Omasuki Fightの北米MMA抄訳コラム――今回はベラトールで実現したケン・シャムロックvsキンボ・スライスがいろんな意味でヤバすぎた件について!これは谷川黒魔術……!?
6年前のエリートXC時代の因縁から、今大会のプレスコンフェランスでの舌戦まで、ケン・シャムロックとキンボ・スライスのこれまでの因縁がどのように紡ぎ上げられてきたのかを丁寧に紹介する試合紹介ビデオが流れている。両者の怒りが積み重なっていき、猛獣のようなうなり声を上げるキンボ・スライスの爆発寸前の表情でビデオが終了すると、そのうなり声にかぶせるように会場に「Ooooh What a Rush!」という別のうなり声が炸裂、WWEばりのど派手な入場ゲートからリージョン・オブ・ドゥームのテーマ曲に乗ってまさかのアニマル・ウォリアーが登場。
さらにいったい誰なのかはわからないが、歌う女、複数の子どもたちも登場。そしてアニマルに呼び込まれる形でケン・シャムロックがじらすように姿を見せる。子どもを引き連れたケンシャムは花道に群がるファンに握手をしながらゆっくりと時間をかけてケージに歩みを進める。それを見守るアニマルと歌う女。マリファナを吸うとこんなものが見えるのではないかと思えるほどの、あまりにクレイジーでサイケなケン・シャムロックの入場シーンだ。夢でもここまでムチャクチャな配役を思いつく人はいないだろう。
次いで入場するはキンボ・スライス。花道を歩くキンボは、なぜか天山広吉のように、ひっきりなしに何かを口走っている。ひょっとすると口は動いているが、何も言っていないのかもしれない。キンボの胸毛はどういうわけか、ブライアン・エバソールのように、自分の顔面を指し示す矢印の形に刈り込まれている。アニマル・ウォリアーの件も胸毛の件も、すべてが何の説明もないままポンと示されているだけで、意味や関連性はさっぱりわからない。しかしとにかく、とてつもなくおかしなことが起きていることだけは了解できる。これはもう目が離せない。
試合はなぜか、ヘビー級戦ではなく「キャッチウエイト」戦であるとアナウンスされている。なんでも、ケン・シャムロックがどうしても、ライトヘビー級相当の204パウンドまでしか増量できなかったらしい。「増量できずにやむなくキャッチウエイト戦」というのははじめて見たが、もはやそんなこともどうでもよい。
試合が始まると、まずは両者が金網際でクリンチ。実際には30秒くらいだったのかもしれないが、永遠にも思える何も起きないクリンチから、ケンが驚くほど簡単にキンボをテイクダウンする。キンボのテイクダウンディフェンス能力のなさは素人目にも口あんぐりだ。
ケンはあっという間にバックを取り、スリーパーホールドに入る。苦しそうな表情をみせ、やがて徐々に意識が遠のいていく様子のキンボ。タップしているかのようにも見える微妙な手の動きまでしてみせている。しかしそこから突然立ち上がり、怒りの反撃を見せるキンボ。リアルファイトでも、こんなプロレスみたいなことになりうるのだということに驚く。打撃戦に転じると、51歳のケンにはヘッドムーブメントというものがまったくなく、キンボの一撃をモロに食らってあっさりと崩れ落ちたのであった。