃなくて、勉強というか腕試しみたいなかたちでタイに行くのはありだと思うんですけど。向こうのコーチたちもボクらみたいな出稽古の選手のために、試合に向けて選手を呼んだり、調整はしてくれないんで。そのへんの難しさはありますよね。

――だったら扇久保さんのように 自分でパートナーを選んでマンツーマンで備えたほうがいいと。

斎藤 そのほうが信頼関係もあるし、勝手がいいですよね。ブラックベルトジャパンみたいに選手がたくさんいれば、同階級で練習できる選手を選べるでしょうし。 松根さんもそこはちゃんと考えて、他の選手と組ませてくれるんですよ。たとえば10キロ違う人と組んだって、試合前の対策にはならないじゃないですか。

――単なる出稽古だと、斎藤選手も「やりましょう」と誘われたら断りづらいけど、松根さんがヘッドコーチとして仕切ってくれるわけですね。

斎藤 よく知らない選手とやったらどこか痛めちゃうかもしれないし、うまくいい練習ができない可能性もありますよね。松根さんがいろんな選手をピックしてくれるからこそ、いい練習ができて課題も見つかって「次はこうしていこう」と的確にアドバイスをもらっています。

――これだけ試合から離れてるとダメージが抜けるっていうか、身体の感覚はどうなんですか?

斎藤 どうなんですかね。 まずケガで休んでいたわけじゃないんで。それこそヘルニアやヒザの靭帯断裂をやって、リハビリからスタートするわけではないので。身体を見てもらってる先生には状態はいいよって言われてます。疲労がずっと溜まってきてるわけではなく、お店をやったことによって違う疲労は溜まってるかもしれないですけど(笑)。格闘技的な疲労はそんなにないですね。 

――お店の疲労はどういうものですか?

斎藤 まあお店に立って疲れるといってもたかが知れてますけど、精神的なもののほうがキツイですねぇ。  売り上げもそうだし、お店をどう進めていくかは本当に大変で。

――沖縄でもやっぱり頭の片隅にはお店のことがあるわけですか。

斎藤 そうですねぇ。お店のスタッフの方たちは「気にしなくていいので、試合に集中してください」とは言われるものの、ですね。 さすがに全部無視するわけにはいかないですし、頭の片隅には常にあります。グループLINEがあるので、 本日の売り上げは入ってきます。沖縄でも毎日「今日はこういう感じかあ……」って確認しています(笑)。

――数字が沖縄まで追いかけてくる(笑)。お店スタート後、初めての試合ですけど、以前と違うところはありますか?

斎藤 ボクがお店に立っていると、お客様から「いつ試合をするんですか?」と声をかけられることが多いんです。 そこで安易なことを言ってしまうと、いまの時代はSNSで変な憶測が広がってしまうので、歯切れの悪い感じになってしまうから「頑張ります!」ぐらいしか言えないですよね。 

――そう答えるしかないですよねぇ。「いつ試合ですか?」はプレッシャーになったりします?

斎藤 若いときだったらそう感じてしまうかもしれないですけど、 いまはそこまでのプレッシャーはないですけどね。 お店に来てくれるお客さんがこんなにも試合を望んでくれるんだなって。

――格闘技から離れたことで、あらためて自分が何者であるかを確認できたんですかね。

斎藤 それはあります。 「自分は何者なんだろう?」とすごく考えさせられたというか。 自分はずっと格闘技に向き合って選手生活を送ってきたんですけど、いまはお店を進めていくことの大変さも感じながら、同時に選手として過ごしてきた時間はすごい尊いものだったな……ってことも感じたりとか。以前のように試合に向けて突き詰めていくのとは、また違う大変さがある。 お店を1年間やっていろんなことを感じたので、また違った視点で格闘技を見られるようになったと思います。 それは大変さの方向が違うので、どっちが大変だって話じゃないんですけど、すごく学びの多い1年でしたね。


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