退職金は、趣味や交際費より退職後の生活費に充てるという人が増えています。最大の理由は、年金支給開始年齢の引き上げによる「空白」期間です。会社によっては、希望すれば原則65歳まで働けますが、労働時間や待遇などがそれまでと同じとは限りません。そんな不安を少しでも軽減するため、40代から考える退職金の運用方法を解説します。
退職後の想定が大事 余裕のある生活か?
60歳定年のYさんの場合、退職後に起こりそうな事態を想定してみましょう。Yさんは、子どもたちは独立して夫婦だけの生活です。総務省の家計調査などで見ると、一般的に60歳以降に必要な1世帯の生活費は月約25万円です。繰り上げ受給なしの場合を想定すると、65歳の年金支給開始までの5年間で1,500万円となります。
住宅ローンが残っていて退職金の一部で完済しようと思っていたところ、思いがけない事態は起こります。老親です。自分が若い頃は親も元気で考えもしませんでしたが、退職前後は親に対するサポートがある程度必要になってきます。Yさんの場合は介護が重なり、後々相続問題も浮上しました。
相続税を支払うことになって、タンス預金の現金が見つかって頭を抱えたYさん。相続税は現金が一番高くつきます。知っていれば、生前に贈与するなど対策は十分に打てたはずでした……。
40代は投資を考えるうえで理想的な時期
こうした事態を避けるためにもサラリーマンなら比較的早い段階から相続税対策や資産運用の準備をしたいものです。管理職に昇進する40代前後が、理想的なスタート時期です。
資産運用については、株式・投資信託や債券から不動産までさまざまありますが、運用方法は次の3つを基本にすると良いでしょう。
1. 流動性が高くいつでも現金化できるもの
2. (全額を)集中投資しない
3. 長期で保有する
この長期で保有するものの一つに不動産があります。長期で安定的な収入を得られるとしたら、ぜひ検討したいところです。しかもサラリーマンなら、ローンを組む際にも本人の「信用力」がある在職中がいいでしょう。銀行のローン審査では、個人の信用情報や勤務先、勤務年数、健康状態などが主にチェックされるため、退職後や転職直後などは不利になります。
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不動産投資の実績を作っておく
中古マンションの区分所有者として不動産投資の実績を作っておけば、定年前後はさらにチャンスを狙えます。退職金を見込んで物件を増やすなどの計画も立てやすいでしょう。投資先は、区分マンションや一棟アパートなど広く視野に入れ、立地にこだわって検討したいところです。部屋が埋まらない空室リスクは常に考えましょう。
不動産投資が初めてで不安な場合、不動産会社がオーナーに変わって、賃貸マンションなどを借り上げる「サブリース」という仕組みもあります。空室の有無に関係なく家賃を保証してくれて、管理業務などの対応もすべて任せられます。
サブリースを使う場合は、入居者探しや督促、入居希望者に対する内見など、空室対策もカギとなります。手間のかかる業務をオーナーに代わって行い、不安の種を取り除いてくれます。一般的に家賃保証は、満室時の収入に対して70~90%程度が保証される仕組みですが、この減額部分がこれらのコストと考えていいでしょう。ただ、家賃の見直しは定期的にあるため注意しましょう。
不動産投資はリスクをどれだけ軽減できるかで、長期的な資産形成につながります。そのためにも、経営的な観点から契約する際には、空室が続いたときの条件や、見直し時期、管理の内容などをじっくり検討する必要があります。
40代のうちなら、体力、気力も十分のはず。日頃からお気に入りのエリアにターゲットを絞り、マンションの立地や設備、周辺の環境、賑わいなどをリサーチするのも良いでしょう。投資勘を磨くこうした行動が、いざ退職金を運用する際の隠れた武器になるのです。