いよいよ景気回復傾向がはっきりしてきた。内閣府が発表した2013年1~3月期の成長率は実質で前期比0.9%(年率3.5%)、名目が0.4%(同1.5%)成長である。内訳をみると、個人消費の伸びが目立つ。
 平均株価は15000円台を突破した。株高効果が次第に消費者に及んで、自動車や外食、高級品などに財布のひもが緩んできたのは間違いない。やがて夏のボーナスが出ると、明るい雰囲気はさらに広がるのではないか。
 日銀の金融緩和に続いて、2013年度政府予算も成立した。アベノミクス第1の矢と第2の矢はすでに放たれた。とくに第1の矢(金融緩和)は上手くいきすぎて、天高く飛び出した矢はもはや姿も見えないくらいだ。

「転向」し始めたエコノミストたち

 株高が日本経済に悪影響を及ぼす訳もなく、これまでアベノミクスに批判的だった経済学者やエコノミストたちも最近、バタバタと「転向」する例が目立っている。「いつまでも批判していても商売にならない」と思ったに違いない。
 学者やエコノミストというのは、そこそこ名が売れていれば、必ず講演に声がかかる。そこで「アベノミクスはだめだ」なんて言ったって、聞いている聴衆(企業経営者が多い)のほうがみんな株で儲けたりしているのだから「この先生は何を言ってんだ」という話になって、たちまち商売上がったりになってしまうのだ。
 論より証拠。現実を無視した空論を吐いていても、世間からそっぽを向かれるだけだ。

 その点、新聞は感度が鈍い。なぜかといえば、新聞記者というのは読者の反応を意識して記事を書いていないからだ。私も新聞記者のはしくれだから、よく分かる。別に読者の現実感覚を無視して記事を書いたところで、自分の給料に響くわけではない。
 読者やスポンサーの気持ちを気にするのは、販売や広告の仕事。「オレたちは天下国家を語るんだ」なんて胸を張っていれば、済んでしまうのである。だから政権が正しい政策を展開しようがなんだろうが、とにかく「政府にケチをつけるのが仕事」みたいな話になる。
 そう考えると、ケチつけに終始している一部の記者たちより、世間の感覚を気にして転向した学者やエコノミストたちのほうが、よほどマシかもしれない。言論市場でもマーケットが機能している証拠である。