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岡田斗司夫の毎日ブロマガ「【『ナウシカ』の世界を歩いてみよう 3 】“風の谷” は幾世代も掛けて築かれた宝石のような場所」
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岡田斗司夫の毎日ブロマガ「【『ナウシカ』の世界を歩いてみよう 3 】“風の谷” は幾世代も掛けて築かれた宝石のような場所」

2019-01-16 06:00
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    岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2019/01/16
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    今回は、ニコ生ゼミ01月06日(#263)から、ハイライトをお届けいたします。

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     【『ナウシカ』の世界を歩いてみよう 3 】“風の谷” は幾世代も掛けて築かれた宝石のような場所


     砂退けの棚を抜けると、ユパは “揚水風車” 、水を上げる風車の前に着きます。

     これでようやっと風の谷に入るわけですね。

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     この揚水風車の門をユパが通っているんですけど、風車の奥に砂退け棚が何重もあるのが見えます。

     つまり、さっき話したように、この砂退け棚というのは、何重にも何重にもあることによって村を守っているということがわかりますね。

     遥か向こうまで、谷が右向きに曲がっていて、砂退け棚が何重にもあるのが見えます。


     ここで回っている風車は、水道のためのものですね。

     ここまで運ばれてきた水を、この上まで汲み上げるためのものです。

     壁も風車も全て石積みです。

     だいたい、イギリスの田舎に行けば、レンガよりもこういう石造りの建物が多いんですけど、こういうのがあるのは決まって貧しい土地です。


     この石も岩石ではもちろんなくて、さっきも言ったように、おそらく巨大なセラミックの建築物が倒れて砕けた後の破片を、丁寧に丁寧に選り分けて積み上げたわけですね。

     レンガのように同じサイズじゃないから、1つずつあれこれ試して積み上げる。

     いい加減に積んだら後で崩れますし、なによりも、これは水道を扱うものだから、貴重な水が溢れて地面に染み出してしまう。

     だから、たぶん、この石と石の間は、セラミックの埃のような細かい砂をかき集めて、セメントのような物を作って固定しているはずです。

    ・・・

     ここの壁のように見えるのは、水が出ていることからもわかるんですけど、壁ではなくて、巨大な “ローマ水道” です。

     つまり、水を汲み上げて、この壁の中全体で水を貯める仕掛けになってるんですね。


     この風車は下にある水を汲みあげるんですけど、この「下にある水」というのは地下水ではありません。

     後で説明しますけど、風の谷には、城の地下500mにしか水源がないんですよ。

     その城の地下500mから汲み上げた水を、わりと低い位置にある城から、棚田の上にまでですね、いろんな風車を使って、揚水、つまり汲み上げを繰り返して持ってきて、最後にここに貯めているわけですね。


     だから、壁から水が溢れ出ているんです。

     壁には溜まった水の吹き出し口があります。

     この位置まで、風車の力で水を持ち上げているわけですね。

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     この吹き出し口の1つ1つに高低差があるのは「今、どれくらいの水位まで、この中に水が貯まっているのか?」を遠くからもひと目で判別出来るようにするためです。

     全ての口が同じ高さだったら、その高さまで水位があるかどうかしかわからないじゃないですか。

     でも、高低差がいろいろある穴から水が出ているおかげで、「ああ、今この村の貯水量はこれくらいなんだな」というのが、離れている人間にも一発でわかるんです。


     低いところからしか水が出ていない時は、みんなが水を節約しなければいけない。

     高いところから水が出ている時は、安心だから笑って暮らせる。

     そういうものが、絵として、ひと目で分かる構造になっているんですよ。


     でも、僕らはこれを「チャッチャララー♪」という音楽とともに流し見て、「おい、ユパ、早いことジルに会えよ!」とか、「ナウシカ、出てこねえのかよ」とか思っちゃうんです。

     だけど、ブラナウシカとして、丁寧に丁寧に見ていくと、ちゃんとそこまで考えて描いているのが分かるわけですね。

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     今、コメントで、「わからねえ」とか「そういうのを説明してくれよ」というのが流れたんですけど。

     こういうことを説明するためにワタクシはこの世の中に存在するわけですから。

     補完システムとして使って頂けばOKです(笑)。

    ・・・

     この揚水用の風車を抜けると、巨大な貯水湖が現れます。

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     まあ、「巨大な」と言っても、現代の感覚で見ると、ささやかなものなんですけど。

     ここでユパはトリウマに水を飲ませています。


     ささやかな貯水湖なんですけど、人口500の村では、この貯水量というのはかなり恵まれています。

     さっきの位置関係から見てわかるように、ここにローマ水道があって水がザーッと落ちているんですけど。この貯水湖があるのは、風の谷の最も高い土地です。

     つまり、ここまで水を汲み上げて持って来る執念が、この貯水池を作り上げたんです。

     風の谷周辺の全体構造の地図を描いたので、後で見せますね。


     この貯水池は、水を逃さないために、底の部分には、ギッシリと石がタイルのように敷き詰められています。

     水を飲むシーンで、少しだけ映るんですけど。

     こういうのって、作るのも大変ですけど、しょっちゅう中がひび割れたり、水が染み出したりするので、途方もない手間と時間を掛けてメンテをしなきゃいけないんですね。

    ・・・

     この貯水池を抜けると、お待たせしました。いよいよ風の谷です。

     ユパがじいさん達と話しながら、ゆっくりと画面左の方に向かって歩いていくと、向こうの方が明るくなっていきます。

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     実際は、こういうパノラマ画面なんですけど。

     ここで、この谷の全景がやっと見えるんですね。


     『風の谷のナウシカ』という作品では、ユパが谷を降りる時に、崖の横の道をフラフラしながら通って、砂退けの棚というのを見ながら風車の横を通り抜けて、貯水池の横を通り抜けて、初めてザーッと舞台が見えるんです。

     この冒頭の風の谷を見せる時には、やたらとパンが多いんですね。

     左右のパンとか、上下のパンとかを使って、とにかくスケールのある絵を見せようとしているんです。


     こうやって、どこまでもどこまでも風車が続いていて、その遥か向こうに、ナウシカとお父さんが住んでいる城が見える。

     そういう構造になっています。

     周りには、ぶどう畑があるのがわかります。


     貯水池を過ぎて、ぶどうの果樹園を通り過ぎると、ようやっと風の谷の全景が、遥か下に見えます。

     この貯水池からも、高低差で言うと100mから200mくらいの下の方に、族長の住む城があるんです。


     普通、王族とか族長というのは、高い位置に住みたがるんですね。

     遠くを見渡せる高い位置に住みたがるんですけど。

     風の谷は逆で、谷の上に行くほど、腐海からの胞子が危険だから、実は族長が一番下に住んでいるという構造になっています。


     ここから見える、おおよそ10基ほどの風車は、全て揚水風車、つまり風力によって水を汲み上げる風車です。

     地下水ではなくて、城の地下500mにある水源から引き上げた水を、それぞれの風車が棚田の1つ上、1つ上というふうに持ち上げて、最終的にさっきの貯水池のところまで持っていく仕掛けになっています。

    ・・・

     この風景の中には自然に出来たものなんて何一つありません。

     全てナウシカたちの先祖が、生き残るためにゼロから作り上げた土地です。


     たとえば、果樹園の土。

     この土もゼロから作りました。


     セラミックしかない大地を丁寧に選り分けて、この破滅から僅かに残った本物の砂や土を、1粒ずつ探すしかないんですよ。

     これ、本当に。

     そうやって、1粒ずつかき集めて作った昔の本当の砂とか土を、落ち葉とか自分達の排泄物などの有機物と混ぜて、本物の土を何年も掛けて、かき混ぜて寝かせて作るわけですね。


     これ、架空の話じゃないんですよ。

     なんでこういうことを僕がペラペラ言えるのかというと、もう開拓時代のアメリカでは、それが当たり前だったからなんですね。


     開拓時代のアメリカというのは、広いんだけど、作物も何も採れない痩せた土地というのが、どこにでも当たり前にあったんです。

     そんな土地の開拓民というのは、まず土から作るしかなかったんですね。

     石を砕いて、カルシウムとか肥料を混ぜて、落ち葉を混ぜて、自分達の排泄物を混ぜて、とにかく徹底的に耕すことを毎日毎日繰り返すと、何年か後に、ようやっととうもろこしが採れる土地になる。

     日本の農民みたいに、「ここは土地は豊かだ」とか「痩せてる土地がある」というのではなくて。アメリカ人の農民が自分の土地にものすごくこだわって、すぐにライフルとかを出して、隣の家と争いになったりするのは何故かというと、全ての土地というのは “作り上げた土地” だから、なんですね。


     もちろん、カリフォルニアの方へ行くと、何もしなくても、とうもろこしなんか撒くだけで生えるような土地もあるんですけども。中西部の風の強いところというのは “ダストボウル現象” というのが起こって、しょっちゅう表面の土が吹き飛ばされちゃうんですよ。

     そうすると、全く表土がない状態に戻ってしまって、もう一度土を作らなきゃいけない。

     この絶望感がツラくて、中西部のアメリカ人が土が全部飛ばされた時に、カリフォルニアに向かって逃げ出した『怒りの葡萄』という小説とか映画にもなった20世紀初頭の事件があるんですけど。

     そういうことが20世紀の初頭になっても起こるくらい、土というのは、作らなければいけないものだったんです。


     こういう過酷な現実を知っていると、この風景のすごさというのがわかるんです。

     優雅に見える風車も、この内、1つでも止まると、貯水池への供給が止まってしまうんですよ。

     すると果樹園の木も枯れてしまう。


     美しい自然に見えますけども、全てが何十世代もの人達が死ぬまで働いて作り上げた、もう本当に宝石のような土地なんですね。

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