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岡田斗司夫の毎日ブロマガ「『この世界の片隅に』を見ても泣くな!? これから見る人へのアドバイス!」
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岡田斗司夫の毎日ブロマガ「『この世界の片隅に』を見ても泣くな!? これから見る人へのアドバイス!」

2016-11-29 06:00
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    岡田斗司夫のニコ生では言えない話
     岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2016/11/29
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    おはよう! 岡田斗司夫です。

    今回も『この世界の片隅に』について、お話します。

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    「『この世界の片隅に』を見ても泣くな!? これから見る人へのアドバイス!」


     『この世界の片隅に』は、主人公『すずさん』を実在の人物だと観客に信じ込ませるために、3つのポイントをたててました。

     ひとつめのポイントは、キャラクターを信じさせるための綿密な取材と背景描写。

     ふたつめのポイントは、ショートレンジの仮現現象による目の残像を応用した、新しい作画の領域。

     みっつめが、声優の『のん』
     もと能年玲奈だよね。

     この『のん』の演技って、誰が見てもむちゃくちゃ褒めるんだよ。
     僕も「なんでだろう?」と思ってたんだ。

     すずって主人公は、絵で見ると幼そうに見えるんだけど19歳なんだよね。

     19歳で嫁入りして、20歳くらいまでの話なんだ。
     だけど、愚痴も言わずに、義理のお姉さんのいじめにも耐えて、どうしてもいい子に見えちゃうんだ。
     
     「文句を言わずに現実逃避する、弱い人間」として登場してるんだ。

     「お義姉さんとかに逆らわないのは、この子が弱いから」というのは、作画じゃなくて声優の演技力なんだよ。

     ストーリー進行につれて、『のん』の内面や演技が、どんどん変わっていく。
     それはちゃんと、すずの内面が溢れ出したように見えるんだ。

     でもそれは、『のん』の演技力なんだよね。

     作画もアニメーションで見せるのが目的じゃない。
     監督のやろうとしてることは、「すずが、この世にいた」というのを信じさせること。

     だから、『のん』の演技もサポートに徹しているし、作画も『のん』の演技のサポートに回ってるんだよね。

     だからこの映画っていうのは、『のん』に声優としてすごくいい演技をさせるためにサポートがあるように見える。

     仮現運動を含めたアニメーションが、演技をサポートしてるように見えてしまうくらいなんだ。

     作画中心でもなくて、声優中心でもない。
     「すずを実在させる」ということだけを中心に置いた、たったひとつの目的で、すべてのテクニックと演出が集中してる。

     ①キャラクターを信じさせるための、綿密な取材と背景描写。
     ②ショートレンジの仮現現象による、目の残像というのを応用した、新しい作画の領域。
     ③声優の、のん。

     この三つで、見た人はあの世界を信じちゃうし、キャラクターの実在を信じちゃう。

     その上でのお話だから、みんなものすごい感動して、その感動が言葉にならない。

     実際にあった現実を、ドカーンと何年分かを心の中に叩き込まれたような感じ。

     今、コメントに『宮崎駿「くそう~!!」』ってあったけど、本当にその通りだと思うよ。

     この作品は高畑勲の『思い出ぽろぽろ』とか、宮崎駿の『魔女の宅急便』へのアンサーになってる。

     これから見る人へのアドバイスは「泣くな」なんです。

     「泣けますか?」って質問に対して答えるなら「泣けるけど、絶対に泣かない方がいい。」って答えます。

     なぜかというと、人間って泣いた瞬間に感性が閉じちゃうし、理性が働かなくなっちゃうから。

     泣いた瞬間に「泣く映画だ」と思っちゃう。
     それで泣くところを探しちゃう。
     一度 泣き出すと、理性が働かなくなっちゃう。

     この映画は、理性と感性を全開にしたほうが絶対にいいんだ。

     口で言えないほど、泣くこともできないほど、すさまじい感動が泣かずに踏ん張ってたら、最後に「うおおお!」と来るから。

     なので安易に泣いて、「泣ける映画」にしないほうがいいと思うよ。


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