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「君は『HUNTER×HUNTER』の凄さを理解しているか?」
「キャラを起てる」っていう言葉があるじゃん。
そのお父さんが作中に出てくるのが18巻くらいなんだよな。
グリードアイランド編のラストに、「ケッ、会ってやらねーよ」みたいなセリフとともに、初めてまともに登場する。
それまでも、チラッと映るシーンはあったんだけど、18巻まではほとんど出てこないキャラクターなんだ。
ところが、このジンというのは、主人公であるゴンがそこまでして会いたいようなキャラだから、やっぱ登場するまでの間に「キャラを立てる」必要があるわけだよね。
こういうのを演劇用語で「聞いたか坊主」と言うんだ。
聞いたか坊主っていうのは、歌舞伎で幕間に小坊主が何人か出てきて、「聞いたか聞いたか」「聞いたぞ聞いたぞ」ということで、観客に状況を説明するシーンを指した言葉なんだけど。
「聞いたか? 四十七士が討入りするそうだ」「聞いたぞ。なんとすごいことだ」みたいにね。
これはマンガでもドラマでもよく使われるよね。
関係ない登場人物とか一般人みたいな人物が出てきて、舞台設定をダーッと喋ってくれる。
ウテナも、「聞いた聞いた?」というやつから始まるんだけども、あれも聞いたか坊主の応用というか、用語のままに使うような形でやってるね。
要するに、ここでのカイトのセリフで、読者に対して「ゴンのお父さんであるジンの凄さ」というのを説明してるんだよね。
でも、ここでのカイトの「ジンさんに認めてもらうための最終試験が、彼を探し当てることなのさ。これがどんな狩りより難しい。彼は俺の知る限り最高のハンターだ」というセリフ。
これ、セリフとしては大したことないんだよ。
サラッと読める。
そうしたら、彼の頭の中に「最終試験は彼を探し当てること。これがどんな狩りより難しい。彼は最高のハンターだ」というさっきの言葉が思い浮かぶ。
ジンの写真のクローズアップを徐々に挟みながら、写真に写ったジンの瞳の中の光にゆっくりとカメラが行く。
この時のゴンの視線の方向とジンが写真の描写から、「写真の中のジンがゴンを見つめ返している」ということがわかるんだよね。
こういうシーンの中で、さっきは大したことのなかったカイトのセリフが繰り返されることによって、「すごく良いセリフ」みたいに活きてくる。
「彼は最高のハンターだ」。
これ自体は大したセリフじゃないんだよ。
でも、こういう繰り返しの中で言われると、めちゃくちゃ格好良く聞こえてくるんだよな。
良いセリフっていうのは、良いテキストを作ることじゃないんだよ。
それまでのシーンでは大した事がなかったセリフを、モンタージュして映像的に並べることによって、ちゃんと良いセリフに作り上げるという事なんだよな。
で、何が言いたいかというと「こういったマンガ表現をいとも容易く使いこなす冨樫の力量の凄さ」だよね。
他の作家は絶対にこんな事をしないんだよ。
俺が「『HUNTER×HUNTER』の新作は、どんなに待たされようとも、どんなに適当な絵であっても許す」って言ってるのは、冨樫義博という作家が「マンガ界が生み出した奇跡」のようなやつだと思ってるから(笑)。
だから、「もうちょっと好きにやらせてみようよ」って思ってるんだ。
こんなことが出来るやつって、本当にいないんだよな。
「え?!それってどういうこと?」「そこのところ、もっと詳しく知りたい!」という人は、どんどん、質問してみて下さい。
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コメント
コメントを書く正直ゴンは主人公としての役割果たして無いし、途中からちょっと人間味なくて気持ち悪いし……
新章までのハンターハンターはキルアの物語だったと思ってる
レベルE読んで土下座したくなった。冨樫と久井諒子の漫画には勝てない、マジで無理。漫画力が違いすぎる。
富樫は幽白で才能開花したとは思ってるけど、一番輝いてたのは担当にラブコメやれと言われたのを曲解して作り上げたてんキューの時代だと心から信じている。
それにしても富樫は今まで、どんなエンタテイメントをみてセンスを磨いてきたんだろね