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岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2019/02/05
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今回は、ニコ生ゼミ01月27日(#265)から、ハイライトをお届けいたします。

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 【『アナ雪』主題歌シーンに隠された意味 2 】 怪物と化していくエルサを肯定的に描いた


 では、一番最初です。

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 雪山のロングショットで、雪の女王となる “エルサ” が、1人で雪山を登っています。

 そんな彼女のもとに、カメラがどんどん寄っていきます。

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 英語の歌詞では「The snow glows white on the mountain tonight Not a footprint to be seen.(今夜の山は雪が白く輝いて、足跡は全く見えない)」と歌っているのに対して、松たか子の吹替版では「降り始めた雪は 足跡消して」となっている。

 意味としては、ほぼ同じです。


 この時、エルサは雪山の中をトボトボとマントを引きずりながら歩いていて、振り返って「自分の足跡が残らない」と言ってるんですけど。

 「足跡が雪に消えていく」というのは、「彼女が人間世界で生きていた、これまでの痕跡が消えていく」ということのメタファーなんですね。


 「一生懸命、良い女王になろうとしていたんだけど、もうそれはやめて山の中に入って行く時に、自分の足跡が雪に消えて行く」というのは、「彼女の人間社会の中で持っていた立場とか責任とかが、どんどんなくなって行く」という暗示なんです。

・・・

 彼女は、巨大なマントを引きずっています。

 しかし、本来は雪から自分を守ってくれるはずのそのマントは、今や、雪の中で引きずられて、自分にとって重しでしかない。

 エルサはそんなマントを引っ張って歩いている。


 月の影が後ろに伸びているから、このマントが更に巨大に見える。

 自分自身の責任感、重圧に打ちひしがれて、寒さから守ってくれるはずのマントが、後ろに引っ張っている邪魔者になっている。

 もう、このワンカットだけで名作決定なんですよ。

 これは「エルサの内面が、この時、どんな思いになっているのか?」というのを、絵だけで表現しているんですね。


 失礼な言い方になるんですけど、伊集院さんとか小木さんは、こういうシーン見ても、たぶん、分からないんですよ。

 ピンと来ない。

 「これは演技だ」とわからないんですよ。


 アニメーションというのは、描いてるもの全てが演技なんですよ。

 これが、実写との差。実写において背景というのはあくまで表現の1つであって、演技というのは役者さんの表情とか動き、動作、所作を指すんですけど、アニメーションというのは全てがこれ演技なんですね。

 だから、「なぜ、この方向から光が当たっているのか?」、「なぜ、こんな服を着ているのか?」、「なぜ、これくらいの強さの風が当たっているのか?」というのは、全て演技として見ないとダメなんです。

 それがわからないと「平凡な絵だな」って見えちゃうんですね。


 アニメをナメてはいけません。

 地形や気象、空気、風まで全て思い通りに表現できるからこそ、その全てを演技だと理解していないと、読み違えちゃう。

 普通の人は役者の顔だけ見ちゃうんですけど、アニメはそういう視点で見てはいけないんですね。

・・・

 歌の続きです。

 英語版では「A kingdom of isolation, and it looks like I’m the Queen」、日本語版では「真っ白な世界に一人の私」と松たか子が歌うシーンなんですけども。

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 このシーン、注目すべきは “絶望感” と、あとは “寒そう” というところなんですよね。

 このシーンでは、エルサはまだ寒いんですよ。

 この後、エルサはマントを脱ぎ捨てて、どんどん寒さを感じなくなって行くんですね。


 この歌の全編を通じて行われていることは何かというと、寒さを感じる人間であったエルサが、雪山の中で「少しも寒くないわ」と言う存在になっていく。

 つまり、モンスターになっていく過程というのを描いてるんですよ。

 でも、普通、人間がモンスターに変わっていく時というのは、黒くするものじゃないですか。

 ダース・ベイダーみたいに。

 ところが、『アナ雪』っていうのは逆なんですよね。


 エルサというのを、より美しく、より白い方向へ持って行くから、「モンスターになっている」というのが、みんなには分からないんです。

 そして、エルサが徐々に徐々にモンスターになっていく過程というのを見せていく時に、否定的な歌ではなく、肯定的に聞こえるような歌を歌っているところ。

 ここも新しいところだと思います。

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