【政策環境の違いと経済効果】
1964年の政策的な環境は高度成長期の真っ最中でした。特に設備投資主導型の経済成長をしていた時期で投資が投資を呼ぶと重なります。その為、オリンピック関連需要は、さらにそれに上乗せをしてGDPを押し上げる効果を持っているように思えます。
しかし、高度成長期前半のこの時期は、固定相場制度の下にあって、外貨準備の少なさに泣かされていた時期でした。景気が良くなると輸入が増えますが、その支払いがもたらす円の減価圧力を相殺し、円の固定相場を守るために、外貨準備を使用して外国為替市場にドル売り介入をせざるを得ませんでした。しかし、外貨準備は少なかったため、これには限度があり、金融引締めを行い景気を抑制しなければならなくなってしまいました。これが「国際収支の天井」といわれた経済成長への制約要因です。
このような政策環境にあったので、民間需要がただでさえ強い中、オリンピック関連需要の増加がネットでGDP全体を押し上げる効果を持ったとは考えにくいと考えます。オリンピック関連需要の増加は顕著でしたが、「国際収支の天井」の下では、その代わりに他の需要が抑制されてしまった可能性が高いくなっております。
その経緯から2020年の政策的な環境はどうなるのでしょうか。高度成長期と違って今は変動為替相場制度によって経済が動いています。変動相場制度の下では、本来ならば、オリンピック関連需要は、それが新たな資金需要を生み、金利の上昇圧力をもたらします。そうであれば、為替増価(円高)要因になるので、外需が減少し、オリンピック関連需要を相殺するようなメカニズムが働くはずです。いわゆるマンデル・フレミング効果です。したがって、ネットでは、GDPの増加をもたらすような効果はないように見えます。
しかし、現在、イールドカーブコントロール付きの量的・質的金融緩和政策(YCC-QQE)が採られており、長期金利が低水準(現在はゼロ%)に維持されています。これは消費者物価指数の上昇率が2%に達するまでは継続されるというコミットメントの下で行われています。現在の消費者物価指数の動向からすると、2020年も継続して実施されている公算が強いと考えられます。
そうであるとすると、オリンピック関連需要があって、金利上昇圧力があっても、YYC-QQEによってそれは抑制されるので、為替増価も、外需の減少も生じないことになります。つまり、YCC-QQEが実施されているであろう2020年の政策環境の下では、オリンピック関連需要によるGDP押し上げ効果が発現することが期待できるのです。
こうして考えてみますと、2020年東京オリンピックの経済効果は世間一般的に言われているよりも期待して良いように思えないでしょうか。
参照:公益社団法人日本経済研究センター
【オリンピックのレガシー】
今回は、オリンピックの経済効果について挙げてみました。対象としたのは、オリンピックまでの準備期間中及び開催期間中において支出される直接経費・間接経費に伴う経済効果です。
しかし、この効果は、オリンピックとともに終焉します。それに伴い経済活動が落ち込み、景気が悪化してしまう懸念はあります。前回、1964年の東京オリンピックでは大会が開催された10月を景気の山として、いわゆる「昭和40年不況」に陥ってしまいました。
このようなことを防ぐためには、オリンピックに伴う需要創出が消滅しても持ちこたえるような強固な経済を作り上げておく必要があります。オリンピックのレガシーが論じられており、それはえてしてオリンピックの競技施設のオリンピック後の活用の問題などに焦点が当てられがちです。しかし、経済的な意味で考えると、オリンピック後にも持続するような需要創出こそがオリンピックに求められているレガシーなのではないかと思います。
参照:公益社団法人日本経済研究センター
【オリンピックの意義】
オリンピックがおこなられる事により、東京では湾岸のインフラ整備や再開発が進められてきています。
次回はその湾岸にスポットを当てて需要の創出にどれほどの一役を担っているのか検討してみたいと思います。
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