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「シャーデンフロイデの謎 3・心の毒は性格とは無関係」
では、次は「僕らはなぜ、“平均”というものを考えてしまって、自分が平均以上だというふうに見積もってしまうのか?」ということについて、レイク・ウォビゴン(Lake Wobegon)効果という話をします。
レイク・ウォビゴンというのは、「アメリカのどこかにあるという町で、ちょっとしたミスで地図に載っていない」という設定なんですね。
ガリソン・ケイラーは、「そこで今朝、こんなことがありました」という話を毎回毎回オープニングトークとしてしていたんですよ。
このマーク・アリックの実験については、リチャード・H・スミスの本に載っていたんですけども、「どの大学で行われたのか?」というデータがあまり出てなかったので、一応、結果だけ伝えます。
すると、大多数の学生は “6” という「最上ではないが、かなり高い」という選択肢を選ぶんです。
自分のことをかなり高く見積もるんですね。
こっちは、平均である “4” が最も多いという、いわゆるベル・カーブ(正弦曲線)に近い、当たり前のグラフになるんです。
その結果、人間の心には “捻(ね)じれ” というのが発生するんです。
無意識に自分のことを高く評価するからこそ、ごく当たり前のことにちょっとイラッとしたり、ちょっと運が悪かったりするだけで心の中が傷ついてしまう。
そんな、自分は平均以上の場合もあるし以下の場合もあることを認めようとしない、認知の捻じれというのが発生してしまうわけですね。
ホーマー・シンプソンは、もう8年も隣に住んでいるのに、フランダースがなんとなく気に食わないんですね。
そこで、よく冷えた、わざわざオランダから取り寄せたビールを出してもらうんですけど。
そこで、ごく普通の会話をしていただけなのに、なんか喧嘩を売られたような気分になって、ホーマーは帰っちゃうんですよ。
そして、よく思い返してみても具体的なことを1つも思い出せないホーマーは、最後に「でも、なんか “あいつの言いたいこと” に腹が立つんだよ!」って言うんです(笑)。
だって、遊びに行ったら、さっそくサンドウィッチを出してくれて、冷えた高級なビールを注いでくれて、いろいろ親切なことを言ってくれたりするわけですよ。
さらにフランダース家の子供は、「お父さん、お父さん」って言って、懐いている。
こんな光景を見せられる度に、ホーマーは「お前はお隣さん以下だ!」というふうに言われているような気になってしまうんですね。
たまりかねたホーマーが、「夜の町に散歩に行ってくる」と行って家を出た時に、ネッド・フランダースの家の前を通ると、家の中から笑い声が聞こえてきて、それにもムカムカしてしまうんです。
次に、被験者をランダムに2つのグループに分けて、1つ目のグループには、「テストの結果、あなたの知力は劣っているということがわかりました」という通知を、2つ目のグループには、「あなたの知能には何も問題ありません」というような通知を、それぞれ送るんです。
本当の実験はここからなんです。
この意地悪な実験とは「被験者の知能に関する嘘の通知を送った直後に新聞記事を読ませて、その感想を書かせること」なんですよ。
その新聞記事とはどんなものかというと、「大学生の若者が、大学で開かれたパーティーで良いカッコしようとして、調子こいて高級車を借りてガーッと乗り付けて、駐車場に停めようとしたら、そのまま滑って運河に車を落としてしまい、パーティーはメチャメチャになって、大恥をかいた」というもの。
「運河に車を落とす」というところがオランダだなあと思うんですけどね(笑)。
そんな記事を読まされて、さあ、どう思ったかという実験なんですけども、さっき2つのグループに分けた内、「あなたは知的に劣っている」と言われたグループに限って、全員が「ざまあみろと思った」という感想を書いてきたんですね。
にも関わらず、知能に問題のないと言われたグループの感想には、「気の毒に思った」とか「なんとも思わない」という当たり前の回答が返ってきたのに、知能が低いと言われた人達は、ほぼ例外なく、全員「いい気味だ!」という感想を返したんですよ。
つまり、この「いい気味だ!」と思うシャーデンフロイデという心の中の現象は、その人の個性とか、元々の性格とかには関係なく、「その直前に自尊心が傷つけられるようなことがあったか、なかったか?」によって発生してしまう現象だということが、このオランダの実験で実証されたわけですよ(笑)。
「よくもまあ、こんな実験を思いついて実行したな」って思うんですけども。
そんな、すごく切ない話です。
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いかがでしたか?
「え?!それってどういうこと?」「そこのところ、もっと詳しく知りたい!」という人は、どんどん、質問してみて下さい。
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岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2018/03/01
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「シャーデンフロイデの謎 3・心の毒は性格とは無関係」
では、次は「僕らはなぜ、“平均”というものを考えてしまって、自分が平均以上だというふうに見積もってしまうのか?」ということについて、レイク・ウォビゴン(Lake Wobegon)効果という話をします。
レイク・ウォビゴン効果というのは、アメリカのラジオ番組の司会者であるガリソン・ケイラーが書いた小説に出てくる、架空の町です。
まあ、小説というか、ラジオのトークなんですけど。
まあ、小説というか、ラジオのトークなんですけど。
レイク・ウォビゴンというのは、「アメリカのどこかにあるという町で、ちょっとしたミスで地図に載っていない」という設定なんですね。
ガリソン・ケイラーは、「そこで今朝、こんなことがありました」という話を毎回毎回オープニングトークとしてしていたんですよ。
そのレイク・ウォビゴンに住んでいる人達というのは、みんな優しい良い人で、住んでる地域が固まりすぎているから、若い人は ここから逃げ出したがるんだけど、絶対に 出ていった後で思い出して「帰りたいな」と思ってしまう。
そんな、典型的な “田舎の良い町” として語られています。
そんな、典型的な “田舎の良い町” として語られています。
面白いことに、このレイク・ウォビゴンのことを聞いた人は、みんな「俺の町のことだ」と思うらしいんですね(笑)。
「この町は、いい人ばかりで素敵な場所だ」という話を聞くと、「まるで俺の住んでる町みたいだ!」って思う。
これに因(ちな)んで、自分たちというのを平均以上に良く見積もってしまうこと、「自分は特徴的で、個性的で、特別な存在で、その他 大勢の人みたいに同調圧力に負けて同意したり、流されたりなどしない。自分の意思で行動を決めているんだ!」というふうに思うことも、“レイク・ウォビゴン効果” と呼ばれるようになりました。
これに因(ちな)んで、自分たちというのを平均以上に良く見積もってしまうこと、「自分は特徴的で、個性的で、特別な存在で、その他 大勢の人みたいに同調圧力に負けて同意したり、流されたりなどしない。自分の意思で行動を決めているんだ!」というふうに思うことも、“レイク・ウォビゴン効果” と呼ばれるようになりました。
これは 、平均以上効果とも言われています。
“平均以上効果” でググると詳しい話が出てくるよ。
“平均以上効果” でググると詳しい話が出てくるよ。
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これを証明するために、マーク・アリックという人が面白い実験をしました。
このマーク・アリックの実験については、リチャード・H・スミスの本に載っていたんですけども、「どの大学で行われたのか?」というデータがあまり出てなかったので、一応、結果だけ伝えます。
これ、何かというと、100人くらいの学生を呼んで、「あなたはユーモアのセンスがどれくらいありますか?」と、1~7までの数字を学生に選ばせるといったものなんですね。
“1” が「普通の学生よりかなり悪い」。
“7” が、「普通の学生よりかなり良い」。
“1” が「普通の学生よりかなり悪い」。
“7” が、「普通の学生よりかなり良い」。
すると、大多数の学生は “6” という「最上ではないが、かなり高い」という選択肢を選ぶんです。
自分のことをかなり高く見積もるんですね。
では、次に「あなたの数学の能力はどれくらいありますか?」と聞くとどうなるか?
こっちは、平均である “4” が最も多いという、いわゆるベル・カーブ(正弦曲線)に近い、当たり前のグラフになるんです。
つまり、数学の能力のような客観的に測れるようなものについては、みんな、そこそこ正しく評価するにも関わらず、ユーモアのセンスのような言ったもの勝ちの自己評価でしかないようなものでは、みんな高めに答えてしまうわけですね。
これが、平均以上効果を端的に表した実験だと言われています。
ここから何がわかるのかというと、「人間というのは、どうしても自分を高く評価してしまう」ということなんです。
ところが、それを数学の能力のような客観的な数値に当てはめてしまった場合、ほとんどの場合、「別に高くはない」という結果が出てしまう。
その結果、人間の心には “捻(ね)じれ” というのが発生するんです。
無意識に自分のことを高く評価するからこそ、ごく当たり前のことにちょっとイラッとしたり、ちょっと運が悪かったりするだけで心の中が傷ついてしまう。
そんな、自分は平均以上の場合もあるし以下の場合もあることを認めようとしない、認知の捻じれというのが発生してしまうわけですね。
・・・
では、この認知の捻じれとはどういうことかというと。
これもまた、『ザ・シンプソンズ』の、シーズン2の第6話『シンプソンズ一家VSフランダース一家』というエピソードに描かれています。
ホーマー・シンプソンは、もう8年も隣に住んでいるのに、フランダースがなんとなく気に食わないんですね。
でも、「地下室に来る? ビールが冷えてるよ」と言われて、ついつい遊びに行ってしまいます。すると、ものすごい地下室に案内されるんですね。
そこで、よく冷えた、わざわざオランダから取り寄せたビールを出してもらうんですけど。
そこで、ごく普通の会話をしていただけなのに、なんか喧嘩を売られたような気分になって、ホーマーは帰っちゃうんですよ。
その晩、家に帰ったホーマーは、マージという奥さんと寝ている時に「今日のフランダースには本当に腹が立った!」と話すんです。
マージが「何かヒドいことを言われたの?」と聞くと、ホーマーはしばらく考えてから、「いや、言われてない」と返す。
「じゃあ、なにかヒドいことをされたの?」と聞かれると、また、しばらく考えてから「いや、されてない」と返す。
「じゃあ、私達を侮辱されたの?」と聞かれても、「いや、そんなことはない」って言うんです。
「じゃあ、なにかヒドいことをされたの?」と聞かれると、また、しばらく考えてから「いや、されてない」と返す。
「じゃあ、私達を侮辱されたの?」と聞かれても、「いや、そんなことはない」って言うんです。
そして、よく思い返してみても具体的なことを1つも思い出せないホーマーは、最後に「でも、なんか “あいつの言いたいこと” に腹が立つんだよ!」って言うんです(笑)。
それもそのはず、ホーマーにとって「自分が何に怒っているのか?」というのは、認める事の出来ない、いわゆる心の盲点みたいなものだから ですね。
もちろん、これは、アニメを見ている人には明らかなんですよ。
「ネッド・フランダースの方が良い生活をしているから」です。
「ネッド・フランダースの方が良い生活をしているから」です。
だって、遊びに行ったら、さっそくサンドウィッチを出してくれて、冷えた高級なビールを注いでくれて、いろいろ親切なことを言ってくれたりするわけですよ。
さらにフランダース家の子供は、「お父さん、お父さん」って言って、懐いている。
こんな光景を見せられる度に、ホーマーは「お前はお隣さん以下だ!」というふうに言われているような気になってしまうんですね。
たまりかねたホーマーが、「夜の町に散歩に行ってくる」と行って家を出た時に、ネッド・フランダースの家の前を通ると、家の中から笑い声が聞こえてきて、それにもムカムカしてしまうんです。
「お隣さんはスゲえよな。いやあ、もう俺、敵わないわ」って言ってしまえば、心の中がスッと軽くなるのに。
「うらやましい」と思ったことを認めたくないあまりに、ホーマー・シンプソンの心の中には、捻じれが発生してしまうんですね。
「うらやましい」と思ったことを認めたくないあまりに、ホーマー・シンプソンの心の中には、捻じれが発生してしまうんですね。
・・・
じゃあ、そういった捻じれが発生すると、どんなことになるのかというと。
もう、こういうことに関する心理学実験は、1950年代から60年代に、ヨーロッパやアメリカでやり尽くされているんですよ。
俺、今回、これを知ってビックリしたんですけれども、認知のねじれが生み出す効果に関するオランダの心理実験があるんです(笑)。
俺、今回、これを知ってビックリしたんですけれども、認知のねじれが生み出す効果に関するオランダの心理実験があるんです(笑)。
集められた被験者は、まず、知能テストみたいなものを受けさせられます。
まあ、実は、このテストは嘘なんですけども。
まあ、実は、このテストは嘘なんですけども。
次に、被験者をランダムに2つのグループに分けて、1つ目のグループには、「テストの結果、あなたの知力は劣っているということがわかりました」という通知を、2つ目のグループには、「あなたの知能には何も問題ありません」というような通知を、それぞれ送るんです。
本当の実験はここからなんです。
この意地悪な実験とは「被験者の知能に関する嘘の通知を送った直後に新聞記事を読ませて、その感想を書かせること」なんですよ。
その新聞記事とはどんなものかというと、「大学生の若者が、大学で開かれたパーティーで良いカッコしようとして、調子こいて高級車を借りてガーッと乗り付けて、駐車場に停めようとしたら、そのまま滑って運河に車を落としてしまい、パーティーはメチャメチャになって、大恥をかいた」というもの。
「運河に車を落とす」というところがオランダだなあと思うんですけどね(笑)。
そんな記事を読まされて、さあ、どう思ったかという実験なんですけども、さっき2つのグループに分けた内、「あなたは知的に劣っている」と言われたグループに限って、全員が「ざまあみろと思った」という感想を書いてきたんですね。
・・・
繰り返しますけど、このグループ分けは完全にランダムなんですよ。
2つのグループには知能の差なんて全く関係ないんです。
2つのグループには知能の差なんて全く関係ないんです。
にも関わらず、知能に問題のないと言われたグループの感想には、「気の毒に思った」とか「なんとも思わない」という当たり前の回答が返ってきたのに、知能が低いと言われた人達は、ほぼ例外なく、全員「いい気味だ!」という感想を返したんですよ。
つまり、この「いい気味だ!」と思うシャーデンフロイデという心の中の現象は、その人の個性とか、元々の性格とかには関係なく、「その直前に自尊心が傷つけられるようなことがあったか、なかったか?」によって発生してしまう現象だということが、このオランダの実験で実証されたわけですよ(笑)。
こういったシャーデンフロイデみたいなことを話すと、僕らはついつい「いや、俺は人のことをうらやましいと思わないから」とか、「そういうヤツは心が捻じれてるんだよ」とか言うんですけども。
このオランダの実験が指し示してるのは、「その直前に自分の自尊心が傷つけられたかどうかが、かなり関わっている」ということなんです。
このオランダの実験が指し示してるのは、「その直前に自分の自尊心が傷つけられたかどうかが、かなり関わっている」ということなんです。
「よくもまあ、こんな実験を思いついて実行したな」って思うんですけども。
そんな、すごく切ない話です。
そんなことを言いつつ、僕は今、それをすごく嬉しそうに話してるんですけどね(笑)。
「なぜ、こんな切ない話を、こんなに嬉しそうに話しているのか?」については、後半の方でお話します。
「なぜ、こんな切ない話を、こんなに嬉しそうに話しているのか?」については、後半の方でお話します。
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「え?!それってどういうこと?」「そこのところ、もっと詳しく知りたい!」という人は、どんどん、質問してみて下さい。
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よい質問は、よい回答にまさる、と言われます。
みなさんの質問で、僕も予想外の発想ができることも多いです。
だから僕は、質疑応答が大好きです。
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