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岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2019/03/23
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今日は【岡田斗司夫アーカイブ】から選りすぐり 2016/07/31放送の『ニコ生ゼミ』
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 テレビの『ウルトラマン』が映画の怪獣に勝った1966年
 

 『シン・ゴジラ』からちょっと横道にそれてしまうんですけども、今日は「日本怪獣映画の黄金時代1966年」というのを考えてみたいと思います。

 『ゴジラ』と平行して考えるために。


 1966年がどういう年だったかというと、『ウルトラQ』が始まった年であり、日本の人口がやっと1億を突破した年。

 あと『笑点』が放送を開始した年ですね。

 あとウォルト・ディズニーが死んだ年。

 この1966年の12月31日までに核爆弾を爆発させた国は、核保有国として認められたという「核拡散条約」の締結された年でもあります。

 この年が、僕は、日本怪獣映画の最後の栄光の年だったなと思ってるんですよ。


 その前の1965年というのは、『フランケンシュタイン 対 地底怪獣』という、『ゴジラ』以外を模索していた東宝の映画です。

 同じ65年の11月には『大怪獣ガメラ』というのが公開されて、東宝以外の怪獣映画の路線がスタートしました。

 それで1965年の12月には『怪獣大戦争』というのが公開された。

 
 この年の東宝というのは、毎年、夏とお正月と、二回怪獣映画をやってたんですね。

 本当に黄金時代でした。

 それが1965年です。


 あけて1966年。

 状況が全部、変わってきます。

 それまでの怪獣映画というのは上りつめて、年に2回やって、他の会社も怪獣映画をやりだした黄金時代だったのが、今は なんで庵野くんが『シン・ゴジラ』をやるまで12年間も『ゴジラ』を作られなくなったのか?というタネが、この1966年から始まります。


 まず一番デカイのが、1966年の1月。『ウルトラQ』のテレビ放送が始まります。

 ウルトラQというのは、テレビの企画の時のプレゼンに「毎週『ゴジラ』が出ます」って言ったそうですね。

 円谷プロが。


 つまり、これまでは年に一回か二回、映画館でしか見れなかった大怪獣が、毎週毎週、お茶の間のテレビでタダで見れます。

 だったらもう、見ないはずがないでしょうが。

 ということで、ウルトラQの放送が始まってしまう。


 確かに、その通り。

 怪獣ブームというのがワーッと巻き上がったんですけども、その怪獣ブームというのは、すでに映画館よりも、テレビのほうに座を移しつつありました。

 そりゃそうですよね。

 だって、毎週テレビで見れるわけですから。


 それで同じ1966年の4月に『ガメラ対バルゴン』と『大魔神』という2本立てが公開されます。

 もう本当に怪獣ブームの頂点ですから。映画2本立てで、2本とも新怪獣なんですね。

 『ガメラ対バルゴン』というのは、その前の年に大ヒットしたモノクロ映画・白黒映画のガメラを、予算を山ほどかけて2時間以上にした映画なんですね。

 それと同時に『大魔神』という時代劇の中に巨大な魔人が出てくるという特撮映画を作って、大映が公開しました。

 これも、ものすごくヒットしました。


 ところが同じ1966年の4月。

 『ガメラ対バルゴン』と同時期に『サンダーバード』が放送を開始してしまいます。

 『サンダーバード』というのは同じ特撮でも、人間ドラマの部分でさえ特撮なんですね。

 つまり怪獣映画というのは、前半でも話したとおり、怪獣が出てくるシーンは子供たちがワッと見るんですけども、人間ドラマのシーンになってくると ちょっと退屈してくるんですよ。

 でも『サンダーバード』っていうのは、全編人形だから。全編特撮なんですね。

 それがカラーの品質が良い映像で、NHKで、また毎週放送されちゃうんですね。

 それでやっぱり映画館から、どんどん人間が取られていってしまいます。


 それで7月には『ウルトラマン』が放送を開始します。

 『ウルトラQ』と『ウルトラマン』の差っていうのは、『ウルトラQ』はモノクロで『ウルトラマン』はカラーというのもあるんですけど、一番大きい差は、怪獣映画とかホラー映画を見やすくしたことなんですね。

 つまり、ただ単に「怪獣が出てくる。どうしたらいいんだろう?」という「恐怖」とか「混乱」を描くのが『ウルトラQ』だったのに対して、『ウルトラマン』は、それに対して「勝つ」「負ける」という勝負の世界を入れたんですね。

 銀色の巨大な宇宙人の『ウルトラマン』が、怪獣と戦うことによって、あきらかに応援する対象に、感情移入をする対象に、そして一番大きいのは子供が見て模倣をする対象というのを出せたことなんですよ。

 ここに至って、テレビの怪獣映画と、映画館で見る怪獣映画の中に、大きな差が出来てしまった。
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