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「【『海賊の経済学』解説 3 】フランス革命よりも遥かに早い海賊船の民主主義」
たとえば、勝手に部下を殺して、その罪を他のやつになすりつけたり。
これはこれでヤバい。
だから、そういうジレンマがあるんですよ。
海賊船というのは、強力なリーダーが必要なんだけど、同時に、そのリーダーに全てを決めさせては自分達がヤバイことになってしまう、と。
そのため、海賊船では、海賊黄金時代よりも100年くらい前のバッカニアの頃から、「強力な権力を分散させる」ということが図られていたんだ。
あんまり聞き慣れない言葉だよね。
海賊船には、船長以外に必ず “クオーターマスター” というヤツがいたんだ。
船長というのは、航路を決めたり、戦闘の時、「このまま戦う」とか「引き上げる」とかの決定を下す絶対的な指揮官だったとすると、船内での食料の割当てとか、日用品の配分、奪った財宝の査定、それをそれぞれ誰にどのように配分するのかの決定、船員同士の喧嘩の仲裁、仲裁した場合の罰則の決め方、罰則の実行、これら全てのことは、クオーターマスターと呼ばれる役職の人物が決めていた。
船長というのが将軍で、クオーターマスターというのは内閣総理大臣みたいなものだと思ってくれて構わない。
だいたい、船長がクビになる時というのは、クオーターマスターが自動的に臨時船長になる。
クオーターマスターがクビになるようなことがあったら、代わりのクオーターマスターを、みんなの中から選んだりするということで、この2人体制でなんとかやってた。
流石に、“三権分立” というところまでは思いついてないんだけど、この2つを分けるだけで、十分に先進的だったんだ。
そういう意味では、陸よりも遥かに上手くやってたんだよな。
たとえば、さっきのバーソロミュー・ロバーツ艦長の艦隊では、どれだけ平等だったのかというと。
実際は全然違うんだよ。
次に、甲板長(ボースン)と、砲長と、砲撃手。
彼らは他に比べてリスクが多いんだ。
砲長は火薬とかで怪我をする場合が多いし、甲板長は一番怪我をする機会が多い役職なので、これは船員1.5人分。
航海長とか一等航海士みたいな役職は、船員1.25人分。25%しか違わない。
それ以外の全員は、船員1.0人分。
これがバーソロミュー・ロバーツ船長の艦隊のわけまえだ。
ということで、実はわけまえがすごくハッキリしていて、その上、綺麗に明記されて、最初から張り出されるんだ。
あらゆる海賊というのは、その船に乗るかどうか決めようとした時に、これを見せられて「これに文句はないな?」というのにサインしないと乗れないようになってたんだよ。
すごいよね。
もちろん、本当の場合も1,2例はあるんだけど、でも、その大部分が嘘なんだよ。
なぜかというと、「海賊船の船長というのは、実は、隠し財産を持つことが出来るほど儲からないから」なんだよね。
だって、奪い取った財宝の管理権は、艦長じゃなくてクオーターマスターにあるんだよ。
そして、クオーターマスターは徹底的に平等に分配しちゃう。
でないと、次の航海で、そいつはクオーターマスターに選ばれなくなるし、そうなると、船長になることもなくなるわけだからさ。
なので、本当に公平にするしかないんだよ。
わずかでも不正の気配があったら、艦長もクオーターマスターも選挙でクビになるんだよ。
だから、「悪魔のように恐れられている船長と、苦しめられている下っ端」というのは、やっぱり、おとぎ話とかハリウッド映画の中だけの伝説なんじゃないかと思います。
この理由を経済学の用語で説明すると、“プリンパル・エージェント問題” というのに行き着くわけですが、これについて詳しく話すのは後半で。
「え?!それってどういうこと?」「そこのところ、もっと詳しく知りたい!」という人は、どんどん、質問してみて下さい。
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