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岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2019/03/15
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今回は、ニコ生ゼミ03月03日(#271)から、ハイライトをお届けいたします。

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 【 『もっと言ってはいけない』で語られる残酷な真実 3 】 人類の大半はロボット以下


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タオルくん:
 この本の続きだよ。『もっと言ってはいけない』橘玲、新潮新書。
 この本の中には「日本人の3分の1は日本語が読めない」って書いてあるんだ。本当かな?

岡田:
 うん。
 これは本当にそのまま書いてあるんだ。

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 この「3分の1は日本語が読めない」というのは、去年の夏にこの番組でも取り上げた新井紀子さんの『AI vs.教科書が読めない子供達』が元ネタになっています。

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 詳しくは、ニコ生岡田斗司夫ゼミの2018年8月5日号、タイトル番号242番を見てください。そっちの方ですごく詳しく話してます。

・・・

 その内容を、今、ちょっとまとめると。

 “国際成人力調査” というのがあるんです。

 24カ国で15万人以上を対象にした調査だから、かなり正確だと思ってください。


 その中に “知識社会” という言葉で出てきます。

 「知識社会に適応出来る能力を判断する」というのが、この国際成人力調査の目的です。

 
 たとえば、この国際成人力調査のレベル3の問題は「本のタイトルと著者名とを一致させる」というものです。

 これ、クイズじゃないんですよ。

 「こんな内容の本を探せ」と言って、図書館のデータベースにアクセスさせて、その本のタイトルを当てるというようなもの。

 たぶん、この放送を見ている人だったら誰でも出来るんですよ。


 レベル4は「本の概要を書いた100文字の内容と、『これはどんなに本ですか?』という問いとを一致させる」というやつで、これも出来て当たり前に聞こえるテストなんですけど。

 でも、実は日本人は30%以上の大人が、レベル3の問題が出来ないんです。

 レベル4に至っては「76%の人が出来ない」と言われています。


 もうちょっとわかりやすい数学関係の問題でいうと。

 立方体の展開図ってあるよね?

 「サイコロみたいな形を展開したら、どういうふうになるのか?」これがレベル3なんですよ。


 レベル4は単純な棒グラフの読み取り。

 たとえば「どの数値がどれより大きいか?」というような問題なんですけど。

 これも、日本人の36%がレベル3の立方体の展開図が読めないんです。


 さらに「レベル4を間違える人は80%を越える」というデータが出ています。

 単純な棒グラフすら読めない人が多いんですね。

・・・

 さっきも言った通り、たぶん、ニコニコ動画にしろYouTubeにしろ、この放送を見ている人は、ほとんどがレベル4を間違えないんですよ。

 というか、僕の話の内容を面白がって見たり聞いたり出来る人というのは、そもそも、今言った80%の人たちが自分の周りに あんまり いない人が多いんですね。

 なので「え? そんなはずないよ」とか、「そのデータ、どこかおかしいんじゃないかな?」というふうに思っちゃうんです。

 「自分の周りにいる、普段、自分が話しているような頭のいい人たちが平均的な日本人だ」というふうに思っちゃうわけですよ。


 でも、この本の趣旨は「だから今の日本はダメだ!」ではないんですよ。

 まず、日本は今言った成人力調査で世界トップの成績なんですよね。

 つまり、世界中の人たちというのは、8割以上は知識社会というのに適応していないんです。


 そのテストの中のレベル4の問題に「ネットで自分の家の近所の会議室を探して、必要フォームに記入して申し込み作業を行う」というのがあるんですけど、世界中の大人のほとんどには、これが出来ないんですよ。

 これは「パソコンが普及していないから」とか、そういうことは関係ないんです。

 そういうのを全部ならした上でのテストでの結果なんです。


 さらにこれ、「最近は~」じゃないんですよ。「最近、みんな、どんどんネットばっかり見てるからダメになってきた」という話でもないんです。

 国際的に見て、成人力は年々徐々に上がってきてるんですよ(笑)。

 つまり、世界的に人間の知能は上がって来てるんだけど、8割の人がこういったことが出来ないわけなんですね。

・・・

 つまり、どういうことかというと「昔から、人間というのは大多数がバカだ」ということなんですよね。

 「じゃあ、そんな中で、なぜ、みんな仕事が出来てきたのか?」ということが気になりますよね?

 
 この本の中では、「昔から人間の大部分はバカというか能力がなかったんだったら、どうやって仕事をしてたんだろう? 昔はどんなふうになっていたんだろう?」という問いへの答えとして、人間の無意識の力 “アイオワギャンブル課題” というのを挙げています。

 このアイオワギャンブル課題について、この本の中での説明をそのまま引用します。

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 テーブルの上に4つのカードの山が置かれ、参加者はなんの情報も与えられずに、そこから順にカードを引いていく。

 AとBの束のカードは大儲けするか大損するかのいずれかで、ゲームを続ければ続けるほど、全体としては損をする(ハイリスク・ハイリターン)。

 CとDの束のカードは儲けも損も小さいが、続ければ続けるほど確実に儲けられる(ローリスク・ローリターン)。

 ほとんどの参加者は、4つの束すべてを試しているうちに、CとDの束からカードを引き、AとBの束のカードを避けるようになる。

 だが、自分がなぜそのような判断をしているのかを説明することはできない。


 そこで研究者は、参加者の皮膚電動反応(指先のわずかな発汗)を計測してみた。

 すると、参加者がAやBの束からカードを引こうかどうかと迷っているとき、皮膚電動反応に顕著な増加がみられた。

 これは緊張や警戒の合図で、なんらかの方法で脳から指先に「この選択は間違っている」という信号が送られていることを示している。

 それが再び脳にフィードバックされて、危険なカードを避けるという選択をするのだ。

 ――意識がトランプの束のちがいに気づく前に、無意識はAとBの束が危険であることを「直感」によって知らされていた。


 複雑で危険な環境で生き延び、より多くの子孫を残すためには、脳は世界を正確に評価し、瞬時に決断しなければならない。

 だが私たちの意識はほとんどの場合、どれがいちばんよい選択かを見つけ出すにはあまりにも遅すぎる。

 進化論的にいうならば、私たちのこころは、面倒なことを無意識に任せることでもっとも効率的に働くように設計されているのだ。


 この無意識の知能を「暗黙知」と呼ぶならば、家内工業的なものづくりでも、多数の労働者が複雑な連携の作業を行なう工場でも、かつてはこの「(意識出来ない)職人の知恵」が重要な役割を果たしていたはずだ。

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 つまり、人間というのには「なんでそうなのか?」を正しく理解する以前に、正しい答えを無意識の中で選ぶ機能がついている。

 それを、皮膚とかの方が先にわかっていて、汗をかいたりして、それが脳に伝わってくることで「あ、これ、ヤバいんじゃないか?」という嫌な予感を受け取る。

 だから「それは違うよ。なぜかは説明はできないけど。いや、なんとなくそうしたら、上手くいったから、それでいってるんだけどよ」というような、言葉で説明できないような判断で動いていたので、さっきの国際成人力テストのような頭脳を使うようなテストはダメであっても、“直感” とか “なんとなく” で、人間というのは大部分の問題を解決……ではないんだけど、乗り越えるというか、避けて生きていくことができた。

 しかしですね、重要なのはここからです。

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 だが知識社会が高度化するにつれて、職人の知恵はマニュアル化され、アルゴリズム(プログラム)に置き換えられていった。

 マニュアルができれば、労働者はそれに従って定型化された作業をすればいいのだから、人件費の安い新興国に工場を作った方が、利益が大きくなる。

 プログラム化が可能な仕事はそもそも人間を使う必要はなく、機械(ロボット)に24時間365日やらせればいいだけだ。

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 この本の中で言っている事は、どういうことかというと。

 「どの国も、国民のほとんどは、考えることとか読むことが不得意な人で出来ている」ということなんですよ。

 それは、どの時代でも同じ。

 ところが “人間は無意識の勘” というのがあるので、それでもなんとかやってきた。

 しかし、そういう普通の人間の普通の無意識の勘というのは、どんどんAIによって解明され、仕組み化されていく。

 その結果、仕事というのはロボットやAIのものに切り替わりつつある、という事なんです。

・・・

 “バカッター問題” というのがありますよね?

 「寿司屋とかコンビニで働いているアルバイトが、なんか馬鹿なことをして、それで親会社が被害を受ける」ということが、よくあるんだけど。


 そういう回転寿司屋さんとかコンビニがこれまで考えていたのは「より優秀な人材を雇うことで、こういう問題に対抗しよう」ということだったんです。

 より常識がある、まともな人間を雇うことによって、対抗しようとしてるんだけど。


 ところが、「そこを読み違えただけで、一瞬で株価が下がってしまう」というようなことが分かってきた。

 たぶん、「人間を雇うリスクの方が馬鹿みたいに高い」ということに、そろそろみんな気が付いてしまった。

 だから、ファストフードやコンビニの店員は、たぶん、これからどんどんロボットになるでしょう。

 倉庫で働くのも宅配便の配送をするのも、運転手も、どんどんロボットに切り替わっていく。

 それはなぜかというと「その方がリスクが少ないから」です。

 「人間を雇って、そういった個人の曖昧な勘というもの、つまり常識とか良識に頼るよりは、画一的に動くロボットの方がマシだ」ということになってしまう。


 もちろん、その管理者は人間がやるんだろうけども、それもおそらく “管理のコツ” という無意識がアルゴリズム化されてプログラムされるようになると、どんどんロボットに置き換わってしまう。

 この「AIに仕事を奪われちゃう」ということについては、よく「その結果 “マックジョブ” しか残らなくなる」みたいに言われてたんですけど。

 マクドナルドの店員みたいなものこそ、「人間を雇うことはリスキー過ぎるからロボットに変えよう!」というような社会になって行くんです。


 そこで、今 “ロボット税” という発想が生まれているそうです。

 これ、何かというと「ロボットを使ったり、ロボットを買ったりして働かせた会社や企業から税金を取立てて、それを、日本にも7割いる知的社会に順応できない人たちに対して “ベーシック・インカム” として配っちゃおう!」という話です(笑)。

・・・

 ベーシック・インカムというのは、先週も話しましたよね?

 国民全員に、毎月問答無用で与えるお金のことです。


 たとえば、月6万円としましょう。

 すると、普通に生きているだけで、生まれてから死ぬまで、毎月毎月6万円貰える。

 なので、こういう人間は貯金をしなくなる。


 だって、貯金して、わざわざ我慢しなくても、生涯に渡ってお金を貰えるんだから。

 毎月、6万円 全部を使うようになるんですよ。

 すると、社会の経済は上手く回りだす。


 女の人の場合、妊娠して出産した瞬間に、これが12万円になる。

 まあ、妊娠した時に渡してもいいんだけど。

 6万円×2で12万円になる。

 子供を2人生んだら、3人分だから、18万円。

 それを毎月毎月貰えるようになるんだから、これでもう人口問題も解決。

 人口はあっという間に増えるに決まっている。

 こういう考え方なんですけども。


 このベーシック・インカムというのは、「仕事を任せられるような人間は、全国民の3割だけ」という、嫌な事実に基づいているわけですね。

 「3割の人に働いてもらって、彼らとロボットを使う法人から税金を頂く」という考え方に。

 「そのお金を集めて、残り7割にばら撒くから、あなた方は好きなことをして、買い物をして、食い物を食べて消費して、そしてこの社会を動かしてください」と。

 なんかね、ベーシック・インカムって、こういうふうに結構エグい考え方なんですよ。

 だから、ベーシックインカムに賛成している人達って、実は、よくよく見たら、基本的にITビジネスとかで時代の先の方に行ってる人が多いんですよね。

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岡田:
 タオルくん、何かな?

タオルくん:
 ねえねえ岡田、働かなくても生きていけるって、それは天国なんじゃないの? なんで岡田はその天国を、なんかちょっと嫌そうに言ってるの?

岡田:
 うーんとね、このベーシックインカム社会が天国なのか、それとも奴隷制なのか、よくわからないからなんだよ。

 「知識社会に適応できるかどうか」についても、さっき話した “生まれついての知能の差” というので決まってしまうので、これ、実は新たな貴族制に近いんじゃないかなというふうに思ってるんですわ。

 これ、納得してくれるかな?

 難しい話は、お前、不得意だよな?

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