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〔PHOTO〕gettyimages
アベノミクス・第3の矢に続く「第4の矢はないのか」という議論が盛んだ。先日、出演した読売テレビ『たかじんのそこまで言って委員会』でも「あなたが考える第4の矢を提案してください。ゲストの安倍晋三首相がグランプリを決めます」という企画があった。
そこで、今回は「第4の矢」を考えてみる。
その前にまず第3の矢、すなわち成長戦略だ。安倍内閣は6月14日に日本再興戦略(詳しくはこちら。PDFです)と経済財政運営と改革の基本方針(いわゆる骨太の方針、詳しくはこちら。PDFです)を閣議決定した。
この2つの文書はセットになっている。前者が第3の矢に相当し、後者は戦略のエッセンスも含んでいるが、主に財政政策について基本的な考え方を記している。
両方合わせて計130ページと大部だ。各メディアは結構なスペースを割いて報じたが、さて全文を読んだ記者がどれだけいるかとなると、実はほとんどいないのではないか、と思えるような分量である。
130ページの書類の中から浮かび上がるのはオープンデータ
この手の政府文書は発表前に記者向けの事前レクチャーがある場合もあるし、発表から数時間で原稿の締め切りに間に合わせなければならない場合もある。後者だと、ゆっくり読んでいる暇はない。ざっと斜め読みして、ポイントだけに絞って、とにかく原稿を出す作業を迫られる。
すると、当然ながら重要だが書き切れなかった、というか読み落とした部分が出てくる。実は、そういうところに面白い部分もあったりするのだ。
私が今回、紹介したいのもそういう部分である。それは何かというと、オープンデータについてだ。
日本再興戦略は「世界最高水準のIT(情報技術)社会の実現」を掲げ、その中で「オープンデータやビッグデータ利活用の推進」をうたった。
ご承知の読者も多いと思うが、オープンデータとは政府が保有している膨大な公共データを民間に開放して、新しいビジネスの創造や生活の利便向上に役立てる、という構想だ。
戦略は2015年度中にデータセット1万以上という世界最高水準の情報公開を実現する目標を掲げている。民間にデータを公開する一方、政府情報システムのクラウド化を進めて、今後5年間で約1500の政府情報システムを半減し、8年間で運用コストを3割圧縮するという。
これだけ読めば、結構な話だと思う。
本来、政府が集めた情報はもともと国民のものなのだから、個人情報とか安全保障などに支障がない限り、基本的には国民が自由に参照し、可能ならビジネスにだって活用できるようにすべきである。
オープンデータは欧米では経済活性化にきわめて重要と目されている
欧米では、オープンデータさらにオープンガバメントは単なる情報公開にとどまらず「経済活性化にきわめて重要」という認識が強まっている。6月21日公開のコラムでは、先の主要国(G8)首脳会議で採択されたロックアーン宣言でオープンデータの重要性が強調されたことを紹介したが、実はそれとは別に、もっと具体的な「オープンデータ憲章」が会議で採択されている。
外務省は当初、ホームページで憲章の日本語訳を公開していなかったが、私が26日付東京新聞「私説」というコラムで「憲章の日本語訳をネットに公開することから(オープンデータを)始めてほしい」と注文したら、翌27日になって概要の日本語訳を載せたようだ。
ようだ、というのは、私がコラム掲載前に外務省ホームページをチェックしたときは日本語訳も英語の原文も掲載されていなかったのに、いまになったら掲載されている。それも「6月18日」というサミット当日の日付入りだ。ううん???
こんなことがあるのかと思って、ツイッターで関連情報を調べてみたら、ツイッター上では27日付で「外務省が和訳版を公表」というツイートが流れている。公開日をいちいちチェックするほど私は暇ではないが、どうやら後で公開したけど、日付はサミット当日にしておいたという話である「ようだ」。
ま、それでもいいだろう。ないよりましだ。
オープンデータの趣旨は、ともかく政府が持っている情報はなんでも「生のデータセット」で公開し、民間が自由に使えるようにするという点にある。これに限らず重要な文書は日本語訳が間に合わなかったら、ポイントだけでもいいからすぐ紹介して、英語の原文へたどり着けるように工夫してほしい。
そこで、憲章の内容である。
憲章は「オープンデータがなぜ重要か」に始まって、オープンデータを進めるうえで5つの原則を指摘した。それは「デフォルトとしてのオープンデータ」「質と量」「だれでも使える」「改善した統治のためのデータ公表」「技術革新のためのデータ公表」である。
宝の山を掘り当てるのは民間の"ひらめく人"だ
第4の矢との関連で言えば、最後の「技術革新を促す」という点が最大のポイントであると思う。膨大なデータをどう使うかは、やってみなければ分からない。日本のどこかに「ひらめきのある人」がいて、データセットを前に「こうしてみたら面白いんじゃないの」と思いつくかどうかが勝負である。
もしかしたら、それが大きな需要を生んで、新しいビジネスになる。だから「オープンデータは現代の宝の山だ」とも言われる。砂の山から何かを掘り当て上手に加工したら、とんでもないダイアモンドに化けるかもしれないのだ。
掘り当てるのは官僚ではない。
あくまで民間の「ひらめく人」だ。だから安倍政権はまず、砂の山を徹底的に公開することに全力を注いでほしい。間違っても「あれはただの砂だから」などという役人の言い分を聞いてはいけない。外務省はもしかしたら、オープンデータ憲章さえ「サミットで出た砂の残りカス」程度にしか思っていなかったかもしれないのだ。
だから、まず日本再興戦略の長文の中に埋もれていた「オープンデータ」が第4の矢になりうる。政策の磨き方次第である。
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