「RIZIN」記者会見の翌日、ベラトール総帥のスコット・コーカーにインタビューを行った。K-1に学び、UFCとはひと味違う日本流格闘技プロモーションをアメリカで展開、テレビ格闘技の世界で大輪の花を咲かせつつあるスコット・コーカーに、RIZINへの期待、J-MMAへの思い、ベラトールの現状と将来についてなど、いろいろ聞いちゃいました!
――コーカーさん!今日はお忙しいところ、インタビューを受けて頂きありがとうございます。コーカーさんはもう何度も来日をなさっているのですよね?
コーカー 私が初めて日本に来たのは1999年のことだ。私はかつて、ラスベガスでK-1の運営をしていたから、日本とのつながりが強くて、8年間くらい、年に4~5回は来日していたよ。私は韓国のソウル生まれなんだけど、ソウルに帰るより日本に来ることの方がずっと多いんだ。親戚からは、もっと帰ってくるようにと文句を言われているよ。
――コーカーさんはソウルのお生まれなんですね。
コーカー そうなんだ。米国人の父は朝鮮戦争の軍人で、母が韓国人だ。私の格闘技との出会いは、子ども時代に韓国でテコンドーを学んだことなんだよ。テコンドーはサンフランシスコに移り住んだ後も続けて、黒帯を取った。
――さて、コーカーさんも記者会見に出席されたRIZINに対してはどんな期待感をもたれていますか。
コーカー 3日間の日程が組まれているところが興味深い。普通はビッグイベントは1日でやるからね。それと、ヘビー級トーナメントが2日間にわたって行われるようだけれど、優勝するには初日に2試合、2日目に1試合しないといけない。これは選手にとってはきついトーナメントになるだろうね。
サカキバラさんについていえば、彼はMMAについての明確なビジョンを持っている人で、何事もビッグにやろうとする。私が最初にPRIDEを見たのは2000年頃だったかな、本当にすごいイベントだった。サカキバラはあれを再現しようとしているんだと思うよ。
――ベラトールは具体的にはどんなかたちでRIZINに参加してくれるのですか?
コーカー まず、バイアコム傘下のスパイクTVでRIZINの放送を実現させる。それから、選手の派遣もする。誰れが出場するかはまだ決めていない。サカキバラさんとも話し合いをしながら決めていきたいが、ベラトールも結構たくさんイベントを開催しているのでね。
――RIZINへのビッグネームの参戦を期待してもいいですか?
コーカー そうなるといいなと思っているよ。
――長期的にはどんな関わり方をしていくおつもりですか。RIZINは将来的にも継続するイベントなのですよね?
コーカー そういう計画だと聞いているよ。でもまずは、今年の大晦日によい視聴率を取ることが大きな試金石になるんだろうね。ただ私の見ている範囲では、RIZINの旗揚げにエキサイトしている人はたくさんいる。これは私の持論なんだが、日本には日本のMMAリーグがあるべきだと思うんだ。UFCは年に1回、ポツリポツリとやって来るだけだし、それを見るために観客はさいたまスーパーアリーナに朝の8時に行かないといけない。そんなアホらしい話があるかい? あれは、アメリカのファンに向けて作られたイベントが、たまたま日本で行われていると言うだけなんだよ。サカキバラさんは日本のためのMMA大会を作ってくれるはずだ。入場・音楽・照明などのプロダクションがすばらしいものになることは間違いないし、それからこれは約束してもいいけど、短期間のうちに新しいスター選手が出てくることになる。
――本当ですか!日本人のスター選手なのでしょうか。
コーカー 日本人かもしれないし、オランダ人かもしれないし、アメリカ人かもしれない。PRIDEがどれほどたくさんのスター選手を輩出したかを考えてみればわかるだろう? ストライクフォースだってずいぶんたくさんのスター選手を輩出したんだぞ。ロンダ・ラウジー、ルーク・ロックホールド、ダニエル・コーミエ、タイロン・ウッドリー、ニック・ディアス、ロビー・ローラーなど、みんなストライクフォース出身だ。サカキバラさんも私も、ネクストスターが誰になるのか見極める眼力と、そういう選手を育てていく術を知っているんだよ。
――それにしても現状では、具体的なスター選手の候補者があまり思い浮かばないので、不安なのですが……。
コーカー 私が昨年ベラトールを任されたとき、ベラトールは団体としての方向性を失っていた。前任のCEOはファイトビジネスを理解しているとは言いがたかった。1年2か月経って、いまアメリカではベラトールへのイメージは大きく変わっている。ポール・デイリー、メルビン・マヌーフ、ジョシュ・トムソン、ジョシュ・コスチェック、フィル・デイビスといった人気選手を獲得する一方で、オリンピックレスラーと契約するなど育成にも力を入れて基礎固めを行ってきた。結果、視聴率は前年比で33%アップ、観客動員は78%もアップしたんだ。1年くらいはかかるかもしれないが、ファンの認識を変えることはできるんだよ。日本のファンも、まずはサカキバラさんに乗ってみることだ。彼はやり方を知っている。プロモーションと言うことを理解している人は、世界中に一握りしかいない。サカキバラさんはその1人だよ。
しかも、RIZINには世界中のプロモーターが提携を表明している。今回の記者会見には参加していなかったが、One Championshipも参加している。この提携を通じて、全部で10か国の6,000人のファイターにアクセスできるんだ。これは強力な選手層だよ。
――ところで、日本でUFCが苦戦しているのはどういう点に原因があると思いますか。
コーカー マッチメークの考え方に問題があるんじゃないのかな。むかし、カンチョウー・イシイ(石井和義)から教わったことで、いまだにプロモーターとしての私の財産になっている考え方があって、それは「ランキング1位の選手とランキング2位の選手の試合は必ずしもおもしろくない」ということだ。見に来てくれるのはハードコアファンだけなんだ。日本でも「ボブ・サップ対曙」の試合は視聴率50%をとっただろう?。「Cast a bigger net」(大きな網を投げないといけない)、「Think out of the box」(形にとらわれず考える)ということを常に考えないといけない。
――いまベラトールはアメリカでまさに「大きな網」を投げているんですよね。
このインタビューの続きと、榊原信行、石川雄規、アニマル浜口物語、プロレス点と線、金原弘光、中井祐樹日記、笹原圭一書評などの記事がまとめて読める「詰め合わせセット」はコチラ http://ch.nicovideo.jp/dropkick/blomaga/ar901262