20. ノーゴッド
団長(Vo) Kyrie(G)
Shinno(G) 華凛(B)
K(Dr)
(文=山口哲生/撮影=大塚秀美)
それはオープニングでの出来事。フロアとステージを隔てるようにかけられた斜幕が上がりきる前に、団長は絶叫した。
「あーーーかーーーさーーーかーーーーーーー!!!!!!!!!」
その尋常じゃないほどハイテンションな第一声に、このライヴに賭ける5人の気迫がまじまじと伝わってきた。そして、この日のライヴが、間違いなくとんでもないことになることを確信したのだった。
シングル「神髄 -FRONTIER-」ではヘヴィ・メタル、「神髄 -THE POWER-」ではハード・ロックと、バンドのルーツ・ミュージックを解釈、提示したコンセプト・シングルを引っ提げ、“ONE MAN TOUR -2013 AUTUMN-【神髄】”を敢行したNoGoD。シングルで提示した2つの軸を公演ごとに切り替えるという異例のセットリストで全国を廻ってきた彼らだったが、ツアー・ファイナルとなった12月2日の赤坂BLITZは、「今日は全然違うことをします!」と団長がMCで宣言した通り、その2つの軸が共存する形のセットリストになっていた。
前半戦は「FRONTIER」を中心としたヘヴィ・メタル・ゾーン。バンドの超絶技巧が唸りをあげたこのブロックは、王道のメタル・チューンを貫禄たっぷりに轟かせた「愚かな王」など、フロアにひしめきあうオーディエンスにヘドバンの嵐を巻き起こし、ゴリゴリに攻め立てる。そこからインストナンバー「この雨の向こうに」を挟み、後半戦は「THE POWER」を中心としたハード・ロック・ゾーン。コール&レスポンスを交えた「Love Song?」や、タオルが乱れ舞う「鐘を鳴らせ」など、オーディエンスとの掛け合いによって、フロアの一体感を高めていった。ラストの「神風」に至るまで、老いも若きも男も女も、キッズもメタラーもバンギャルも、ここ昨今の団長のメディア露出で増え始めた初参戦者も、バンドの苦楽を共に噛み締めてきた年季の入った信者達も、片っ端から徹底的にブチあげまくり、壮絶な勢いで一気に駆け抜けていった。
そんなアグレッシヴな演奏が続く中でも、全身から「楽しい!」というエネルギーを発し続けながらプレイしている5人の姿が印象的だった。満面の笑みで鬼のようなグルーヴを生み出す華凛とK。超絶テクニックで楽曲を構築するだけでなく、激しいパフォーマンスでも魅せるKyrieとShinno。そして、団長は暑苦しいほどの熱量を放つトークと(褒めてますよ)、磨き上げられたハイトーンヴォイスをもって、オーディエンスと共にこの瞬間を楽しんでいる。そんなポジティヴなエネルギーを放つステージでありながら、終盤に披露された、深淵ここに極まれりなヘヴィ・スロウ・チューン「慰みの空」が、とにかく凄まじかった。それまでの笑顔に満ちた世界を、たった一瞬で絶望しか存在しない世界の果てに塗り替えたアンサンブルに、ただただ圧倒。この8年間で積み上げてきた彼らの表現力を存分に味わうことができた。
しかしそもそもの話、今回のツアーは、なぜ2つの軸を置いた構成にしたのだろうか。団長は言う。
団長「確かに“ハード・ロックってよく分かんないなぁ”とか、“ヘヴィ・メタルはうるせーな”とか、いろんな人達がいると思うんだよ。でも、いろんなジャンルの音楽を見てて思ったんです。素晴らしい音楽にジャンルは関係ない。それを知ってほしかったんだよ。NoGoDのやる音楽、エンターテイメントを愛してくれる方がこれだけ集まってくれたのは本当に嬉しいです。ありがとう!」
NoGoDは「ヴィジュアル系ハード・ロック/へヴィ・メタルバンド」である。ただ、ヴィジュアル系なのか、ハード・ロックなのか、ヘヴィ・メタルなのか。そんなことは、彼らはもうとっくにどうでもいいことなんだと思う。ただ今回、そんなNoGoDが生み出す音楽を、敢えて2つのブロックに分けることで、結果的に彼らの音楽の特異性を際立たせることになった。そして、そうやって自分達の音楽を俯瞰で見るアプローチができるようになったのは、確実に今の自分達の長所がハッキリと見えていて、それに揺るぎない自信がある証拠だと思う。NoGoDが生み出す音楽は確かに複雑かもしれない。しかし、彼らのハートはとてもシンプルである。音楽が好きで、バンドが好きで、自分達に共感してくれるファン達が好きで、とにかくもう、今のNoGoDが大好きなんだという気持ちがビシビシと伝わってくるステージだった。
団長「今日ひとつだけ思ったことがある。俺達は間違ってなかった!」